ギルモア邸の。
とある部屋のドアが、そっと開いた。
ドアの影から顔を覗かせたのは、ハインリヒ。
足音を立てないように気を付けながら、部屋の中の揺りかごの側に寄った。
揺りかごの中では、スヤスヤ眠っている赤ん坊の姿。
「イワン・・・?」
小声で呼びかけながら、小さな身体を抱き上げる。
イワンを抱いたまま傍らのソファに腰掛けて、ハインリヒは持ってきた本を開き、ページに視線を落とした。
穏やかな昼下がり。
ポカポカと暖かな太陽の光が部屋の中に射し込み、二人を照らした。
時折、あやすようにしてイワンの身体をポンポンと撫でる。
薄い口唇が微かに開き、微かなメロディーを紡ぎ出した。
「Guten Abend,gute Nacht,mit Rosen bedacht・・・」
本に視線を落としながら、まるで無意識でそうしているかのように・・・小さく口唇を動かしして、謡う。
優しく柔らかな歌声が、午後の陽射しに滑らかに溶けていった。
「morgen frueh,wenn Gott will,wirst du wieder geweckt.」
『ぶらーむすノ子守歌・・・?』
不意に。
ハインリヒの頭の中に、まだ少し眠たげな声が届いた。
歌声は止まり、ハインリヒはツイとイワンに視線を合わせた。
キュ、と、ハインリヒの服を小さな手で掴んで。
『オハヨウ、はいんりひ。目覚メテ一番ニ、きみノ顔ガ見ラレテ嬉シイヨ』
イワンはどこか大人びた口調で言った
「ああ・・・おはよう、イワン。そろそろ目覚めの時間だと思ってな」
『目覚メノ時間ガ近イぼくニ、子守歌ヲ歌ッテクレテタわけ?』
「そっ、それは・・・。あんまり気持ち良さそうに眠っていたから・・・」
ボソボソと言い訳をするハインリヒの耳に、クスリと小さな笑い声が届いた。
『マアいいヨ。続キヲ歌ッテ・・・?きみノ歌声、トッテモきれいデ、ぼくハ好キダヨ』
膝の上にイワンを抱いたまま、ハインリヒは微笑んで。
再度、その口唇からキレイなメロディーが零れた。
「Guten Abend,gute Nacht,von Eng'lein bewacht・・・」
気持ち良さそうに瞳を閉じ、イワンがその歌声に耳を傾ける。
手にしていた本をサイドテーブルに置き、ハインリヒも瞳を閉じて。
曲のメロディーに合わせるようにして、ゆっくりと身体を揺らした。
「ハインリヒ〜?」
パタパタと廊下を駆ける音。
二人がいる部屋の前で、足音が止まり、フランソワーズが顔を出した。
「あらあら・・・」
優しい日の光に照らされた二人の姿は、まるで一幅の絵のようで・・・。
ハインリヒが視線を上げ、フランソワーズを見た。
「どうした、フランソワーズ?」
「お茶の時間よ、って、アナタを探しに来たんだけれど・・・。イワンは、お目覚め?」
『オハヨウ、ふらんそわーず』
「おはよう、イワン」
ニコリとイワンに微笑みかけてから、フランソワーズはハインリヒに言った。
「ハインリヒ、イワンを連れてリビングにいらっしゃいな」
「・・・分かった」
ハインリヒはイワンを抱き上げ、その部屋を出た。
「さて、イワン。まずは食事を摂るとして、他に何がしたい・・・?」
『きみト散歩ニ行キタイナv』
「そうだな・・・」
ハインリヒの手が、クシャリとイワンの頭を撫でた。
『チョット・・・子供扱イシナイデクレル・・・?』
「ああ、悪かったな」
「ハインリヒ、早く〜!お茶が冷めちゃうわ」
「直ぐに行くよ・・・」
暖かな午後の陽射しの中で・・・イワンと散歩に行くのも悪くない・・・。
フ、とその頬に笑みを浮かべ。
ハインリヒは、フランソワーズの後を追った。
〜END〜
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一さんの素敵イラストをカラーで見たい方はこちらへ・・・!
相方の一さんに、「サイト4周年なの。何か描いてvvv」
とおねだりしたところ、素敵なイラストを送ってくれましたv
な、なんと、14でございますよ、奥様〜!!!
(24、44は他所様でも取り扱っているので、
私ぐらいしか萌えていない14にしてくれたらしいです(笑))
イワンもハインもとても穏やかな表情をしていて、
優しい空気がイラストから伝わってくるようですvvv
ハインさんの服をキュ、と掴んでいるイワソが・・・v
イワソを見下ろしながら、伏し目がちに、
けれども美しく微笑んでいるハインさんが・・・vvv
一さん、本当にありがとう!
大きな声で愛を叫ばせていただきます。
これからもよろしく〜vvv
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