雨がやんだら
空から落ちてくる、雨の音で目覚めた朝。 ベッドサイドの時計に視線を走らせると、まだ、早朝だ。 ふと。 半分眠ったままの脳裏に浮かぶ。 明るい茶色の髪、いつでも前向きな瞳。 優しい笑顔、オレの名前を呼んでくれる声。 ・・・会いたい。 ボーっとしたままの頭で、考える。 今すぐに、電話をかけて。 『愛してる』 そう言ってやろうか。 一瞬の沈黙の後。 受話器の向こうでお前はクスリと笑うだろう。 『そんなコト、言わなくても分かってる』 そう思うと、何だか癪に障るけれど。 でもやっぱり、そんなお前に会いたい。 声が聞きたい。 雨の日に、ふと人恋しくなるのは。 きっとこんな日に、大切な人を失くした所為だ。 長い一生を共に生きていきたいと願った、大切な女性を。 雨の日に、ふとお前の顔を思い出すのは。 そんな過去の思い出ごと、オレを抱きしめてくれるお前の腕が恋しいからだ。 優しくて温かな、お前の腕が。 永遠に近いだろうこれからの長い時を。 一緒に過ごしていきたいと思う、お前の腕が恋しいからだ。 しとしと、しとしと。 雨は降り続く。 今日は、仕事も休み。 予定は何もない。 今は何も考えずに。 この優しいまどろみの中で、お前のことだけを思っていよう。 優しい雨の音を子守唄に。 オレはまた、眠りに落ちていく。 「ハインリヒ?」 夢の中で、お前がオレの名前を呼ぶ。 腕を伸ばしてお前に触れてみる。 髪も頬も・・・冷たい。 この雨の中、オレのために急いで飛んできてくれたからか? 妙にリアルな夢だな、と思いながら。 「会いたかった・・・」 そう言うと、琥珀色の瞳が優しく揺れて。 お前はオレの手を取り、指先に口付けてくれる。 「うん。だから、会いに来た」 本当に、なんて都合の良い・・・夢。 ただ、うとうととしながら。 温かな腕の中で、眠っている夢を見る。 心地良い感触。 気持ちが、落ち着いていく。 こんな優しい夢を見られるのなら。 このままずっと、眠っているのも悪くない。 ふっと、目を覚ます。 誰かに抱きしめられている。 目を見開いてよくよく見てみると。 隣で、お前が眠っている。 夢だと思っていたのに・・・どうして? 腕の中で身じろぎすると、お前の目が、開いた。 琥珀色の瞳が、オレをじっと見つめて。 「おはよう」 その声に、何故か涙が零れそうになる。 「良く眠れた?」 返事の代わりに、お前をぎゅっと抱きしめた。 宥めるように、お前の手がオレの髪を撫でる。 チラリと窓の外に視線を走らせる。 まだ、雨は優しく降り続いているけれど。 空は薄曇り。 ・・・もうすぐ、晴れそうだ。 「ハインリヒ。雨がやんだら、一緒に出かけよう」 聞きたかった声、求めていた微笑み。 夢でないのが、嬉しい。 お前が側にいてくれるだけで、こんなに心が穏やかになるのは。 オレがお前を好きだからだ。 ・・・好きだからだ。 「ジェット・・・」 いつもはちゃんと言えないけれど。 今なら、言えるような気がしたから。 「ありがとう」 そう言うと、お前の指が優しくオレの頬に触れて。 ・・・オレはそっと、瞳を閉じた。 しとしとと降る、優しい雨。 この雨がやんだら、一緒に出かけよう。 一緒に・・・出かけよう。 雨が、やんだら・・・。 |
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〜 END 〜 |
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久々にラブラブ24を書きましたっ!!
最近、雨の日が多かったじゃないですか?
朝、雨の音で目覚めた時、私は思いました。
雨の音で目覚めて、ジェットを思うハインリヒ!
ついでにジェットを飛んでこさせればバッチOK!!!
という経緯で、このお話は生まれたのでした(笑)。
ちなみに。ハインリヒの一人称、初めて書いたのですが・・・。
乙女モード炸裂で申し訳もなくっ。
でも、ウチに来てくださる24スキーの皆様は、乙女モードもOKですよね!?
などと言い訳しつつ、管理人は去ります(笑)。