カスミソウ
買い物に行っていたフランソワーズが、白い花束を抱えて戻ってきた。
フワフワした小さな花がたくさん付いている、キレイな花だ。
「キレイでしょ?」
フランソワーズが笑う。
「お花屋さんに寄って、買ってきちゃったvたまにはこの男ばかりの家にも、華やぎを添えてあげようと思って」
「フランソワーズがいてくれれば、この家にだって十分華があると思うけど?」
ピュンマがそう言って、パチリとフランソワーズにウインクした。
「あらあら!ピュンマったら上手なんだからぁvvvでも、そんなコト言っても、何も出ないわよ?」
「それは残念だな・・・」
そんな軽口を叩きながら、フランソワーズは何処からかキレイな淡いブルーのガラスの器を探し出してきて、その器に花をたっぷりと活けた。
「ホントにキレイよねぇ。私、カスミソウ大好きよv」
その言葉で、そのキレイな花が『カスミソウ』という名だと知った。
白く可憐で清楚な花。
キミに、似ている。
「おお、フランソワーズ!それは、ベビーズ ブレスの花じゃないかね?」
リビングに現れたグレートが、嬉しそうに言った。
「ベビーズ ブレス??」
フランソワーズの問いかけに、グレートは答える。
大袈裟に、両手を広げながら。
「その花の、英名であり、『可愛い彼女の吐息』という意味なのであった」
「わわっ。可愛い別名ね〜vvvこの花にピッタリだわ」
キャッキャとフランソワーズが喜ぶ。
「・・・花言葉は・・・『清らかな心』、だ・・・」
ジェロニモがボソリと呟く。
グレートにジェロニモ、どうしてアンタ達、そんなにその花に詳しいんだ!?
なんて思いながら、オレはその花をじっと見つめた。
やっぱり、キミに似ている。
オレの好きな、ただ一人のキミ。
白くて、風が吹いたらサワサワと揺れそうで、奥ゆかしくて透明感があって、可憐で清楚。
キミの甘い吐息が花になったら、きっとこんな花になるだろう。
そんな、可愛らしくてキレイな花。
花言葉だって、キミにピッタリだ。
キミの心は、真っ白で。
とても、キレイだ・・・。
花に顔を寄せて、香りをかぐ。
・・・強い香りはしない。
そっと手の平に包み込んで、花にキスをした。
キミに、キスしてるつもりで。
「ジェット、その花が気に入ったの?」
悪戯っぽくフランソワーズに聞かれ、オレは慌てて答えた。
「あっ、ああ!キレイで可愛い花だよな」
「んふふ〜」
楽しそ〜うにフランソワーズが笑う。
「今アナタが考えてたコト、当ててあげましょうか?ハインリヒみたい、って思ってたんでしょ??」
「・・・どうして分かるんだよ」
「あらぁ!ジェットの考えてるコトなんて、何でもお見通しよぉ」
やっぱり、フランソワーズには敵わない。
ため息をついたタイミングで、キミが現れた。
キッチンから、コーヒーのカップを持って。
「なんだか賑やかだな?」
「あら、ハインリヒ!ジェットがね、この花が、アナタみたいだって言ってるのよvvv」
フランソワーズが指差した先には、やっぱり可憐なカスミソウ。
キミは花に視線を走らせた後、苦笑いした。
「あの花がオレなんて・・・お前、目が腐ってるぞ??」
「もっと良く見てみろよ、キミみたいだろ?」
「どこが?」
本当に、キミは全く自覚がない。
オレはツカツカとキミに歩み寄る。
髪に触れて、頬に触れた。
キミの髪はプラチナで、頬は真っ白。
柔らかくてフワフワしてて、あの花みたいだろ?
「ジェットっ!」
皆の前でイキナリ触れられたからか、キミは動揺している。
白い左手の中で、コーヒーのカップがカタカタと揺れた。
「あの花、やっぱりキミみたいだ・・・キミの方がずっとキレイだけどね」
「・・・馬鹿・・・」
気を利かせてくれたのか、いつの間にか、皆の姿がリビングから消えている。
オレは、キミをギュッと抱きしめる。
「キミは、キレイだ・・・」
まるでカスミソウのように清楚で可憐でたおやかなキミ。
「ジェット・・・いい加減に・・・」
腕の中で身じろぐキミに、オレはもう一度囁いた。
「キミは、キレイだよ・・・」
すると、白い頬を薄紅に染めて、キミは俺の腕に身体を預けてくれた。
カスミソウの白い花が・・・キミの髪のように、フワリと。
風に、揺れた。
〜 END 〜
24デーの24ですっ!!
もう間に合わないかと思ったのですが、ギリギリ今日に間に合いました。
ひどく短編になってしまい、申し訳もなく・・・。
アンジェでもやっている「花」シリーズの第一弾として書きました♪
次はハイン→ジェット視点の「ひまわり」を書きたいのですが、夏になってから、ですねv
こんなお話でも楽しんでいただけたら幸いです〜。