雪の華




 沈みかけた太陽が、二つの影を道路に長く映す。
 どちらともなく散歩に行こうと言い出して。
 一緒に、外に出た。
 日はだんだんと落ちていき、頬を撫でる風が、ひどく冷たく感じられる。
 そんな中、二人は並んで歩いていた。
 お互いに穏やかな表情で。



 ヒラリ。
 突然、目の前を白い何かが舞い落ちていくのを見て、ジェットは空を見上げる。
 ヒラリ、ヒラリ。
 花びらにも見える、白い、雪の欠片。
 今年、初めての雪。
「ハインリヒ。ホラ、雪だ!」
 思わず弾んだ声で隣のハインリヒに声をかけると、つられたように空に視線を走らせて。
「本当だ・・・」
 フッと、ハインリヒがその瞳を細めた。
 その表情が、とても美しく思えて。
 ヒラヒラと舞う雪とハインリヒを眺めながら、ジェットはしみじみと幸せを噛みしめる。
「キレイだな・・・」
 ハインリヒの唇から、そんな言葉が漏れた。
 ・・・白い雪が舞い落ちる中で佇んでいる。キミの方が、ずっとキレイだけれど・・・。
 そんな事を思いながら。
「・・・愛してる」
 唐突に、でも真剣にそう言うと、ハインリヒはくすぐったそうな表情をして笑い、俯いた。
 頬を仄かに、紅くして。
「ずっと、側にいるから」
「そうだな・・・」
 俯いたまま、ハインリヒが言葉を返した。
 その長い銀の睫毛に、雪がフワリと舞い降りた。
「雪・・・ついてるぜ・・・」
 唇を寄せると、ハインリヒの手の平が、そっとジェットを押し退けた。
「やめろ、こんな所で・・・」
「誰も見てないって」
「それでも、ダメだ」
「チェッ。分かったよ。我慢すればイイんだろ?」
 唇の代わりに、指先で。
 雫になってしまった雪を拭い取った。
 俯いていた顔を上げて、ハインリヒがジェットを見つめた。
 頬に、優しい笑みを浮かべながら。
 その笑顔を、ずっとずっと守って。
 ずっとずっと見つめていたいと。
 祈るような気持ちで、ジェットは思った。



 仄かに色づいていく街を、二人で歩く。
 一緒に眺める、白く降り続く雪。
 また一つ、二人の想い出が増えていく。
 キミと一緒の想い出。
 これからも、一緒に紡いでいけたら。
 この真っ白な雪が、ヒラヒラと降り積もっていくように。
 空に差し出したキミの手の平に、ヒラリ、可憐な雪の華。





〜 END 〜







短くてスミマセン(汗)。最近、長い話が書けないです〜。
2004年のジェットのお誕生日を記念して。
誕生日ネタは書きつくした(?)ので、ただの冬ネタと相成りました。
○島美嘉さんの「雪の華」イメージで。
大好きな曲なんですよ〜。
ホントに24っぽいので、是非聞いてみてくださいvvv







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