Miracles




 定められた訓練を終え、与えられた部屋へと戻る道のり。
「こんな訓練、いつまで続くんだろうな?全く、嫌になっちまう・・・」
 隣で、ジェットがボヤく。
「・・・あの科学者達の気が済むまで、だな。彼らに言わせれば、お前とオレの相性は『抜群』だそうで、訓練の結果を見るのが楽しみで仕方ないらしい」
 溜め息混じりに答えると、ジェットは低く舌打ちをした。
「オレ達は、あいつ等の玩具じゃねえんだよ・・・ったく」
 けれどもその後、ハインリヒに視線を移して笑った。
「まあ、キミとオレとの相性が『抜群』vってトコだけは本当だけどなvvv」
「語尾に怪しいハートを飛ばすな。気持ちが悪い・・・」
「別にイイだろ?嫌だったら、キミは聞かなかったコトにすればいい」
「お前の声が、勝手に耳に入って来るんだよ、バカヤロウ」
 その言葉に、ジェットがニヤリとする。
「ハインリヒ、オレの声、好き?」
 不意を突かれて、頬がカッと朱を刷いてしまうのを制御できずに。
「なななっ、なにをイキナリ・・・!!」
 クスクスと笑いながら、ジェットはハインリヒの先に立って歩き出す。
「なあ。部屋、寄らせろよ。・・・イイだろ?」
 振り向いたジェットが、パチリと悪戯っぽくウインクしてきた。
「・・・勝手にしろ・・・」

 信じられない。
 大切な女性を失い、気が付いたらサイボーグにされていて。
 それなのに。
 この場所で、こんな風に軽口を叩く日が来るなんて、思ってもみなかった。

 暖かな気持ちも。
 笑える心も。
 全て、彼が与えてくれたのだ。




 許可を得たので、我が物顔でハインリヒの部屋に入り込む。
 ジェットの部屋も似たようなものだが、殆ど物がない、真っ白な部屋だ。
 当たり前のようにしてベッドの端に腰掛ける。
 そんなジェットの目の前で、ハインリヒがスルリとマフラーを外した。
「ハインリヒ・・・」
 ちょいちょいと、手招きをする。
「・・・何だ?」
 不審気な顔で、しかし律儀に歩み寄ってくるハインリヒの背中に、腕を回した。
「どうした?」
 見下ろしてくる、クリスタルの瞳。
「愛してるって・・・言ってもイイ?」
「馬鹿・・・」
 言葉と言葉が絡まり合って、溶けていきそうな。
 そんな気がする。
 キスがしたくて口唇を寄せると、ハインリヒの右の手が、ジェットの頬にそっと触れた。
 冷たい・・・けれども微かに、温かさが感じられる手の平。
「好きなんだ・・・」
 それだけしか言えなくて。
「・・・分かってる・・・」
 その優しい瞳に、甘えてしまう。

 こんな場所で、こんな身体にされて。
 何もかも諦めたような気持ちで過ごしてきたけれど。
 闇に包まれた未来に、パッと光が射したような。

 この想いも。
 強く生きていく力も、何もかも。
 彼が、与えてくれた。




「ハインリヒ・・・」
 囁くようなその声のトーンを、何時の間にか好きになっていて。
 重ねられた口唇は、不思議な魔力を持っている。
 想いが、伝わってくる。
 言葉にすることが怖くて、なかなか言えないけれども。
 受け止めた口唇に、想いが届くように・・・。
 口付けを返してみた。
『好き・・・』




 抱きしめたい。




 抱きしめたい。




 心と口唇を重ねて。

 巡り会えた奇跡。
 この時間が、永遠に続くように。

 そして。
 いつか、いつか、必ず・・・。



 強く。
 ・・・願いを・・・。



〜 END 〜




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堅・○井の「Miracles」イメージの24でした〜vvv
一さんのイラストを見た瞬間に、パッと浮かんだこの24ソング(笑)。
私の拙い文章力では一さんのイラストを美しく表現できず、
誠に申し訳ない気持ちでいっぱいです・・・。
でも、自分の欲望のままに書きました!!
って、反省の色なしですよ、この人・・・!!







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