手紙




 ある日、仕事から戻ってみると、ポストに投函されている手紙に気付いた。
 真っ白な封筒を開けて、中の便箋を取り出した。
 自分の手付きをもどかしく思いながら、封筒と同じように白い便箋を開く。
 少しクセのある、けれども美しい文字。
 じんわりと、懐かしい。
 ギルモア邸を出て、お互いに故郷に戻って。
 自分の事に手一杯で、なかなか連絡も取れずに。
 そんな中、届けられた手紙。
 舐めるようにして、ジェットは手紙の内容に視線を走らせた。

 元気かの一言で始まった手紙は、あちらの気候の話とか、仕事の話とか、色んなことが書かれていたが。
 最後の一文に、ジェットの心臓がトクンと音を立てた。

『離れてみて、少し淋しいと思う。お前に会いたい・・・なんてな。冗談だ』

 その後に、元気でやれと〆の一言。
「冗談じゃないよな、ハインリヒ。キミが、オレに会いたいって・・・」
 クスクスと、ジェットは笑い。
 手紙にチュ、とキスをした。
 どんな顔をして、ハインリヒはこの手紙を書いたのだろう?

 青白い月の光に、自分がハインリヒを連想するように。
 太陽を見て、ハインリヒも自分を思い出してくれたりするのだろうか?
 ハインリヒはジェットを、太陽のようだと例えたことがあるし。

 自室の窓を開け、ジェットは空を見上げる。
 闇夜の向こう側で、星々が瞬いている。
 青白い月は月は黙って・・・ジェットを見つめていた。

 ハインリヒも黙って空を見上げて。
 少し淋しげに俯いたりして。
 あの薄い口唇から、ため息が零れて闇の中に溶けていくのだろうか・・・?

 それを思うと、今度は少し、切なくなった。

 いつでも、オレの側に戻っておいで。

 そんな事を思う。

 疲れたら、いつだっておいで。
 そんな時のキミの居場所は、このオレの隣がイイ。
 オレの居場所が、キミの隣であるように。

「うん、オレも淋しいな。ハインリヒに会いたい・・・」

 ボソリと呟きながら。
 漆黒の空を伝って、この想いがハインリヒに届くといいと思った。

「手紙を書こう、オレも」

 広げた手紙に、もう一度、キスを落とした。

 そうだ、手紙を書こう。
 ハインリヒみたいにキレイな字は書けないが、丁寧に。
 想いを込めて。

「それで、オレが配達人になったらどうだろう?ハインリヒ、驚くだろうな」

 仕事の休みは取れるだろうか?
 ジェットは、心の中でウキウキと計画を立て始めた。

 手紙を書いて、ハインリヒに届けよう。
 ジェット自身が。

 キレイなキレイな青い瞳が、まあるくなったその様を脳裏に思い描いて。
 ジェットは、クスリと笑う。
「すぐに、会いに行くよ」
 夢見るような瞳で、ジェットは手紙の中のハインリの文字を愛おしげに見つめた。


〜 END 〜



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久々に24を書いた気が・・・。
それなのに、短くてスミマセン。
今書きたいのが、この話だったのです。
トップのアンケートで、24が好きだと仰ってくださった、
フロイラインの皆様に捧げます。
そして、こんな私の24が好きだと思ってくださる、全ての皆様に。







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