Yes - No




「おい、ジェット。聞いてるのか?」
 微かに不機嫌を纏った声に、ハッとする。
「ごめん、ちょっとボンヤリしてた。で、何?」
 ハインリヒの眦が、上がる。
「何を言ったか、オレも忘れたな」

 怒らせたかな・・・。

 フイとジェットから顔を逸らして、ハインリヒがくるりと背中を向ける。
 その後姿を視線で追いながら。

 オレは、どうすればいいの・・・?

 自問自答をしてしまう。
 気になるのだ。
 もうずっと前から、ハインリヒだけ。

 キミの話を聞いてなくて、キミを怒らせたけれど。
 頭の中は、キミでいっぱいなんだ・・・。

 何気ない仕草。
 ふと、流れてきた視線。
 時折見せる、笑顔。

 全部全部、気になって仕方ない。
 不機嫌な表情でさえ。

 穏やかに微笑みながら、キミは周りから一線を引いているようにオレには思えて。
 けれども、優しい眼差しに勘違いしそうになって。

『キミを、好きになってもいいの・・・?』

 問い掛けたくなる。

 心の中に、誰かを住まわせている。
 それを知っていながら。
 それでも。

 オレは、キミが好きだよ・・・。

「ハインリヒ・・・!」

 離れていく背中に声をかければ、僅かの間をおいてから振り向いた。

「ハインリヒ」
「何だ・・・?」
「・・・・・・・・・」
「何もないなら、行くぞ?」

 こんな会話を繰り返しながら、いくつの季節が流れたのだろう。

 手を伸ばしても、いいのだろうか・・・?

 躊躇しながら傍に近づくと、ふわりと、ハインリヒの香りがした。

「ハインリヒ」
「だから、何だ?」

「キミを、好きになってもイイ?」

 淡いブルーの瞳が、丸くなる。
 ハッと口元を押さえたが、一度発してしまった言葉を回収することはできない。

「ごめん、ハインリヒ!今のはナシだ。本当にごめん」

 スイ、と、白い手がジェットに向けて伸ばされた。

「え・・・??」

 困惑するジェットを他所に、ハインリヒは黙ったままだ。
 ただ、手を差し出したまま。
 良いのだろうかと思いながら、その手を取った。
 自分の手のひらで包み込むようにして、恭しく口付けを。

「好きになっても・・・イイかな?」

 あまりも都合が良すぎるかと思ったが、沈黙を了承と受け取った。

「抱きしめても、いい?」

 ふんわりと、ハインリヒが笑う。

 笑顔が、キレイだな・・・。

 そんなことを考えながら。
 ギュッとハインリヒを抱きしめた。




〜 END 〜



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おふこーしゅの歌を聴いて、「あ、これで片想いジェットv」、
と思って、この作品を書きました。
短いですが、ラブはてんこ盛り〜。
2007年のジェッ誕のお祝いですvvv
大大大好きな、原作ジェットをイメージして。
ジェット、おめでとう〜。







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