星の指輪
(第三話)
夢の中に、ジェットが現れた。
会いたいという気持ちが形になったのだろうか?
少し苛立っているような、けれども悲しい瞳で、ジェットはハインリヒを見つめた。
・・・指輪を返したことを、怒っているのだろうか?
「ジェット・・・」
名前を呼び、ジェットの両頬をそっと手の平で包み込んだ。
その頬は・・・夢の中でも暖かだった。
ジェットは黙って、ハインリヒを見つめている。
「ジェット、愛してる・・・」
囁くようにして告げると、ジェットはますます苛立ちと哀しみがないまぜになったような表情になった。
『なぜ?』
そう言いたそうだったが、それでもジェットは黙っていた。
いつもなら、納得できないことがあるとすぐに、突っかかってくるのに。
・・・夢だから??
何故?
そんなコト、聞くまでもなく分かりきっているだろう?
お前は、大空を自由に飛びまわる鳥だ。
美しく大きな翼を持った・・・。
オレと一緒にいると、お前は自由に飛べなくなってしまう。
お前を愛していながら、けれども過去を捨てられないオレに歩幅を合わせていたら。
お前は、前に進めなくなってしまう。
もっと早くに気付いてやるべきだった。
・・・いや。
本当は、気付いていたんだ。
けれどもお前と一緒にいる時間が、とてもとても気持ち良くて。
オレはお前に、甘えていた。
・・・ごめんな。
「愛してる。だから、さよならだ」
夢の中のお前に、そんなことを言ってもどうしようもないと思っていながら。
言わずにはいられなかった。
『愛してる』
お互いに、幾度も幾度も繰り返してきた言葉。
愛してる。
側にいられなくなっても、ずっと。
最後に、キスがしたい。
そう思った。
そっとジェットに顔を寄せ、触れるだけのキスをする。
・・・思いの丈を込めて。
愛してる、愛してる。
「愛してる・・・」
瞳に映っていたジェットの顔が、滲んで。
ハインリヒは、自分が泣いていることに気付いた。
涙が零れて零れて、止まらなかった。
どうせ夢に見るなら、どうしてもっと幸せな夢を見られないのだろう?
目の前のジェットの表情は切なすぎて。
その顔を見ていると、身を切られるように辛かった。
不意に。
ジェットの腕がハインリヒに向かって伸びた。
乱暴に抱き上げられ、ハインリヒは困惑する。
「ジェット・・・?」
やはり無言のまま、ジェットはハインリヒを寝室に連れ込み、ベッドの上に横たえた。
そして、激しいキス。
頭が、クラクラするような。
「・・・ジェット」
そっと名前を呼ぶと、琥珀色の瞳が優しくハインリヒを見つめた。
それはハインリヒが好きな・・・ジェットの表情だった。
夢でもいい、このまま・・・。
ハインリヒは腕を伸ばし、ジェットの背中をギュッと抱きしめた。
〜 To be Continued 〜
短いですが、第三話です。
四話目は、ちょっとスウィートハニーの表に置けないような内容になります(汗)。
三話から五話に飛んでも違和感ないように仕上げるつもりですので、
お嫌いな方は四話は抜かしてくださいね〜。
しかし・・・ハインを泣かせてばかりで私も辛いんですけど・・・。
もう少し頑張って、幸せになりましょう。