星の指輪
(第五話)
 トクン、トクン。
 人の命を紡ぐ優しい音が、どこからか聞こえてくる。
 何だか気持ちがいいな・・・。
 ハインリヒは、まどろみの中で思った。
 まるで・・・。
 まるで、ジェットの腕に抱きしめられて眠っている時のように気持ちが落ち着いている。
 久し振りに、ぐっすり眠れたような気がするが、それと同時に頭が少々痛んだ。
 昨夜、飲みすぎた所為だ。
 水を・・・と思い起き上がろうとしたハインリヒは、ギョッとする。
 今、ハインリヒの目の前に、ジェットの顔があった。
 昨夜は浴びるほどワインを飲んで、夢の中にジェットが出てきて、そしてジェットと・・・。
 ハインリヒの頬が、カッと朱を刷いた。
 夢だと思っていたのに、夢だと思っていたのに。
 ・・・現実だった・・・??
 求め、求められた記憶が蘇り、ハインリヒはひどく動揺した。
 ジェットの両腕が、しっかりとハインリヒの背中を抱きしめている。
 その腕の感触が泣きたいほど嬉しくて、けれどもこうして一緒にいてはいけないと思うと、泣きたいほど切なかった。
 ジェットの腕を振り解き、ハインリヒはベッドの上に身を起こした。
 そのままベッドから抜け出そうとすると。
「ハインリヒ」
 静かな声で名前を呼ばれた。
 聞こえない振りをして、そのままベッドから抜け出そうとすると、腰の辺りを抱きしめられた。
「ハインリヒ・・・。教えてくれ。どうして、サヨナラなんだ?」
「・・・・・・・・・」
 黙ったまま答えを返さないハインリヒに対して、ジェットは更に尋ねてきた。
「オレのコト、愛してるだろ?」
 やっぱり黙り込んだままのハインリヒに、ジェットは声を荒げた。
「言えよ、オレのコト、愛してるって!!どうして自分の気持ちに嘘をつくんだ!?」
「・・・愛して・・・」
 『愛してる』なんて言ってはいけない。
 気持ちが、くじけてしまう。
「愛してなんか、ない」
 乱暴に肩を抱き寄せられて、無理矢理ジェットの方を向かされた。
 琥珀色の瞳が炎のように燃える様に、ハインリヒはいたたまれず視線を伏せた。
「オレの顔を見て答えろ!オレを愛してるって言えよ!!それとも、キミは愛してもいない男と一緒に寝るのか!?」
「ちっ、違っ・・・・」
「だったら、どうして!?」
 痛いぐらいに肩を掴まれたまま、激しく揺さぶられた。
 その激しさに目眩を覚えながら、ハインリヒはまとまらない頭で必死に考えた。
 理由は一つだ。
 その理由を告げてジェットが満足するなら・・・。
 それを伝えて、綺麗にさよならしよう。
「お前が・・・」
 震える声で、ハインリヒは言葉を紡いだ。
「オレと一緒にいると・・・お前が、お前が・・・」
 自分の意思とは裏腹に、涙が溢れてきて言いたいことがうまく言葉にならない。
「・・・お前が・・・前に進めなっ・・・・・・。だか・・・ら、オレは・・・」
 本当は、誰よりもジェットを愛していて。
 誰よりも、ジェットを必要としているのに。
 胸が詰まって、後は言葉にすることが出来なかった。
 みっともないぐらいに涙が零れて。
 ハインリヒは、大きくしゃくりあげた。
「馬鹿だな・・・」
 肩から手を離し、ジェットの指がハインリヒの頬に伸びた。
 ビクリと身を竦ませるハインリヒに、ジェットは困ったように笑いかけた。
「ゴメン。そんなに怯えないでくれよ・・・」
 長い指が、ハインリヒの頬に触れた。
 そのままジェットの顔が近付いてきて。
 涙を、キスで拭ってくれた。
「ジェット・・・」
「キミを、愛してる。キミもオレのコト、愛してるだろ?」
「ジェットぉ・・・」
 もう、何も言うことができなくて。
 ハインリヒはジェットに縋り付いた。
 背中を、ジェットの手が優しく撫でてくれる。
 ジェットの腕の中で、ハインリヒはポロポロと涙を流した。


  〜 To be Continued 〜





もうもう、5話目も短くてスミマセン(汗)。
つかなんか、メロドラマ風になってるような気が・・・。
あああ〜!!自分の文章力のなさが恨めしい・・・(滝涙)。
こう細切れ更新してると、予定より話数が長くなりそうで切ないです〜。
それより、ハイン!!!また泣かせてごめん。
あと2回ほど泣かされると思いますが、勘弁してください。





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