星の指輪
(第七話)
「もう一度、プロポーズのやり直しをしよう」
ジェットはそう言って、ハインリヒを外に連れ出した。
洒落たレストラン。
料理は最高の味で。
極上のワイン。
上品な甘味のデザート。
全てが、あの日と同じように進んでいった。
食事を済ませて、二人で外に出る。
今日も・・・夜空には、満天の星。
見上げると、目眩がしそうなほどの。
瞬く星空の下、ジェットが立ち止まった。
琥珀色の瞳が、ハインリヒを見つめる。
今日はその眼差しを、しっかりと受け止めることが出来て、ハインリヒはホッとした。
ズボンのポケットに手を突っ込み、ジェットはハインリヒに小さな箱を差し出した。
「開けてみて?」
ドイツとアメリカの間を旅したからか、淡いブルーのリボンは、少し縒れていた。
そのリボンを解き、箱を開くと。
その中には、プラチナのリング。
「安物だけど、キミに・・・」
「ジェット・・・」
気の利いた言葉の一言二言。
そう思いながらも、結局、何も言えないハインリヒの手を、指輪の箱ごと、ジェットの手の平が包み込んだ。
「キミを愛してる。だからオレ達、一緒になろう」
ジェットの手が、熱い。
何か言いたくて。
でも、やっぱり、言葉が出てこなくて。
ハインリヒは黙ったまま、けれどもしっかりと肯いた。
ジェットの表情が和み。
彼はハインリヒの指に、そっと指輪をはめてくれた。
「ホントはさ、この夜空の星の欠片を集めて指輪に出来たらなって思う。それに月の雫を一滴落としたら、絶対キミに似合う指輪になるって」
そう言って、ジェットは笑う。
「本当にそんな指輪があったとしても・・・お前から今貰ったこの指輪より、そいつが貴重な指輪だとは思えないがな」
「でも!絶対キミに似合うって!!」
言い募るジェットに、
「それなら・・・」
ハインリヒは、微笑んだ。
「それなら、この指輪がそうだ。お前がオレのために、星の欠片を集めて作ってくれた・・・。その証拠に、こんなに綺麗に輝いてるじゃないか?」
ハインリヒが、左の手をスッと、夜空に向けて伸ばした。
月の明かりと星の光を受け、指輪がキラキラと輝く。
「ほら、綺麗だろう?」
そう言って笑うハインリヒの瞳も、優しい愛情で輝いた。
「ありがとう、ジェット。・・・愛してる」
そっと、ジェットがハインリヒの肩を抱き寄せた。
「キスしてイイ?」
返事の代わりに、ハインリヒが視線を伏せた。
銀の睫毛が微かに震え、目元に影を落とす。
ジェットの指が、ハインリヒの頬に伸びた。
「愛してる・・・」
瞬く星の下、二人の唇が重なった。
ハインリヒの腕が、ジェットの背中に回される。
回された手の指で、指輪が光る。
その指輪は、贈り主からの愛情が溢れそうなほどに詰まった・・・。
夜空の星のように眩しく輝く、『星の指輪』。
〜 To be Continued 〜
これで、誕生日企画としてのこの話は完結です!!!
実はふみふみ、指輪でプロポーズネタを二つ温めていて、
今回の話はそのうちの一つでした。
もう一つの方は、オフラインの10月の新刊で使ってます(爆)。
この後、数人の方にご要望を頂いているので、
番外編としてハッピーウェディング→ハネムーン→初夜(爆)
という流れで続き(?)を書くかもしれません。
とにかく、ハインリヒおめでとう!!!
ジェットと永遠に幸せでいてください。
色々浮気してますが(汗)、ふみふみはやっぱり、24が一番好きです!!!