まどろみのなかで





 突然。
 フッと、目が覚めた。
 ベッドの上に身を起こし。
 隣で微かに寝息を立てながら眠るその人に視線を走らせ、ジェットは優しく瞳を細めた。
「・・・ハインリヒ」
 聞こえていないと分かっているのに、小さく名前を呼んでしまう。
「う・・・ん・・・」
 もぞもぞとハインリヒが動き、ジェットの方に身を寄せた。
 その様子に、思わずクスリと笑みを零してしまう。

 薄く開いた口唇のラインを、指先で辿る。
 その指を自分の口唇に押し当てて、ジェットはクスクスと笑った。
「・・・何してるんだろうな、オレは」

 シーツの海に零れ落ちている銀の髪を、一掬い。
 指の隙間から、サラサラと流れ落ちてゆく。
 白いカーテンの隙間から差し込む月の光を受けて、柔らかく輝きながら。
 
「ホントにキレイで可愛いよな、キミって・・・」

 穏やかな寝顔。
 見ていると、自分も幸せな気分になってしまう。

「世界が終わるその瞬間まで・・・。オレ達、こうして一緒にいような」

 なんて、センチな台詞を吐いてみたり。
 けれども、その想いは真実だ。

「ずっとずっと、一緒だから・・・」

 幸せでたまらないはずなのに。
 その幸せの中に、微かに切なさが混ざる時がある。

 愛しすぎて・・・胸が、苦しい。

「なんて、贅沢な悩みかな・・・?」

 眠っているハインリヒの額を、軽く小突いてみたりする。

「オレをこんな気持ちにさせてるって・・・キミは、気付いてる??」

 キミの何もかもが愛しくて。
 愛しすぎて、愛しすぎて、愛しすぎて・・・。

 そっと。
 触れるだけのキス。
 口唇を離すと、ハインリヒの瞳が薄く開いた。
「ん・・・ジェット・・・?」
「ゴメン、起こした?」
 言いながら髪を撫でてやると、気持ち良さそうに、再び瞳を閉じた。
「・・・お休み・・・」
 スルリと布団の中に滑り込み、そっと・・・その身体を抱き寄せた。
「お休み」

 キミを抱きしめて、眠ることが出来る幸せ。
 キミを、穏やかに眠らせてあげることの出来る幸せ。
 たくさんの幸せをありがとう。

「・・・キミが、好きだよ・・・」

 言葉がそっと、空気の中に溶けていった。

 ハインリヒの白い頬に、微かに笑みが浮かんだような気がして。

「そんな表情って・・・反則だろ・・・?ますます、好きでたまらなくなるじゃないか・・・」

 苦笑交じりにそんな事を呟きながら。
 柔らかな身体を抱きしめたまま、ジェットも穏やかな夢の中へ・・・。



〜 END 〜


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55555ヒットを踏んでくださったコアラ様からのご申請で、
お題は「眠るハインリヒ」でしたvvv
サイトでアップしてくださいという、
お優しいお言葉を頂戴いたしましたので、
こちらでアップさせていただきました。
優しい雰囲気のタイトルは、コアラ様に付けていただきましたv
コアラ様、ご申請ありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いいたしますvvv




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