スキカップリングでキス十題

01:頬に
(24)




 リビングのソファに深々と座り、静かに本を読んでいる。
「ハインリヒ?」
 そっと、声をかけてみるけれど。
 本に夢中らしく、気付いてもらえない。
 それが、少し悔しくて。
「ハインリヒ」
 もう一度、名前を呼んでみる。
 パラリ。
 本のページをめくる音がして。
 やっぱり、気付いてもらえないことが悔しい。
「ハインリヒ!」
 少し大きめの声で呼ぶと、迷惑そうな顔が、オレを振り仰いだ。
「何だ、ジェット?オレは本を読んでいるんだ。邪魔するな」
 そのクリアブルーの瞳は、文字通り氷色で。
 オレは思わず天を仰ぎたくなったが、怯むことなく言葉を続けた。
「本なんか読んでないでさ。オレと一緒に、楽しいコトしようぜ?」
「お前と楽しい事?それが本を読む以上に楽しいのなら考えてやってもいいが・・・」
 ハインリヒの指がスッと伸び、オレの鼻を弾いた。
「どうせ、下らん事にでも付き合わせようとしているんだろう?」
・・・なんて冷たい言い草だ。
 悔しいを通り越して、腹が立ってきた。
 オレはただ、キミの側にいて、キミと話がしたいだけなのに。
 それをキミは、くだらないことだというのか?
「ハインリヒ」
 名前を呼ぶのは、四度目だ。
「だから一体、何なんだ?」
 そんなに嫌そうな顔、しないでくれよ。
 ああもう、本当に悔しい。
 キミにとって、オレは本より格下なのか?

 ・・・オレのことだけしか考えられないようにしてやる・・・

 そんなことを思いながら。
「ハインリヒ」
 もう一度名前を呼んで。
「だから、お前は・・・」
 迷惑そうなキミの言葉を封じ込めるようにして告げた。
「キミが、好きだよ」
 パタリ。
 キミが、本を膝に落とした。
 いい感じだ。
「キミが、好き」
「・・・・っ!」
 真っ白な頬が、薄く紅を刷く。
 ホラ。
 今キミは、本の事なんか忘れかけてるだろう?
 紅くなったその頬に指を滑らせてから。
 掠めるようにして、そっと口付けた。
「ジェット〜っ!?」
 キミはソファから立ち上がり、大事な大事な本が、床に落ちる。
 その本を拾ってやりながら、オレはキミにパチリとウインクして見せた。
「キミが好き。だから、キミの側にいさせてよ」
 オレの手から奪い取るようにして本を取り戻して。
 乱暴に、ソファに座りなおすキミが愛しい。
「ああもう、勝手にしろっ!!」
「じゃあ、勝手にさせてもらうな」
 キミの隣に座って、側でキミを眺める。
「何か話そうぜ?」
「・・・話したいなら、お前が話題を提供しろ」
「オレとハインリヒの未来についてvなんて、どう??」
「言ってろ・・・」
 諦めたように、キミは手にしていた本をテーブルの上に置いた。

 やった!オレは本に勝ったぞ!!

 などと、少し虚しいが、勝利の喜びを感じたりして。
「ハイ〜ンリヒvvv」
 キミの頬に口唇を寄せ、もう一度キスをした。
 薄い口唇から、小さなため息が零れて。
 でも、イヤじゃないよな、キミも?



 もう、キミは本のことなんてどうでもいいだろう?
 そんな顔をしている。
 オレがニヤニヤと締まりなく笑っていると。
「お前ってヤツは本当に・・・」
 キミは苦笑いのような表情をした。

 今、キミは、オレのコトだけ考えてるだろう?
 そんなキミに、オレはとても満足。
 オレの視線が届く場所で、オレ以外のモノに夢中にならないでくれ。
 悔しくて、淋しくなるから。



〜 END 〜





ちゅーをテーマに10題!!
まず最初は24からでしょ!
と思って書いてみたのですが。
思えば24でのちゅーって、結構書き尽くしているような感が(汗)。
どこかで似たような話を書いていたらスミマセン。
このお題は、ちゅーシーンが最大の目的なので、話も短くなります。
今回は、ギャグっぽいキスv
を目指してみました〜♪頬だし(笑)。





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