スキカップリングでキス十題

05:唇に
(24)




 真夏の太陽のように、明るいその笑顔が好き。
 琥珀色の瞳が優しく揺れる様が、好き。
 抱きしめてくれる腕の感触や、温かさが。
 明るい笑顔の影に、時折見え隠れする悲しみとか。

 大切な人を彩る全てが愛しくて、愛しくて。
 自分自身を持て余して、どうしようもなくなる時。
 そんな時って、あるだろう?



 月明かりの中。
 いつもと少し感じの違う後姿。
 テラスの手すりに凭れかかって、夜空を見上げるジェットの隣で、ハインリヒも一緒になって空を見上げた。
「ジェット」
「何?」
 声をかければ笑顔が返ってくる。
 その笑顔にも、微かに違和感を覚えた。
「ジェット」
 もう一度、名前を呼んで。
「どうして無理に笑ってるんだ?」
 尋ねると、琥珀色の瞳に浮かんだのは驚きの色。
 視線を逸らされ、ジェットは俯いた。
「参ったな・・・どうして分かるワケ?」
「いつもと様子が違う。そんな事、すぐに分かる」
 ハインリヒが答えると、ジェットが顔を上げた。
 真面目な顔で、見つめられる。
 その瞳を、真っ直ぐに見つめ返すと。
「ちょっと、昔の事を思い出したりしてたんだけど・・・もう大丈夫。キミがこうして、側にいてくれて。誰よりも、オレの事を分かってくれてるから・・・」
 そう言って笑ったジェットの表情は。
 普段と変わらない、明るく包み込むような・・・。

 その笑顔に、心がキュッと。
 締め付けられるような想い。
 ハインリヒの好きな、笑顔。
 好きで、好きで、好きで・・・。

「ジェット・・・」
 指先でそっと、頬に触れてから。
 少し伸びをして、チュ、と口唇に触れた。

 顔を離すと、キョトンとしたジェットの顔。
「・・・・・・・・・」
「たまには、いいだろ?」
 クスリと、笑いが零れてしまう。



 愛しくて、愛しくて。
 気持ちが心から溢れ出してしまいそうな時。
 そんな時って、あるだろう?
 言葉では言い尽くせなくて・・・。
 ただキスを、したくなる。
 そんな時って・・・。



「ハインリヒ」
「何だ?」
「オレからも、キスさせてよ・・・」
「いいぞ。好きにしろ」
 笑みを刻んだ口元。
 優しい瞳が近付いてくる。
 ハインリヒは瞳を閉じて、ジェットからのキスを受けた。



 息が止まるくらいの、甘いキス。
 今は何もかも忘れて。
 二人で、ただ・・・。
 キスを、しよう。


〜 END 〜





ゴハァっ!!(←砂を吐く音)
切ない系の話を書いてたら、反動で甘いのが書きたくなりました。
・・・甘すぎです、自分!!
しかも、ハイン→ジェットのちゅーって、サイト上で初めてかも・・・??
こんな24でも、皆様大丈夫でしたでしょうか(ドキドキ)?






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