Lover Boy
灯りの落とされた暗い部屋の中に一条の月明かり。
ゆらゆらと白いカーテンが揺れ、窓辺に暗く、影を落とした。
長い、人影。
その人物は、まるで闇の中から抜け出してきたかのように、突如として姿を現した。
そして、部屋の奥へと足を踏み入れ・・・。
「アルベルト」
小さな部屋の中、低い声が、響く。
男は、ベッドに横たわり安らかな寝息を立てている彼の白い首筋に、褐色の指をかけた。
このまま息の根を止めて。
美しい姿のまま、永遠に私のモノにしてやろうか・・・。
薄い口唇の端が上がり、男の頬に笑みが浮かんだ。
首にかけたままの指先に、ほんの少しの力を込めてみる。
「ん・・・」
息苦しさを感じたのだろうか。
彼の瞳がうっすらと開き、クリスタルの輝きが、闇の中で揺れた。
「おはよう、アルベルト」
声をかけると。
ボーっと男を見つめていたその瞳が見開かれ、次の瞬間、彼はベッドの上で身を固めた。
クスリ。
男の口唇から、小さく笑いが漏れた。
「そんなに警戒する必要はない。今日は、何もしない」
そして男は、彼に向かって優雅に一礼した。
「誕生日おめでとう。・・・私のアルベルト」
男が闇の中でパチリと指を鳴らすと、小さな部屋の中が薔薇の花で埋め尽くされた。
「な・・・っ??」
驚く彼を他所に。
「私からのプレゼントは気に入って貰えたかな?」
男は手近の一本を拾い上げ、それを彼に向かって差し出した。
「何もしない、というのは正しくないな。可愛がってやるぞ。お前が生まれた、大切な日を祝って、な」
手の中の薔薇を、男はクシャリと握り潰した。
指の間から、深紅の花びらが零れ落ちた。
まるで、真っ赤な血の滴のように。
ヒラヒラと舞い落ちる花びらが、彼のクリスタルの瞳を、紅く彩った。
「アルベルト」
握りつぶした花を無造作に手の中から落とし、男は美しいラインを描く顎に手をかけた。
ビクリと、彼が身を震わせた。
「何をそんなに怯えているのだ?ん??」
低い笑いが口唇から漏れ、男はそのまま、彼に覆いかぶさるようにして、口唇を重ねた。
深く、噛むようにして。
彼は逃げようとするが、男はそれを許さない。
そして、蹂躙するように、続けられるキス。
「・・・はぁ・・っ・・」
口唇を離す。
彼が、大きく息をつく。
苦しげに。
息が上がり、白い頬には血の気が上っている。
その様を楽しげに眺めながら。
男は、歌うように言葉を発した。
「アルベルト・・・。お楽しみは、これからだぞ?」
彼の姿を眼下に、男は舌なめずりをした。
彼が身に付けている一切のものを剥ぎ取り、生まれたままの姿にした。
やんわりと彼の中心を弄ると、白い身体がひくりと震えた。
ピチャリと故意に音を立てながら、舐め上げる。
「やめ・・・っ!!」
「ココは止めて欲しくはないようだが?」
頬が羞恥の色に染まる様を、男は満足気に眺めた。
「いい様だな、アルベルト・・・」
「あ・・・あ・・・」
「イきたいか?」
涙の浮かんだ瞳をキュッと閉じ、彼はブルブルと首を横に振った。
「強情なことだな・・・」
口唇と下で扱き、舐り上げる。
「ひぁ・・ああぁ〜っ!!」
吐き出された欲望を美味そうに飲み干して、男は口唇の端を指先で拭った。
「まさか、自分だけ楽しむつもりではないだろうな?」
笑いを含んだ声で尋ねながら、彼の底を押し広げる。
「んぁ・・・・っ」
指で解してやると、くちゅくちゅと卑猥な音を立てた。
「アルベルト・・・」
耳元でその名を囁きながら。
身体を、重ねた。
交わり合う、という表現が正しいようなその行為を、男は楽しんでいた。
「や・・・!」
腕の中でしなる、白い身体に、刻み込む。
紅い、薔薇の花びらのような印を。
「あ・・あぁ・・・」
扇情的な表情、仕草。
・・・壊してしまいたくなる。
「・・・はぁ・・・」
何度も何度も、穿つ。
「ああっ・・・!」
打ち付けると、反り返る白い喉から、絶え間なく喘ぎ声が漏れた。
「アルベルト・・・」
優しく囁くようにして、耳朶を嬲り、固く尖った胸の飾りを指の腹で押しつぶしてやると、切なげに身を捩って声を上げた。
「・・・やぁ・・あ・・んっ!!」
抱きしめる、細い身体。
縋り付いてくる、彼の腕の感触を愛しく思いながら。
奥へ、奥へと進んでいく。
「アルベルト・・・」
「ふぁっ!やめっ・・・!!」
「全て、くれてやるぞ・・・」
激しく、動かしながら。
「私を・・・残らず、飲み干すのだな」
男は、喉を鳴らすようにして笑った。
「お前の、その身体の中で」
白い迸りを、彼の中へ。
腕の中の華奢な身体が、ビクビクと震えて。
「・・・っ!!はぁっ・・あああぁ!!」
噎せ返るような薔薇の花の香気の中で。
抱き合う身体が、一つに溶け合うまで。
優しく、激しく、何度も。
彼の奥へと・・・。
快楽に打ち震えるその身体を抱きしめながら。
男は瞳を細め、愛しげに彼を見つめた。
そして、耳元に吐息を吹き込むようにして囁いた。
「・・・Herzlichen Gluckwunsch zum Geburtstag・・・」
―― 誕生日、おめでとう ――
〜 END 〜
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2004年9月19日のハインオンリーの無料配布本。
その内容を、ほんの少しだけ加筆訂正してアップしました。
うわー、こんなんでハインの誕生日祝っちゃったんだ、自分・・・。
と、我に返った今、思いました(汗)。
自分では気合を入れて書いたつ・も・りでございました。
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