■鬼畜紳士に捧げる10のお題■
7 征服欲
クリアブルーの瞳をそっと細めて笑う。
穏やかな表情で。優しく。
しかし、その笑みは自分ではない男に向けられている。
口唇を噛み締め、涙を流す。
その時、抱きしめて慰めてやる腕が、自分のものではないという事実。
ひどく、苛立ちを感じる。
抱きしめることは愚か、その瞳に己が映る事もない。
自分の存在でさえも・・・。
「お前は知らないのだろうな、アルベルト・・・?」
お前は、この私のモノなのに。
それはひどく、嘆かわしいことだと。
深く、息を吐いた。
「アルベルト・・・」
目の前で、瞳が大きく見開かれた。
「初めまして。私は、もう一人のお前。名は・・・そうだな、シュヴァルツとでも呼んでもらおうか」
腰掛けていたベッドからスルリと滑り降りて。
優雅に、一礼をした。
「今日は、お前を迎えに来た。お前は私のモノ。私と共に在るべき存在なのだからな」
スイと手を伸ばし、その腕を掴む。
「放せ・・・!」
乱暴に振りほどこうとされたが、それを許しはしない。
「聞こえなかったか?お前は、私のモノだと言ったのだが?」
「オレは誰のものでもない・・・!」
その言葉に、薄く笑って答えた。
「何を愚かな。お前が私のモノであるという事は、自明の理ではないか。多くは言わん。私に従え」
「誰がっ!!」
瞳に宿る、苛烈な光。
強気なその態度も愛しい。
「ククク・・・」
「何が可笑しい・・・?」
腰を引き寄せ、抱きしめた。
「なっ・・・」
「アルベルト・・・。お前は、私のモノだ・・・」
耳に吹き込むようにして、そう告げて。
羽織っていた漆黒のコートをバサリと翻す。
次の瞬間、部屋は蛻の殻となった。
ずっと欲しかった男を、手の中に収めた。
この腕に閉じ込めて・・・。
決して、逃しはしない。
一番望んでいる、『自由』以外ならば。
「望む物は、ずべて与えてやる」
そう言い放ち、尊大に見下ろすと。
ゾクゾクするようなキツい眼差し。
「クク・・・」
思わず笑いを零すと、不愉快そうに顔を背けた。
「こちらを向け、アルベルト」
命じたが、白い頬は背けられたままだ。
「・・・アルベルト。私の命令は、絶対だ」
顎を持ち上げて、無理矢理に口唇を重ねた。
口唇を放すと、上気した頬の色。
けれどもやはり、その瞳は強く、光を湛えている。
「私を憎むなら、憎むがいい・・・」
今は憎まれていても構わない。
この美しい男はいずれ。
自分の足元にひれ伏し、自分だけを求めるようになるのだから。
「・・・ククク・・・」
低く笑い、指先で口唇のラインを辿った。
「アルベルト。お前は私のモノ・・・。その身体に、この私を刻み込んでやるぞ。たっぷりと時間をかけて・・・な」
・・・悦びに、狂わせてやるぞ・・・。
そして。
「私のために、美しい歌を奏でろ。イイ声で啼け」
露わになった白い胸元に指を滑らせて。
逃れようと身を捩る姿に、目を細めた。
どんなに足掻いても無駄なことだと・・・直ぐに、思い知ることになるだろう。
絶望に震えて見せろ。
涙を流せば、私が優しく慰めてやろう。
そう、優しく・・・。
お前は、私のモノ・・・。
誰が何と言おうと、私がそう決めたのだから。
堕ちてこい、私の腕の中。
何もかも忘れて、私だけのモノになれ。
お前は私のモノ。
お前は私のモノ。
お前は・・・私だけの・・・。
〜 END 〜
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黒いお人は、とってもハインさんへの独占欲が高そう!!
と思い、そういう話を書きたかったのですが、
力不足ですみません(汗)。
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