■鬼畜紳士に捧げる10のお題■
10 美しい昇天を夢見て
深紅の薔薇の花束を、投げ出す。
それはフワリと宙に浮かび、ハインリヒの腕の中に納まった。
戸惑いを隠せない。
そんな表情で、ハインリヒは薔薇に視線を落とした。
「アルベルト。それはお前にくれてやろう」
カツカツと高く靴音を立てながら、シュヴァルツはハインリヒに近付いた。
指を伸ばし、白い顎に手をかける。
「アルベルト」
透き通った淡いブルーの瞳が、シュヴァルツを黙って見上げた。
花束ごと抱きしめると、二人の間でクシャリと花が潰れた。
「・・・花が・・・」
小さな抗議の声。
構うことなく、そのままソファの上に押し倒した。
ハインリヒの腕は、花束を大事そうに抱えたままだ。
シュヴァルツが無造作に花を掴むと、褐色の指の間から、花びらが零れ落ちた。
ハラハラと、ハインリヒの周りに散らばる花びら。
そしてシュヴァルツは、彼から花束を取り上げるようにして、その頭上辺りに放り投げた。
「・・・オレが・・・。オレが貰った花なのに・・・」
シュヴァルツを見つめる瞳が、泣き出しそうに潤む。
「可愛い事を言ってくれる・・・」
クク・・・。
とシュヴァルツは笑い、白い額に口付けた。
「安心しろ。薔薇の花束なんぞ、後で幾らでもくれてやる」
ハインリヒはキュッと瞳を閉じ。
長い銀の睫毛が微かに震え、シュヴァルツは楽しそうな笑みを浮かべてその様を眺めた。
「アルベルト・・・」
耳元で、低く名前を呼ぶ。
ヒクリとハインリヒの身体が動いた。
頬が薄っすらと紅を刷く。
薄い口唇を指先で撫で、己のそれを重ねた。
そして舌先でペロリと舐め上げると、躊躇いがちに、口唇が薄く開かれた。
舌を滑り込ませ、口内を犯す。
ちゅく・・・ちゅ・・・。
「ん・・・ふっ・・・」
苦しげに、ハインリヒが眉根を寄せる。
けれどもその表情には、快楽の色が混ざりつつあった。
口付けから解放してやり、
「アルベルト」
名前を呼ぶと、閉じられていた瞳が開いた。
今度は・・・ただの涙ではなく、もっと別の色で濡れている。
「シュヴァルツ・・・」
「何だ?」
問いかけると、ハインリヒは視線を伏せた。
「・・・解るだろう・・・?」
バサリ。
何かの合図のように、ハインリヒの側に投げ出されていた薔薇の花束がソファから滑り落ちた。
床に散らばった花々と同じ色をした紅い瞳でハインリヒを見下ろし、
「望みどおりに・・・気が遠くなるまで愛してやるぞ・・・」
紅く散った花達から、微かに、香気が立ち昇る。
シュヴァルツは満足げに笑んで、腕の中の身体を抱きしめた。
〜 END 〜
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ラストのお題です。
今回は、耽美を目指してみました。
私は黒44を書く際に、
薔薇の花を小道具として使用するのが大好きv
思いっきり趣味に走りまくってしまいました〜(汗)。
これにて、「鬼畜紳士に捧げる10のお題」完結。
皆様、お付き合いいただき、ありがとうございました〜!!
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