二人の朝
カーテンの隙間から差し込む眩しい日差しに。
ジェットはふと、目を覚ました。
瞳を開き、隣を見ると。
ハインリヒが毛布に包まって、ぐっすりと眠り込んでいる。
ジェットに、背中を向けて。
(猫みたいで、カワイイな)
と、ジェットは思う。
「おはよう、ハインリヒ」
小さく囁いて、光に透ける銀の髪にキスをすると、ハインリヒの身体が毛布の中でごそごそと動き。
ジェットから少し、距離を取った。
「・・・も、やだ・・・」
寝ぼけているようなハインリヒの声が聞こえてきたが、彼が目覚める気配は全く無く。
ジェットはクスリと笑って、ベッドから上体を起こした。
「ハイハイ、分かりました」
ここは、大きな窓から海が綺麗に見える、あるホテルの一室。
『夏なんだから、海に行こう!!』
気が進まなそうなハインリヒを、ジェットが無理矢理引きずり出して海に行き。
様々なシーンを割愛して、とにかく二人は、一緒に朝を迎えたのである。
ベッドの上のハインリヒにチラリと視線を走らせた後、ジェットは含み笑いを漏らした。
(昨日のハインリヒ、めっちゃくちゃ可愛かったな〜)
などと、ハインリヒが聞いたら怒鳴りだしそうな事を考えながら、ジェットはテラスに続く大きな窓に歩み寄り、カーテンを開けた。
「いい天気だな・・・絶好のデート日和だぜ」
呟きながら、ジェットが窓を開くと。
爽やかな風が、フワリとカーテンを揺らした。
カーテンを揺らした風は、部屋の中にまで吹き込んで。
ベッドの上のハインリヒの髪が、サラサラと風になびいた。
「うーん・・・」
ハインリヒの寝ぼけ声が、再度ジェットの耳に届く。
もぞもぞと毛布が動き、ハインリヒがゆっくりと起き上がる姿が見えた。
「ハインリヒ?おはよう」
ジェットが声をかけると、ハインリヒの瞳がぼんやりとジェットの方を向き。
次の瞬間、色白の頬が、朱を刷いたように赤くなった。
(照れてる、照れてる)
そんなハインリヒの様子を嬉しく思いながら、ジェットはもう一度彼の名を呼んだ。
「ハインリヒ」
「・・・・・・」
「おはよう。良く眠れたか?」
「・・・・・・・・・」
返事は無かったが、ハインリヒは小さくコクリと頷いたのが分かる。
ジェットはやっぱり、訳も無く嬉しくなる。
ニコニコと笑うジェットに、ハインリヒが不機嫌そうな表情になった。
「・・・ヘラヘラするな。みっともない」
「いいじゃーん。オレの勝手だろ?」
言いながらジェットは冷蔵庫に近づいて、その中からミネラルウォーターを取り出し。
二つのグラスに、中身を注いだ。
「飲むだろ、お姫様?」
「・・・フン」
ハインリヒがベッドから起き上がり、ジェットの方に歩いてくる。
風が気持ちいい窓辺で、ジェットはハインリヒにグラスを手渡した。
「今日は、すっげーいい天気だぜ?」
「・・・そうだな」
水を飲みながら、ハインリヒが答える。
(喉元・・・キレイだな)
そんな事を考えながら、
「今日は、どこに行こうか?」
そう、訊ねると。
「お前と一緒なら、どこに行ったって同じだからな。好きにしろ」
ぶっきらぼうな言い方だったが、ジェットには分かる。
『お前と一緒なら、どこに行ったって同じ』という言葉は、ハインリヒなりの精一杯の愛情表現なのだ。
「OK!」
ハインリヒにニッと笑いかけた後。
ジェットはハインリヒの頬に、チュっと音を立ててキスをした。
「ジェット!」
可哀相なくらいに赤くなって、
「朝っぱらから、馬鹿かお前は!?」
そう怒鳴るハインリヒに、
「じゃあ、昼や夜ならイイんだ?」
ニヤリと笑いながらジェットが問いかけると。
「・・・知らんっ」
ハインリヒは、そっぽを向いてしまった。
「ゴメン。ちょっと意地悪だったか?」
「・・・・・・」
(怒ってても、やっぱ可愛いよなぁ・・・)
無言で怒りを示すハインリヒを、ジェットはギュッと抱きしめる。
「そんなに怒らないで、オレのハインリヒ。今日も一日、楽しく過ごそうぜ?」
「・・・馬鹿・・・」
「ひっでーなぁ。オレはマジメに言ってるのに」
「フン」
なおもそっぽを向くハインリヒに、ジェットは真面目な表情になって、
「ア・イ・シ・テ・ル」
呪文のように、そう告げた。
「・・・っ!!」
再び赤くなるハインリヒを見て、ジェットは心から楽しく笑った。
「言うぐらい、イイだろ?ホントのコトなんだからさ」
「ジェット!」
優しい風が肌に心地良い。
爽やかな夏の、二人だけの、朝の話であった。
〜 END 〜
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プラム様のあの素敵イラストにこの話かい!?
と思った皆様、ごめんなさい。
自分でもそう思ってます。許してください。
でも、どうしても書きたかったの〜。
本当は本文中にある「割愛されたシーン」を書きたい気分満載ですが、
それはもうちょっと、自分が大人になってから(爆)。
てゆーか、ウチのサイトで許されるのは、突然の暗転まででしょう(笑)。
とにかく、ラブラブ24が書けたので、これでよしっ!
あ、ハインリヒに「馬鹿」と言わせるのと、ジェットがハインリヒを抱きしめちゃうのは、
どうやら24書くときの私の中のお約束らしいです・・・。
と言うわけで、本当にお粗末さまでした。
そして改めまして、プラム様、ありがとうございました!
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