人工的に造られたモノよりも。


自然的に。


生まれたモノに心惹かれるのは。


俺達がそうであったからだと。


俺は時々思うことがある。




創作物



夏の夜空に打ち上げられる花火を皆で見よう、と。


提案したのはジョーだった。


彼は混血児であるが、立派な日本人でもある。


彼の意見に素早く反応したのは紅一点のフランソワ―ズで。


他の仲間も次々に反応を返した。


ジョーの意見で夜、町の花火大会に皆で行くことになった。


俺にとっては初めて行くお祭りに少々うかれ気分だったのは確かで。


アルベルトと一緒に行けることがとてもうれしかった。


だが、かの本人は。


嬉しがるどころか。


押し隠してはいるものの少し、戸惑い気味だった。


彼は人ごみを嫌う。


それは、たった一人だけ改造された部分が露わになっているから。


っと、言う理由もあるかもしれないが。


性格上、彼はあまり人と触れ合うことを好まなかった。


そんな彼の気持ちを承知の上で彼の手を引いた。


花火大会だから、人が多いことは何となくだが予想が出来ていた。


だが、この多さは普通ではないと。


俺は少し思った。


ジョーから『人は多いと思うよ。』と聞いてはいたが。


これは人知を超えている。


流石に彼を連れて来たことを後悔した。


彼は人の多さに唖然とした後、俯いていた。


人と目を逸らすように。



罪悪感も芽生えてくる。


彼のそんな行為を目にすれば。


彼が友達なら罪悪感もこれ以上は沸いてこないはずだが。


彼と自分は恋人という枠にはまる。


恋人のことを考えもしないで自分の感情を押し付けるのは。


一番悪い。


今回の俺の行動がそうだ。


家から繋いでいた手が強く握られる。


震えも振動してくる。


俺はその手を強く握り返すと。


フランに脳内通信で話し掛けた。


『アルベルトが気分悪いらしい・・・。だから、ちょっと休んでくる。』


フランは、わかったわ、と言って素知らぬ顔でジョーの隣を歩いていた。


俺は仲間達にわからないように彼を引っ張って人目に付かない場所へと移動した。


「ジェット・・・どうしたんだ・・・?」


彼は俺の顔を見上げながら不思議そうに言った。


俺は彼の頭を撫でて、ごめん、と小さく呟いた。


「・・・誤ることなんか・・・。」


「気がつかなくてごめん。」


「・・・・・・。」


「俺が人一倍・・・アンタ以上にアンタを知っていたいって言っていたのに・・・。」


俺は自分のことばかり。


「ごめん・・・。」


「ジェット・・・。」


彼は俺の名前を呟いて、そっと右手を俺の頬に添える。


人工手袋をしてある右手からはそれを通して冷たい、本来の彼の右手の感覚が伝わってくる。


「怒ってない・・・?」


「・・・ああ・・・。」


「本当に?」


「怒っていない・・・。」


俺はどうしても臆病になってしまう。


こんな状況のときは。


彼はそれを知っているような顔で、優しく話をする。


嬉しいような。


ちょっと悔しいような。


不思議な感覚。


涌き出てくる感情に従うように彼を抱きしめていた。


そして。


彼を抱きしめたまま、ジェットエンジンを点火。


空高くに飛んで行った。


彼は最初は慌てていたものの。


後になってはため息を一つ付いて直ぐに、大人しくなった。


彼を空中でお姫様抱っこに変えると。


俺はある場所へと飛んで行った。


「今日は・・・2人だけで見よう。」


俺はそう言って彼を地面に立たせた。


そして、彼の右手を掴み。


人工皮膚の手袋を外した。


「ジェット!!」


彼は慌てて、俺が持っている手袋を取ろうとした、が。


俺はそれを交わして、彼の右手にキスを落とした。


彼をビックリしたようすで。


俺の行動を見ていた。


「此処には誰も来ないよ・・・。」


「・・・・・・。」


「花火・・・見れないけどさ・・・。」


俺は彼の視線を促すように空を見つめた。


「此処は人工的に造られた花火よりも綺麗だと思うよ。」


視線の先には散りばめられた星屑が綺麗に輝いている。


何とも幻想的な感じで。


彼は瞳にその風景を映していた。


「・・・ジェット・・・。」


彼は空を見上げたまま。


「ありがとう。」


と、小さく呟いた。



人工的に造られたモノが。



必ずしも美しいとは限らない。



自然的に生まれたモノが。



必ずしも輝いているとは限らない。



それを見る人の心で。



全てが変わって見える。



美しいって思ったり。



綺麗だって思ったり。



そうやって思えるのは、俺達が人間である証拠なんだよね。




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「NOAH」の皐月透さんのサイトで公開されていた、残暑お見舞いです。
速攻でいただいてまいりました(笑)。
ジェットもハインも、可愛らしくてカッコイイですよね!!
なんて素敵24なんだ〜、と、萌え萌えです。
ジェットのハインリヒへの想いが、良く現れてて。
ジェットがハインの手にキスするシーンは、特に萌えでした。
手にキスって、管理人すごく好きなパターンなんですけど、自分じゃ綺麗に書けなくて(涙)。
皐月さんの文章は透明感があって、大好きです。
こんな素敵なお話を気前良く下さって、本当にありがとうございました♪




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