海での過ごし方




「やっぱり海に来てよかったなあ!」

そんな風に言いながら、脱ぎ捨てた靴もそのままに波打ち際で足を海に浸すその後姿を、

少し離れた砂浜に座ってのんびりと眺めた。

今朝の抜けるような青空の天気を見て、突然海に行こうと言い出した彼に驚きながらも、

結局押し切られる形で、こうして海まで来た。

折角だからドライブがいいと言った彼がジョーに車を借りて、わざわざこうして砂浜に入って

直接波に触れられるような、この場所まで来た為に既に太陽は水平線の向こうに沈みかけていた。

しかしその光景がとても心を惹きつけ、思わず寄せる波に向かう彼に続かず、こうして座り込んで

その景色を眺めていたのだが、そこで振り返ると彼が言った。

「何してるんだよ。せっかくの海だぜ?」

「海なら別にこうして座っていても見れるし、楽しめるだろう?」

彼の言葉に少し大きな声を張り上げつつそう返したが、その答えに彼は満足しなかったらしく

小走りでコチラに向かってくると隣へと腰を下ろして、間近言った。

「確かにそうかもしれないけど、俺は恋人同士の海の楽しみ方がしたいの。」

「恋人同士の楽しみ方?」

彼の言葉の意味が分からずに、オウム返しに聞き返すと楽しそうに彼は笑った。

「そう。波打ち際で走りあうやつ。」

「・・・・。」

そのセリフに思わず返す言葉もなく、絶句していると彼はちょっと驚いたように言った。

「え?やんないの?」

「やるわけないだろう!」

ようやく自由になった口でそう告げると、しかし今度は苦笑して彼は続けた。

「何だよ、せっかくの海。恋人同士だったらやらないはずはないけど・・・。」

「それはお前の勝手な思い込みだろう?それにそんなの俺たち二人でやっても恥ずかしいだけじゃないか。」

後半のセリフは何となく視線を足元に落として言ってしまう。

しかしそれを気にした様子もなく、彼はまた告げる。

「そうは言うけどさ。別に恥ずかしくもないぜ?大体ここには今俺たち二人しかいないし、

 それに何より恋人同士だからやりたいというよりも、もっと突っ込んで言えば俺はアンタだからやりたいんだけどな。」

「?」

その言葉の意味がまたもわからずに視線を上げて首を傾げると、満面の笑みで彼は言った。

「俺の大好きなアンタだから、一緒に波打ち際を走りたいって思ったんだ。」

「・・・・。」

今度はなんと返したものかと思わず固まってしまったのだが、すると彼は首を竦めて続けた。

「あ、でもアンタは俺のことそんなに好きじゃない?」

「それは・・・・。」

彼の言葉に何か返さなければと咄嗟に思って、考えのまとまらないまま言葉を紡ぐ。

「それは、別にお前のことが好きじゃないわけじゃなくて、

 ただ俺にとっては波打ち際を走るなんてのは、ちょっと・・・。」」

すると彼はうってかわってまた優しく微笑んだ。

「なんだ、どうした?」

その態度が何故起きたのかわからずにそう尋ねると、益々幸せそうに笑んで彼は続けた。

「ん?だって今のセリフ、遠まわしだけれどちゃんと俺のこと好きって聞こえたからさv」

「な・・?」

それを聞いて、確かに少し前の自分のセリフはそう聞こえたかもと思って、瞬く間に頬が赤くなるのを感じる。

だが何を言ったらといいのかわからずにあたふたしていると、それより早く彼は告げた。

「いいよ、何も言わなくても。アンタのそういうところ、すごく可愛いよな。」

そして軽く引っ張られ、互いの額をあわせるようにすると楽しそうに彼は言う。

「顔が真っ赤なのはこの夕焼けのせいにしといてやるよ。だからその代わりにさ。」

「?」

「一つキスしてくれよ。」


その言葉に逡巡した挙句、結局求められるままに一つキスをしたのは、

きっと自分も何だかんだと言いながらも、折角の海で恋人同士がすることをしたかったからということにしておこう。

だからそのままのんびり夕焼けが沈みきってしまうまで、二人寄り添って海を眺めていた。


そんな初夏のある日の出来事。




〜END〜








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神咲ハヤト様の3周年記念部屋から頂戴してまいりましたv
夏の海辺のとても甘い24に、大満足です〜!!
ハインさんからのちゅーって、普段なかなかないと思うので、
ジェットにとって大変貴重な機会かとvvv
「波打ち際で走りあうやつ」も是非やっていただきたかったです(笑)。
ラブラブスウィートな24に、心癒されましたvvv
ハヤト様、ありがとうございました。
今後も素敵24を我々に見せてくださいませね〜!!





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