HATSUKOI




よく晴れた夏の暑い日。

何故かまた他愛も無い事で口論になってしまった。



「ガキっぽいって何だよ!」

「ガキだからガキだと言ってるんだ。」

俺はただ、アンタとデートがしたかっただけなのに、

けど売り言葉に買い言葉ってヤツで、ついクチに出た言葉がアンタを本気で怒らせてしまって。



「そのガキに抱かれてあんあん喘いでいるのはどこのおっさんだよ!」



その瞬間、ヤバイと思ったけどもう遅くて。

「テメェ!今ここで蜂の巣にしてやる!!」

たまたまそのドタバタを聞きつけたグレートが止めなかったら、

俺は足の一本も無くなっていたに違いない……。






「まったく、お前さんはハインリヒを怒らす事にかけては天才的だね…。」






呆れたようにため息を吐いたグレートがタオルを冷やして持ってきてくれた。

アルベルトはどうしたかといえば、

グレートが張々湖飯店まで届けて欲しいものがあるからって

宥めて俺から引き離してくれたお陰で、俺の足か手が吹っ飛ばされるのは免れた。

「……別に好きで怒らせた訳じゃねぇよ!って、イテテ…。」

つい、怒鳴ったら力一杯殴られた頬が痛くて思わず蹲る。

「ほらほら、ちゃんと冷やしなさいよ。」

俺はイライラがおさまらないまま、奪うようにタオルを受け取りムスッとして窓の方へ視線をやった。

そんな俺に黙って付き合うようにして暫く隣に座っていたグレートだったが、

「取りあえず何か飲むかい?」

と何事も無かったようにニッコリと笑ってキッチンへ向かった。

その優しさに何だか申し訳なくて、戻ってきたグレートに俺は訳を話すと、グレートは黙って話を聞いてくれて。

一つため息を吐いて、ハゲ頭をボリボリ掻きながらこう言った。



「悪かったと思っているなら、これを飲んでハインリヒに謝っておいで。」



グレートが差し出したアイスティーを一口飲むと、クチの中に広がる香りと味に驚いて、

俺はビックリして何度が味を確かめる。

「おっさん、これって……?」

「初めてお互いを意識した時はこんな味ではなかったかね?」

俺の顔を見たグレートは、そう言ってニィ…と笑った。





夕方になってアルベルトが帰ってきたけど、やっぱりクチを聞いてくれなくて、

俺はあの時淹れてもらったアイスティーを、グレートに一緒に作ってもらいアイツの部屋へ謝りにいった。

コンコン、と何度かノックをしてやっと現れたアイツの顔は不機嫌そのものだったけど、

「さっきはゴメン!!俺が悪かったよ!」

と、昼間の失言を詫びてドアの前で謝った。

「お詫びにアイスティー持ってきたんだ。……その、良かったら。」

未だ怒りが収まらない表情をしていたアイツの顔を覗きこむと、苦虫を潰したような表情で部屋の中へ入れてくれた。

零さないようにアイスティーが乗ったトレーをテーブルの上に置いて、俺はまた小さくなって謝った。

「あんな事、言うつもりじゃなかったんだ。俺はただ、あんたと一緒に……。」

「……もういい。」

ため息混じりに腕を組んで謝る俺に背を向けると、一言俺も悪かったと呟いて許してくれた。

「それより、そのアイスティーはお前が淹れたのか?」

チラッとアルベルトがアイスティーに興味を向けた事に俺は嬉しくなったけど、

また昼間みたいにならないようにジッと我慢して答えた。

「グレートに教わったけど、ちゃんと俺が淹れたんだ。」

「そうか……。」

そう言ってアイスティーをクチに運んだアルベルトの表情が驚きに変わっていく。

「ジェット、これは……。」

「俺、初めてアンタに触れた時、そんな気持ちだった…。甘くて酸っぱくて。」

「ジェット……。」



初めてアンタを見た時、俺の心に衝撃が走ったのを覚えている――。

今まで感じた事ない思いが、じわじわと俺の心を染めていって、アンタでいっぱいにしてしまった。

アンタに触れるたびに、俺の心に広がる思いはまるでそのお茶と同じ香りがして……。



「俺、アンタの事怒らせてばかりだけど、でもアンタに対する気持ちはウソじゃねぇから……。

そのアイスティーのお茶さ、“HATSUKOI”って言うんだって。」



クチの中に広がるグリーンレモンの香りと、

緑茶のような色合いと爽やかでみずみずしい口当たりは、アルベルトの心を潤してくれるだろうか……?



「……“HATSUKOI”か。」



そう呟いたアルベルトの表情はいつものアルベルトで。

「ジェット、明日昼からなら遊園地に付き合ってやってもいいぞ。」

「え?ホント…?」

「その代わり、このお茶が美味しく頂ける店をグレートに聞いておいてくれないか?」

「あ、うん。」

「そうか“HATSUKOI”か……。」





アルベルトの機嫌を直したお茶に感謝して、

明日はちゃんとアルベルトをエスコート出来るように、俺は早めに休む事にした。



  〜終〜









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高橋一成様のサイトの暑中お見舞いを頂戴してきましたvvv
高橋さまのジェットは、いつも一生懸命な所が可愛いです!
今回も、ハインさんのためにお茶を淹れてくれる、
その優しい気持ちに、私はクラリとしました。
グレートさんが、とってもいいお味をだしていらっしゃいますv
ジェットを蜂の巣にしてしまいそうな、
ちょっぴり大人気ないハインさんも好きですv
ハインさんのご機嫌が治って良かったですよ〜。
高橋さま、甘酸っぱいレモン味の、
爽やかな24をありがとうございましたvvv





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