文字書きさんに100のお題
004:マルボロ
(ロドマカ)
ロッドの唇から紫煙が吐き出される様を、マーカーは黙って見つめていた。
左手の人差し指と薬指の間に煙草を挟み、口元に持っていくその仕草は嫌いではない。
けれども。
「ロッド」
名前を呼ぶと、青い瞳がマーカーに向けられた。
「何だ?」
「私の前では煙草を吸うなと。そう、言っておかなかったか?」
「ん〜。言ってたかもな」
とぼけたような口調が、癇に障る。
「もう一度言う。私の前で、煙草を吸うのはやめろ」
「どうして?」
ニヤニヤと笑いながら、ロッドが問いかけてきた。
その笑い方も、癇に障った。
「理由などない。ただ、私が嫌だからだ」
ロッドがあまりにも美味しそうに煙草を吸うから。
その時、ロッドの中に自分の存在が無くなっているような気がして、それが嫌なのだ。
口が裂けても、本人にそんなことは言ってやらないけれど。
「理由がないなら、別にイイだろ。吸っても?」
何もかも見透かしたような、その余裕のある眼差しにも腹が立つ。
マーカーは腕を伸ばし、テーブルの上に無造作に置かれていた煙草のパックを掴み上げた。
「おいおい、マーカー。それは横暴なんじゃないか?」
取り戻そうとしたロッドの指が、マーカーの腕に触れた。
そのまま、引き寄せらる。
「離せっ!!」
「ダメ。離さない」
青い瞳が、キラリと光る。
重なる唇。
・・・煙草の味がするキス・・・。
唇を離して、ロッドは人の悪い笑いをその頬に浮かべた。
「意外に美味かったろ??」
「・・・ばっ、馬鹿者がっ・・・!」
赤くなっている顔を見られたくなくて、マーカーはロッドから顔を背けた。
「俺が吸ってる煙草の銘柄って、マルボロなんだけどさ」
そんな話、聞きたくもない。
『私の前で嬉しそうに他のモノの話をするなど、言語道断!』
唇から飛び出そうになったその言葉を、マーカーは慌てて喉の奥に押し込んだ。
「Mens Always Remember Love Because Of Romance Onlyの頭文字を取って、Marlboroっていうらしいぜ?」
「それがどうした?」
「人は、本当の愛を見つけるために恋をする」
「はあ?」
「直訳すると、そういう意味なんだとさ。俺にぴったりの言葉だと思わない?」
一体、この男は何が言いたいのだろう?
そう思った瞬間、
「愛してるぜ、マーカー。だから、煙草にヤキモチ焼くなよな」
耳元で囁かれ、ドキリとする。
そして、タイミング良く、再度重ねられる唇。
そのキスは。
やっぱり、煙草の味がした。
「ご馳走様v」
自分の目の前で微笑んでいるこの男が。
腹立たしいけれど、どうしようもなく愛しい。
けれども。
『愛してる』
なんて、絶対に言ってやらない。
手に持っていた煙草のパックをテーブルの上に戻して。
「もう良い。好きなだけ吸え」
そう言うと、ロッドはニヤリと笑った。
長い指が、パックから一本、煙草を抜き出した。
ライターの炎が、目に眩しい。
ロッドはひどく美味そうに、煙草を吸い。
フッと唇から、紫煙を吐き出した。
マーカーは黙って、その姿を見つめた。
〜 END 〜
やっと100SSでロドマカ書けました(笑)。
煙草がテーマなので、大人の雰囲気にvと思ったのですが、玉砕。
どうやらウチのマーカー師匠は、すごく独占欲が強いようで(滝汗)。
ヤキモチ焼きさんで、しかも乙女モードも入っているという、
もう救いようのない性格付けになってしまいました・・・。
スミマセン、スミマセン。
でもロドマカは、これからもこーゆー感じになりそうなのが怖いです・・・。
マルボロについては、「マルボロ愛好会」様のHPを、
参照させていただきました。
煙草については、全然分からなかったので・・・(笑)。
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