文字書きさんに100のお題

005:釣りをする人
(ルヴァリモ)





 ポカポカと暖かい、ある日の曜日。



「ああ〜。今日はいい天気ですねぇ・・・」
 自室から窓の外を眺め、ルヴァは嬉しそうに呟いた。
 空の色は限りなく青く。
 鮮やかな蒼の中に、白い雲がゆっくりと流れている。
 そして、柔らかな太陽の日差し。
「絶好の釣り日和ですねぇ、うんうん」
 こんなに気持ちのいい日なのだから。
 釣り糸を垂れてボーっとする時間を楽しもう。
 そう、ルヴァは思った。
「それでは、準備でもしましょうかね」
 そしてルヴァは、イソイソと釣り道具の準備を始めた。



 釣り道具を抱え嬉しそうな顔つきで森の湖に現れたルヴァは、日当たりの良い場所を選んで、その場に腰を下ろした。
 釣り針に餌をつけ、そっと湖の中に釣り糸を垂らす。
 そして、ボーっとしながら待つのだ。
 ルヴァの釣りの腕前はお世辞にも上手いとは言えないが。
 例え魚がかからなくとも、釣り糸を垂れて待つ時間はひどく心地よくて。
 その時間が、ルヴァは好きだった。
 穏やかに小波を立てている水面を眺めながら。
 ただ、ボーっとするだけの時間。



「ルヴァ様?」
 遠慮がちな声に名前を呼ばれ、ルヴァはハッと声の主を振り返った。
 眩しい太陽の光を受けて、少しクセのある金の髪を輝かせながら。
 アンジェリークが、立っていた。
「私邸に伺ったら、こちらにいらっしゃるって・・・」
「おやおや。私に何か、ご用ですか?」
 アンジェリークはそれには答えず、ただニコリと笑顔を見せただけだった。
 そして彼女は、ちょこんとルヴァの隣に座った。
「ルヴァ様の釣りに、ご一緒させていただいてもいいですか?」
 若い女性の口からそのような言葉を聞けるとは思いもよらなくて、軽い驚きを感じながらも、ルヴァは笑って答えた。
「あなたさえ良ければ、私は構いませんよ」



 釣り糸を垂れている時間は、ルヴァにとって心穏やかな時間だった。
 それは、以前から分かっていたことだったが。
 今日はいつも以上に、心が凪いでいるような気がした。
 隣のアンジェリークもまた、穏やかな表情で、微かに揺れる水面を眺めている。
 しみじみと、幸せな気分に浸りながら。
 ルヴァは釣りを続けた。

 コツン。
 肩口に重みがかかり、不思議に思ってアンジェリークを見やると、スースーと愛らしい寝息を立てながら、彼女は眠っていた。
「おやおや・・・」
 クスリとルヴァは笑った。
 肩にかかる重みを心地よく思いながら、ルヴァはそのまま、釣りを続ける。
 ルヴァは、とても幸せだった。
「あー。今日は本当にいい天気ですねぇ」
 誰に言うともなく、ルヴァの唇からそんな言葉が漏れる。
 水面に映った空が揺れる。
「本当に、いい天気ですよね」
 アンジェリークを起こさないように気を遣いながら。
 ルヴァはそのまま、釣りを続けた。



〜 END 〜





ルヴァリモ?ルヴァリモなんですか、これは!?
という痛いツッコミはさておき。
カップリング色は弱いですが、釣りが好きなルヴァ様、
はキチンと表現できてると嬉しいです。
で、アンジェリークと一緒だと、いつもよりいい気分だな〜、
とルヴァ様に思っていただきたかったわけで。
ああ、言い訳ばっかりだな・・・。
少しでも楽しんで頂けたのなら嬉しいです。
いや、楽しかったのは私だでしょうか・・??






HOME   100のお題