文字書きさんに100のお題

027:電光掲示板
(不二乾)





 待ち合わせは、電光掲示板の前。
 人気アーティストの新曲のプロモーションが流れている、その下で。
 腕を組み、側の壁にもたれながら、少し俯気加減で。
 君が待っているのは、他の誰でもない、この僕。
 なんだか、それが嬉しい。



 どんな時でも。
 いつも時間の5分前に、君は待ち合わせの場所に現れる。
 僕はそれを知っているけれど、時間ピッタリに待ち合わせの場所に着くように、時間調整をした。
 だって。
 早めに来た5分の間、君は僕を待っている。
 僕だけを待っている。
 君を独り占めしているようなその5分が、なんとなく嬉しいから。
 だから、時間ピッタリに。
 遅刻はしないよ。
 嫌われたくはないからね。



 一歩一歩、君に近付いていく。
 長身でスタイルも良い君は一際目立って。
 周りで女の子達がこそこそと話をしながら君を見ているのは、少し癪に障るけど。
 掲示板から流れる曲に合わせて、時折、君の身体が軽くリズムを取って揺れる様とか。
 眼鏡がキラリと陽光を反射する様とか。
 眺めながら、君に少しずつ近付いていくのが嬉しい。



「乾」
 名前を呼ぶと、君の視線が僕を向いた。
「やあ、不二」
 君の口元が綻んで。
 その瞬間、度の強い眼鏡の奥に隠れた瞳が・・・優しく揺れることを、僕は知っている。
「待った?」
 尋ねると、
「待たないよ。だって今、時間ピッタリだ」
 腕時計に目をやって、君は笑った。
「貴重な休日を、僕のために空けてくれてありがとう」
「いいよ。どうせ、暇だったし」
 少し自惚れていい?
 僕の頼みだから、時間を空けてくれたって。
 そう、思ってもいいかな?
「今日は一日、僕に付き合ってねv」
 一緒に買い物して、お茶をして。
 プライベートな僕のデータなら、いくらだって取らせてあげるよ。
「乾、甘い物って大丈夫??」
「別に平気だけど」
「じゃあ、後でパフェでも食べに行かない?美味しいお店を知ってるんだ」
「・・・いいね」
 クスリ、と、小さく君は笑う。
 そして僕達は、一緒に歩き出した。



 僕の隣には君がいて。
 それだけで僕は幸せ。
 他の誰よりも長い間、側にいさせて。
 なんて、ワガママなことを思う。

 電光掲示板から流れるアーティストの歌声が、徐々に。
 僕達から遠くなっていった。




〜 END 〜


こっそりと(?)テニスをアップ。
不二乾ですvvv
乾受けだと、お相手は不二とか菊丸とか大石が好み。
下克上で越前や桃城、海堂などでも可。
ああでも、忍足なんてどうっすかね!?
もしかすると、乾受好きCPで、後何話かお題こなすかもです(汗)。





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