文字書きさんに100のお題
034:手を繋ぐ
(ゼフェリモ)
「あー。すっげーヒマだぜ・・・」
ボヤきながら、ゼフェルは手元の機械をいじっていた。
「なんか、集中できねえよなぁ」
行儀悪く執務机に足を投げ出し、大きく伸びをした時。
パタパタ、パタパタ・・・。
人の駆ける音が、聞こえてきた。
足音は段々と近付いてきて、ゼフェルの執務室の前で止まった。
元気の良い、ノックの音。
ゼフェルには分かる。
扉の向こう側にいるのは・・・アンジェリークだ。
ふわふわの金の髪が、ドアの隙間から覗いて、
「ゼフェル様〜??」
キレイな若草色の瞳の少女が、ひょっこりと顔を出す。
「おう。入れよ」
声をかけてやると、ニコニコと嬉しそうに部屋の中に入ってきた。
アンジェリークは、先ほどから、ただニコニコと笑っているだけだ。
ソファに腰掛けたまま、ゼフェルを見ては微笑む。
育成を頼むわけでもないらしい。
「おめーなぁ・・・」
いささか呆れながら、ゼフェルは問いかけた。
「一体、何しに来たんだよ?」
やっぱりニコニコと笑いながら、アンジェリークは即答した。
「ゼフェル様に会いに!」
あまりの衝撃に、ゼフェルは座っていた椅子から転げ落ちそうになった。
「なっ!ななななっ・・・!?」
「何かおかしいですか?」
アンジェリークが、小首を傾げた。
「だって私、本当にゼフェル様に会いたかったんですよ」
・・・なんて屈託なく、微笑むのだろう。
その笑顔はまるで、太陽のように眩しく。
「別によぉ。おかしいなんて思ってるワケじゃねえけどよ」
急に照れくさくなり、あらぬ方向を向きながら、ゼフェルは言った。
「おめーも物好きだよな、オレに会いたいなんて」
「私、ゼフェル様が大好きですよv」
微笑みを絶やさぬまま、アンジェリークはいとも簡単に、そのような事を言ってのける。
『大好きですよv』
その言葉が、ゼフェルの頭の中でエコーした。
特別な意味ではないのだと、自分に言い聞かせても、なお。
『大好きですよvvv』(←さり気なく、ハートマークが増えている・・・)
「ゼフェル様は、私がここにいると、ご迷惑ですか?」
アンジェリークの声にゼフェルはハッと我に返ったが、悲しいことに、質問の内容を聞きそびれてしまった。
「えっと、なんだ、その・・・」
しどろもどろになるゼフェルを見て、アンジェリークは悲しそうな表情をした。
「ごめんなさい、ゼフェル様・・・」
座っていたソファから立ち上がり、アンジェリークはゼフェルに背中を向けた。
「ご迷惑でしたよね。私、帰ります」
「まっ、待てよ!!」
引き止めようとして伸ばした手が、アンジェリークの手を握りしめた。
「迷惑とかそんなんじゃなくて。おめーがいるとよ、殺風景なオレの執務室も明るくなるっつーか、なんつーか・・・。ああもう!上手く言えねえ!!帰るんなら、寮まで送ってってやる!!」
グイっと、アンジェリークの手を引いて、ゼフェルは歩いた。
「ゼフェル様・・・」
小さな声で、名前を呼ばれた。
隣を歩くアンジェリークに視線を向けると、いつもほんのりとキレイなバラ色をした頬が、真っ赤に染まっていることに驚く。
「おい!おめー、熱でもあるんじゃねーか?」
尋ねると、
「ありませんっ!!」
即答し、プクリとアンジェリークが頬を膨らませる。
・・・さっきは泣きそうな顔をしてたってのによぉ。
アンジェリークの手が、スルリとゼフェルの手の平から抜け出そうとした。
その動きを拒むように、ゼフェルはアンジェリークの手をギュッと握った。
「ゼフェル様・・・」
もう一度、名前を呼ばれる。
そして、
「大好きです・・・」
続けられた一言に、今度はゼフェルが真っ赤になった。
赤くなった顔を見られたくなくて、あらぬ方向を向きながら。
「分かったから、黙ってオレに送られろ!!」
そう、怒鳴りつけるように言うと。
「・・・はいっ!」
急に元気になって、アンジェリークは答えた。
ニコニコ、ニコニコ。
太陽のような笑顔が戻ってくる。
「ホントに、おめーっておかしなヤツ・・・」
「ふふっ、そうですか??」
女王候補寮に向かって。
二人は手を繋いだまま、歩いた。
ニコニコと笑うアンジェリークに、いつの間にか、ゼフェルも一緒になって。
笑った。
〜 END 〜
初々しいお話を!!!
などと、激しく思いながら書きました〜。
そして、自爆。
ゼフェリモ、ですが、恋人未満です。
初々しさだけを求めるならランリモでもイケるはずなのですが、
私はゼフェリモスキーなので、
ゼフェリモを書いて一人満足でございました。
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