文字書きさんに100のお題

038:オムライス
(オスリモ)





 コロリ。
 持っていたスプーンで、オスカーはグリンピースを転がした。


「はーい。お食事の仕度が出来ましたよ〜」
 エプロン姿のアンジェリークが、軽い足取りで食卓のセッティングをしている。
 白いサラダボールに色とりどりの野菜のコントラストが美しいサラダ。
 パセリを浮かべたコーンスープ。
 そして、オムライス。
 鮮やかな黄色をした薄焼き卵に包まれているのは、ケチャップライスだ。
 真っ赤なケチャップで可愛く描かれているいくつかのハートマーク。
 食卓に乗っているのがそれだけであれば、これから嬉しい食事タイムに入れるはずだった。
 しかし。
 オムライスの頂点には、緑色の恐ろしい物体が君臨していた。、
(このグリンピースがっ!!!)
 コロリ。
 オスカーはさり気なく、2個目のグリンピースを皿の端に転がした。
 何を隠そう、オスカーはグリンピースが大嫌いだった。
 マヨネーズと並ぶ、食べられないもののうちの一つである。
 コロリ。
 3個目のグリンピースが転がる。
 オスカーの正面では、アンジェリークが嬉しそうに自作のオムライスを食べていた。
「オムライスって、美味しいですよね〜vvv私が作ったのが美味しいかは別として」
 確かに、オムライス自体は嫌いではない。
 それも今目の前にあるものはアンジェリークが作ってくれたものなのだから、 外で食べるものより何倍も美味しいハズだ。
「卵の黄色と、ケチャップの赤、そしてグリンピースの緑。このコントラストが見ていて楽しくて」
(俺は、黄色と赤とのコントラストだけで十分なんだ・・・)
 アンジェリークの言葉に、オスカーは曖昧に笑って見せた。
 彼女のスプーンにはケチャップライスと卵、そしてグリンピース。
(うわ〜っ!アンジェリーク、それは人の食べるものではないんだ!!)
 そんな思いを他所に、オスカーの嫌いな丸い緑色の物体は、可愛らしい口の中へと消えていった。
 ニコニコと満足そうに笑いながら、アンジェリークはオスカーの皿に視線を向けた。
 そして、不思議そうな表情をした。
「オスカー様、あまりお食事が進んでないみたいですけど・・・??」
「そっ、そうか?そんなコトはないさ!!」
 オスカーはハハハと乾いた笑いを発しながら、フォークを手にしてサラダを食べた。
 実際、グリンピースのことが気がかりで、まだオムライスを一口も食べていない。
 アンジェリークは、オスカーがグリンピースが嫌いなことを知らないのだ。
 知られたらきっと、笑われてしまう。
 子供のようだと思われてしまう。
 アンジェリークの前ではいつでも格好の良い男でいたかった。
 だから、グリンピースが嫌いだなんて、絶対に口に出したくなかった。
 コロコロと、4個目、5個目のグリーンピースがオムライスから転がり落ちた。
「オスカー様」
 アンジェリークの声に、ビクリとする。
 どうやら、グリンピースを転がす様子を目撃されたらしい。
「なっ、なんだい?」
「グリンピース、お嫌いなんですか??」
 オスカーはショックで赤くなった。
「ちっちっ、違っ!!グリンピースなんて、大、大、だいす・・・嫌いだっ!!!」
 大好きだと言おうと思ったが言い切ることが出来ず、オスカーは正直に嫌いだと宣言してしまった。
 恐る恐るアンジェリークの表情を伺い見ると。
 彼女は笑っていたが、それはオスカーを子供っぽいと笑っている表情ではなかった。
「誰にでも、嫌いなものってありますよね」
 優しくそう言いながら、アンジェリークがオスカーの方に身を乗り出す。
 銀色のスプーンが、オスカーのオムライスから落とされたグリンピースを掬い上げた。
「オスカー様、ちゃんとお食事を続けてくださいね」
「アンジェリーク・・・」
「嫌いなものがなければ、お食事も進むでしょう?」
 オスカーは、おもむろにスプーンを取り上げた。
 そして、オムライスをパクつく。
「美味しいですか?」
「美味い・・・」
 想像通り、アンジェリークの作ったオムライスは美味であった。
 アンジェリークは微笑んだ。
「よかった!それじゃ、今度からグリンピースを乗せないようにしますから!!」
 その言葉に、オスカーは思わず、苦笑した。





 食卓にはオムライス。
 彩りの美しいサラダに、スープ。
 アンジェリークが好んで作る昼食のメニューだ。
 けれども、オムライスにはオスカーの嫌いな物体は乗っていない。
「・・・いただきます」
「どうぞ召し上がれvvv」
 今回は何のためらいもなく、オスカーはオムライスをスプーンで掬った。
「美味い!」
「ふふっ。そうですか?」
 パクパクと、オスカーはオムライスを口に運んだ。




〜 END 〜


はい、オスリモで「オムライス」です。
オムライスと言えば、上にグリンピース。
グリンピースが嫌いな守護聖様といえば、オスカー様!
ということで、オスリモで書くことに(笑)。
オスカー様、ちょっとお子ちゃま入ってますが、
ふみふみはこーゆーオスカー様が好きです(笑)。
あんまりオスカー様がカッコよくなくて、
ファンの皆様には申し訳ありませんでした!!!




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