文字書きさんに100のお題

046:名前
(ゾロサン)





 アイツは、おれの名前を呼ばない。
「おい、くそコック」
「ああ〜ん?んだよ、馬鹿マリモ」
 だから、おれも名前なんて呼んでやらねえ。
「飯食わせろよ」
 食事時にこのおれ様が起こしてやったにも関わらず、ぐーすか寝ていたくせに。
 何なんだ、この偉そうな物言いは!?
 マジ、ムカつく。
「お前の分だ。有り難〜く食えよ」
 冷めた食事の皿を些か乱暴な手付きで出してやる。
「・・・冷てえ・・・」
「呼んだ時に起きないお前が悪い」
 ビシッと言ってやると、黙って食い始めた。
 モクモクと動く口元を、じっと見つめる。

 一度でイイから呼んでくれねえかなぁ。・・・・・・おれの、名前。

 そんなコトを思いながら、ゾロを見つめていると。
 皿の上の料理が綺麗に平らげられた。
「旨かったぜ」
 その言葉に、体温が少し、上昇したような気がした。
 いつも突っ掛かっちまうけど・・・。
 多分おれ、こいつが好きなんだよなぁ。
 と思う。
 見ていると、何となくドキドキするし。
 ドキドキって、恋の始まりじゃねえか?

「おい」
「んだよ?」
「てめえ、顔赤いぜ。熱でもあるんじゃねえか?」
「ねえよ!」
 無骨な手がスイと伸びて、おれの額に触れる。
「少し熱いな・・・。無理すんじゃねえぞ」
 ゾロが、おれの心配をしてくれている。
「てめえが倒れでもしたら、旨い飯が食えなくなるからな」
 って・・・!心配するトコロはそこかよ!!
「・・・・・・」
 黙ったまま答えないでいると、馬鹿マリモの瞳が、おれの目覗き込んだ。
「おい。てめえ、マジで具合悪いんじゃねえのか?」
「大丈夫だっつってんだろが!」
 ムカつく、ムカつく。
 イライラする。
 不機嫌に顔を背けると、
「くそコック、こっち向け」
 ・・・おれの名前は、コックじゃねえんだっつーの。
「おい」
 知らん顔をしてゾロに背中を向けて、空になった皿を洗い始める。
「コック!」
 そんな名前のヤツ、おれは知らねえな。
 しばしの沈黙。
 やっと諦めやがったかと思ったタイミングで。

「・・・サンジ・・・」

 ボンっ!!!
 顔から、火が出そうになった。
 やっと呼んだと思ったら。何だってんだ、その呼び方はっ!?
 掠れたような低いトーンで呼ばれてしまい、腰に来る。
 その呼び方は、反則だ、反則!!

「・・・サンジ、てめえ、何おれの事無視してんだよ?」

 うわー。分かった。頼むから、もう呼ばなくてイイ。
 何かもう、居たたまれねえ。
 すっげえ恥ずかしい。

 思いながら振り向くと、ゾロがニヤリと実に嬉しそうに笑った。
「顔、赤いぜ・・・?」
 頼むから、そーゆー突っ込みもやめろ。

 一度でイイから、名前を呼んで欲しい。
 願いは叶ったけれど。
 おれもう、普通にコックでイイ。

「・・・サンジ」

 そんな声で呼ばれちまったら。
 ドキドキが止まらなくなるじゃねえか、バカヤロウ。

 呼ばれたから、呼び返してやる。
「ゾロ!」
「・・・何だ?」
「皿を洗いてえんだよ。お前はとっととどこぞに消えろ」
 ・・・素直じゃなくて、悪いかコラ。
 って、何で一人で逆切れ・・・。

「やっぱ、赤いな。熱あるんじゃねえか?」
 言いながら、大きな手の平が再び、額に触れた。
 手の平からの温もりを感じて、カーッと全身が熱くなる。
 真っ直ぐな瞳を見ていられなくて。
 視線を外して、おれはただ、俯く事しか出来なかった。

「・・・サンジ?」

 だから、そんな声でおれの名前を呼ぶんじゃねえよ・・・。


〜 END 〜


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多分、色々と間違った知識で書いてます。
スミマセン、スミマセン。
あまりにも悶々としてしまったので、ちょっとやってしまいました。
萌えを吐き出さないと、他の作品が書けん!!
という事で(笑)。
気が済むまで、あと2・3本やるかもです〜。





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