文字書きさんに100のお題
073:煙
(ロドマカ)
爆音と共に。
その場に立ち昇る硝煙。
真っ白な手の中に、燃え盛る紅い炎。
トン、と軽く地面を蹴り上げ。
高く高く、空に飛んだ。
炎が、辺りを舞う。
爆風の向こう側で、漆黒の髪が風の吹く方向に靡いて。
まるで人形のように、無表情なその人。
そして、その地は、焦土と化した。
所々で、ブスブスと煙が上がっている。
全く感情を表さないままの切れ長の瞳が、辺りを睥睨して。
キレイなラインを描く顎が、グイと持ち上げられ。
視線が、空に移る。
その先には、何が・・・?
「マーカー!」
名前を呼んで、側に近付く。
ピリピリとした身の回りの雰囲気は、この際、無視することにした。
「随分と派手にやったもんだな」
ニヤリと笑いかけると。
「人の事を言えた様か?」
冷ややかな答えが戻ってきた。
「おっしゃるとおりで」
ロッドを見つめるその瞳には、相変らず感情の色がない。
戦場では、いつもそうだ。
その瞳を見ると、欲しくなる。
色彩のない瞳。
自分色に、染めたくなる。
「マーカーv」
細い腕を引き寄せ、腕の中に抱きしめて。
口唇を重ねた。
・・・苦い・・・。
戦場でのキスの味は、いつだってこうだ。
硝煙の味がする。
けれども、欲しいから。
奪うようにして、口唇を合わせる。
「・・・放せっ!!」
マーカーに振り払われ、ロッドは笑った。
漆黒の瞳には、怒りの色。
「戦場でこんな・・・!不謹慎だと思わんのか!?死ねっ!!」
「残念ながら、俺は殺されても死なないタイプなんだよね〜。マーカーも知ってるだろ?」
口元を乱暴に拭い、マーカーギラリとロッドを一瞥し。
「知らん!」
クルリと背を向けた。
「隊長が待っていらっしゃるだろう。飛行船に戻るぞ」
「ハーイハイ」
いい加減な返事をしながら、ロッドもマーカーの後に続いた。
飛行船から見下ろしたその地には。
灰色の煙が立ち昇っている。
それはまるで、死者を見送っているかのような・・・。
〜 END 〜
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短いけれど、ロドマカ。
久し振りだ〜!!!
管理人の精神状態を反映し、
いささか暗い仕上がりになっております。
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