文字書きさんに100のお題
075:ひとでなしの恋
(ロドマカ)
その男のこめかみに、銃を突き付けた。
「上からの命令でね、アンタには死んでもらうぜ?」
「この・・・悪魔!」
その言葉に、ロッドは、薄く笑った。
「悪いな。これが、仕事だから」
鈍い銃声。
男の身体が、ドサリと床に崩れ落ちた。
表情一つ変えずに。
「アンタも相当、あくどいコトして来たんだろ?因果応報、ってヤツじゃねえ?」
もう物を言うことが出来なくなったその男に向かって、ロッドはそう言い放ち、そのまま男に背を向けた。
「チッ・・・!」
このような仕事を今まで何度もこなしてきたはずなのに。
何故かイライラして、ロッドは白い壁を蹴飛ばした。
シュン。
特戦部隊専用の休憩室のドアを開けると。
珍しいことに、そこにはマーカーしかいなかった。
「あれ?隊長と、他のヤツラは?」
「それぞれ、出掛けているが。・・・無事に済んだか?」
「今回は単独の任務だったけど、楽勝!って感じだったぜぇ」
「そうか・・・」
マーカーの顔を見て、少し、ホッとする。
彼の隣に席を取り、ロッドはふう、と息をついた。
「ロッド」
静かに、マーカーがロッドの名を呼んだ。
「ん?何??」
「何かあったか?」
流石に鋭いな、と思う。
いつもなら『何でもない』とかわせたかも知れないが、今日は、いつになく弱気な気分だった。
「俺さぁ、今回のターゲットに、悪魔って言われちまったよ・・・」
「それで?」
「分かってるつもりだったけど、少し凹んだ」
そう言って、マーカーに視線を当てると。
漆黒の瞳が、強い光を放って、ロッドを真っ直ぐに見つめた。
「ターゲットは、生きている価値もない、虫けらのような男だった。違うか?」
男が手を染めていた商売に思いを馳せながら、ロッドは答えた。
「・・・違わない」
「ならば、迷うな」
言い放ったマーカーの瞳には、一点の曇りもなかった。
その強い瞳の輝きが、ロッドは好きだった。
・・・俺は、悪魔かもしれないけれど・・・。
この手で絶ってきた、数々の命を思う。
「私は、そのような事で迷うような男を愛した覚えはないぞ?お前は、自分の正義を信じろ」
「マーカー・・・」
白磁ような頬を手の平で包み込み、その額に、自分の額を合わせた。
マーカーの言葉が、スーッと心に沁み込んでいく。
「そうだよな・・・。サンキュ。元気出たぜ」
「お前は、この私が愛した男なのだからな。自分を誇りに思え」
口調はそっけなかったが。
しかしロッドの視線のすぐ先で、漆黒の瞳が一瞬、優しく揺れた。
たとえ俺が悪魔だとしても。
マーカーの前では、人になれる。
恋しく思う気持ちが、溢れてくるから。
他人から何と思われたって、構うものか。
「マーカー」
「何だ?」
「ホント、ありがとな・・・」
「今日は、子供のようだな・・・」
少し呆れたような声が耳元で聞こえて。
ロッドの髪をくしゃりと、マーカーの細い指が撫でた。
「俺・・・お前が・・・」
上手く出てこない言葉の代わりに。
そっと、口唇を重ねた。
〜 END 〜
ひとでなしの恋、CPや話の内容に悩みながらも、
ロドマカでこんな話にしてみました。
いつもより、ちょっとシリアスでしょうか??
私の中で、ロッドは強い人である、というイメージがあります。
どちらかというと、マーカーの方が精神的に弱い感じで。
でも、ロッドが弱音を吐いた時は、マーカーがロッドの力になる、
というような話が書きたくて、
ああもう、ワケの分からないトークでスミマセン。
マーカーが一方的に守られるんじゃなくて、
お互いに守りあえるロドマカが理想なのです。
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