文字書きさんに100のお題
078:鬼ごっこ
(キングン)
いつもニコニコと明るく優しく微笑んでいる従兄弟が。
今日は、ひどく不機嫌そうな表情をしている。
「グンマ」
名前を呼んで。
「何か、不愉快なことでもあったのか?」
そう尋ねれば。
「別に。なんでもないよ?」
頬に貼り付いたような笑顔を見せて、グンマは笑う。
「なんでもない、という顔をしているようには思えないが?」
重ねてそう言うと、
「僕がなんでもないって言ったら、なんでもないのっ!!」
などと科学者とはおよそ思えないような理屈をこねた。
「一体、どうしたんだ?」
「ウルサイなぁ。どうもしないよ」
プイとそっぽを向いて、シンタローの前から駆け去ろうとした。
「待て、グンマ」
呼び止めたが、
「イヤッ!キンちゃんなんか大っ嫌いなんだから、近付かないでっ!!!」
激しく拒絶されてしまう。
「グンマ・・・」
「べー!だ!!」
シンタローに向かって思い切りあかんべーをして見せてから、グンマは背を向けて走り出す。
慌てて、シンタローはその後を追った。
「グンマ、待ってくれ!」
「来ないでって言ってるでしょ!?」
パタパタとグンマは逃げる。
それを追う、シンタロー。
時折すれ違う団員達が、何事かと二人を振り返るが、気にせずにシンタローはグンマを追いかけた。
グンマは、あまり体力がない。
シンタローはやがて、彼に追いつき。
「捕まえた・・・」
後ろからギュッと、グンマを抱きしめた。
「グンマ・・・。言ってくれないと、何故怒っているのかが俺には分からないんだ・・・」
「・・・キンちゃんだって、言ってくれないクセに・・・」
日頃の従兄弟に似合わない、低い声でボソリと呟かれた言葉に、シンタローは尋ねた。
「何のことだ?」
「僕、知ってるんだからね!キンちゃん、明後日からシンちゃんと一緒に、Y国に行っちゃうんだ!!どうして僕に、自分で教えてくれないの!?」
Y国は、戦場だ。
グンマに、そこに行くことを教えていなかった理由。
それは・・・。
「お前が、心配すると思って・・・」
その瞳が、心配の色に染まる様を、見たくなかったのだ。
「何も言わないで行っちゃう方が、ずっと心配するよ!」
キレイな蒼の瞳が、涙で潤んでいる様を見ると、胸を突かれる。
「グンマ・・・」
「キンちゃんなんか、嫌い、嫌い、嫌い・・・!!」
抱きしめている腕をポカポカと叩かれて、シンタローは困ってしまった。
「すまない・・・」
「反省してるの!?だったら、もう、僕に黙ってどこかに行ったりしないって、約束しなさい!!」
「・・・約束する」
グンマがシンタローを振り仰ぐ。
寂しさの色を滲ませた瞳が、じっとシンタローを見つめた。
「気をつけて行ってきてね、キンちゃん。無理しちゃダメだよ。絶対だからね!」
「・・・ああ・・・。すぐ戻る。お前が、淋しいだろうからな」
「絶対に、絶対だよ?」
グンマの気持ちを嬉しく思いながら、シンタローはもう一度約束した。
「絶対、無事に戻ってくる・・・約束だ」
「僕、大人しく待ってるから・・・」
穏やかさが戻る、蒼い瞳。
その瞳を愛しく思いながら。
シンタローは、グンマのプラチナブロンドに、優しくキスを落とした。
〜 END 〜
キングンです。
鬼ごっこというより、追いかけっこになってしまいました・・・。
お題クリアでOKでしょうか?
OKでイイと言ってください!!って、誰に向かって言ってるんだ私!?
久々(?)キングンですvvv
一応愛情はてんこ盛りのつもりですが、
楽しんでいただけましたでしょうか??
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