文字書きさんに100のお題
081:ハイヒール
(オスリモ)
(痛ぁい・・・)
女性ならば誰もが羨むであろう、炎の守護聖とのデート中であるにも関わらず。
アンジェリークは、ひどく後悔していた。
「お嬢ちゃん。今度の日の曜日、俺と付き合わないか?」
サラリと何でもない風に。
炎の守護聖はそう言って、アンジェリークを誘った。
パチリと軽く、ウインクをしながら。
お嬢ちゃん呼ばわりに、心の中でため息をつきながら。
それでもアンジェリークは元気良く答えた。
「はい!よろしくお願いします」
フェミニストで名高い炎の守護聖は、守備範囲以外のお子様のことを『お嬢ちゃん』と呼ぶ。
以前、そう言われた。
だから。
せっかくのデート、少し大人びた格好を!!
と思って、踵の高い靴を履いてきたのがまずかった。
公園のカフェテラスでお茶を楽しんだ後、二人で飛空都市の散歩を楽しんでいる・・・ハズだった。
しかし、普段履き慣れない高い靴に、足が悲鳴を上げているのが分かる。
泣きたいのを堪え、アンジェリークは炎の守護聖と並んで歩いた。
「お嬢ちゃん」
不意に、その人がアンジェリークに呼びかけた。
「はいっ!?」
長い腕がアンジェリークに向かって伸び、ヒョイと抱き上げられた。
「おっ、オスカー様っ!?」
「足。無理しているんじゃないか?」
オスカーがアンジェリークの華奢な足首に触れた。
「いたっ!」
「・・・やっぱりな・・・」
呆れたようにも聞こえるオスカーの口調に、アンジェリークは泣きたくなった。
(嫌われちゃう・・・)
アンジェリークを抱きかかえたまま、オスカーは足早に歩く。
どこに向かうのかと思っていると、見慣れた風景が目に飛び込んできた。
・・・もうすぐ、女王候補寮だ。
オスカーの腕の中で、アンジェリークはシュンと項垂れた。
「アンジェリークさん!どうしたんですか?」
メイドのシャルロッテが心配して、駆け寄ってきてくれた。
「ああ、ちょっと足を痛めたみたいでな。キチンと部屋まで送り届けるから、安心してくれ、お嬢さん」
悪戯っぽいウインク。
シャルロッテがポーっとしている間に、オスカーはアンジェリークの部屋のドアノブに手をかけた。
そのまま部屋に入り、ベッドの上にアンジェリークを降ろす。
「オスカー様」
「俺のために、綺麗にろうとしてくれるのは嬉しいが・・・」
クスリ、とオスカーが笑う。
その魅力的な笑顔に、アンジェリークが赤くなると。
「いつもの格好の方が、お嬢ちゃんらしいな」
笑いを含んだままの声で、そう言われた。
「・・・どうせ私はお子様です・・・」
「そう拗ねるんじゃないぜ、お嬢ちゃん」
息が触れるぐらいオスカーの顔が近付いてきて、アンジェリークはドギマギした。
「まあ、そのお陰で、お姫様を抱いて歩く、という役得にありつけたのも確かだが・・・」
思わず目を閉じると、頬に暖かな感触。
「!?」
「それじゃあ、またな、アンジェリーク」
ヒラリと手を振って、オスカーはアンジェリークに背を向けた。
(今、アンジェリークって・・・??)
キスされた頬が、どうしようもなく熱く感じられる。
(もうもう!本当に好きになっちゃったらどうするのよ〜!?)
熱いままの頬を押さえながら。
アンジェリークは、パフンとベッドに顔を埋めた。
〜 END 〜
スランプ中ではありますが、自分に喝を入れるためにオスリモ書いてみたり。
無理してハイヒール履いて足が痛いリモちゃんをお姫様抱っこするオスカー様、
が書きたかっただけなので、短い話ですが、これにて。
今回のオスカー様は、ちゃんと二枚目になったかなぁ。
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