6月4日・・・。
 その年の鋼の守護聖の誕生日は、何とも都合がいいことに、日の曜日だった。

 誕生日当日、アンジェリークはゼフェルの私邸の前を一人でウロウロしていた。
 ふわふわの金の髪が、初夏の陽射しを浴びてキラキラと輝いている。
 ウロウロ、ウロウロ。
 私邸の門の辺りを行ったり来たりするアンジェリークの手の中には、ブルーのリボンがかかった小振りの箱。

「おい!」

 少し高い場所から、不意に降ってきた声。
 アンジェリークは、驚いて飛び上がる。
「キャッ、ゼフェル様!?」
「おめーさっきから、人ん家の前をウロウロして、何なんだ!?」
 2階の窓から、ゼフェルがヒョイと姿を現した。

 見られてた・・・!!

 カーッと、アンジェリークの頬が赤くなる。
 その様子を見て、ゼフェルが表情を和らげた。
「ちょっと待ってろ」
「え?」
「待ってろって言ってんだよ!」
 そして、窓からその姿が消えた。

 ドタバタと音がして。
 しばらくしてから、ゼフェルが本当に姿を現した。
 執務をしている時とは違う服装が素敵で、余計にドキドキしてしまう。
 アンジェリークの前に現れたゼフェルは、腰に手を当てながら、アンジェリークを見下ろすようにして尋ねた。
「で?」
「はい?」
「ココでウロついてた理由。教えろよ」
 はわわわわ〜、と、アンジェリークは動揺する。
 動揺しながらも、自分に強く言い聞かせた。

 勇気を出すのよ、私!!

 今日は、自分の大好きな人の、特別な日。
 だから。
「あのっ!」
「だから、なんだっての?」
「お、お誕生日おめでとうございますっ!!!!」
 俯いてそう言いながら、プレゼントを差し出した。
「・・・・・・・・・」
 しばしの沈黙。

 ああ〜ん。ゼフェル様のお顔を見るのが怖いよ〜(涙)。

 ドキドキしながら。
 プレゼントを差し出したままの状態で、アンジェリークは緊張のあまり固まっていた。

 小さく、クスリと笑う声。
「顔、上げろよ」
「はい?」
 恐る恐る見上げると。
 嬉しそうな笑顔が目の中に飛び込んできて、ホッとした。
 そして。
「サンキューな」
 その言葉に、ぱぁぁぁ、と、アンジェリークは顔を輝かせた。

 が。

「プレゼントは、おめーか?」
 ニヤリと笑いながらゼフェルの顔が近づいてくることに気付き、アンジェリークは軽くパニックを起こしかけた。
「ちっ、違いますっ!ちゃんと準備して・・・!!」
 聞く耳持たず、といった風に。
 ちゅうと本当に軽くキスをされて、言葉を遮られた。
「ごちそうさん」
「ゼゼゼゼゼ・・・ゼフェル様〜!?」
 真っ赤になって焦るアンジェリークを見て、ゼフェルは悪戯っぽく笑った。
「イイもんもらっちまったな〜」
「ゼフェル様〜」
 どういうリアクションを取ればいいか分からずに、情けない声で名前を呼んでしまった。
「おめー、オレが好きなんだよな?安心しろ、オレも好きだ」

 はい?今、何だかとっても嬉しい言葉が聞こえたような気が・・・??

 まじまじと目の前のゼフェルを見つめると、ほんの少しだけ赤くなって、頭に手をやった。
 どうやら、照れているらしい。

 互いに赤くなりながら、顔を見合わせて。
 ほとんど同時に吹き出した。

 クスクス、クスクス。

 青い空に、楽しげな笑い声が吸い込まれていく。
「ゼフェル様、大好きですvvv」
 笑いながらそう言うと。
「お、おう!」
 思いっきり照れながら笑う、その表情が。

 大好きなんですよね〜vvv

 思いながら。
 アンジェリークは軽く背伸びをして、ちゅ、とゼフェルの頬にキスをした。

 紅い瞳を優しく細めて。
 ゼフェルはやっぱり、嬉しそうに笑った。


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かろちん様の、素敵なゼフェリモイラストからイメージさせていただいたSS。
ちょっと初々しすぎましたでしょうか(笑)。
でもゼフェリモって、その初々しさがいいと思うのですよ〜vvv
素敵なイラストを拝見して、創作意欲が沸くことは、とっても嬉しい事です。
かろちん様、SS付けるご許可をいただきまして、
本当にありがとうございました!!






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