沈みかけの夕陽が赤く、古びた校舎を照らしている。
 人っ子一人いない放課後の校庭を、パタパタ、パタパタと少女が駆けていた。
 少女は校庭の端っこにある、校舎と同様に古びた講堂に飛び込んだ。
「ゼフェル!」
 講堂には、大きな古時計。
 現在この学校に通っている生徒達が生まれる遥か昔から、講堂に出入りする生徒達を見守っている時計だ。
 ゼフェルと呼ばれた少年は、講堂の壁にもたれて一人ぽつんと、その時計を眺めていた。
「またここにいたのね。もう帰りましょう」
「ん〜。もう少し」
 少女が開けた講堂のドアから、赤い陽射しが差し込んでくる。
 ゼフェルの銀の髪がオレンジ色に染まって。
 並んで壁にもたれる少女の金の髪も、お揃いの色に染まった。
 チクタク、チクタク。
 時計が静かに時を刻む音だけが、講堂に響いた。
 遠慮がちに、少女が口を開く。
「ゼフェルは、あの時計を見るのが好きよね。どうして?」
「あの音聞いてると、何か落ち着くんだよな」
 言いながら、ゼフェルは時計に歩み寄って、時計の裏にあるねじを巻いた。
「いつまでも聞いてたいよな、この音をよ」
「・・・そうね」
 ゼフェルは毎日毎日、時計のねじを巻いている。
 時計が、決して止まらないように。
 教師達もそれを知っているが、誰も何も言わない。
 学校中の全ての者が、黙って時を刻み続ける、この古びた時計を愛していた。
「う〜っし!んじゃ、帰るか!!」
 少女が抱えていた二人分のカバンを、ゼフェルは乱暴に取り上げた。
「ちょっと、ゼフェル!自分の分ぐらい、自分で持てるわ!!」
「うっせ。黙ってろ」
 足早に講堂を出るゼフェルを少女がパタパタと追いかける。
「んもう!もう少しゆっくり歩いてよ〜」
「仕方ねえなぁ」

 赤く染まるグラウンドに、長い二つの影。

「ゼフェル。英語の宿題、ちゃんとやっておくのよ」
「オレは英語は苦手なんだ!おめーやっとけ。んで、オレに見せろ」
「じゃあ、ゼフェルは数学の宿題見せてくれる??」
「・・・おう」
「はいv交換条件成立〜vvv」

 一緒に並んで、ゆっくりと動いていった。



  〜 END 〜




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岬さまとメールのやり取りをしている際に、高校生ゼー様に対する、
『ちょっと人里離れた古ぼけた高校にいて、
隅っこの講堂にある大きな古時計を見ているのが好きな男の子。
なんかこっそりねじ巻いてそうで』
というお言葉がありまして。
そんなゼー様を書いてみたいっ!!!
と、書いてみましたが、力不足の感がありあり(汗)。
でも書いてて楽しかったです〜vvv
岬さまの素敵な高校生ゼー様に捧げさせていただきますv







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