「アンジェリーク」 ドアの外から静かに呼ばわる声が聞こえて、アンジェリークはワタワタと慌てた。 「あと少しだけお待ちください」 仕度を手伝ってくれているシャルロッテが、慌てているアンジェリークに変わって答えてくれた。 「さ、アンジェリークさん。お仕度が整いましたよ。とっても可愛いですv」 ふわんと、シャルロッテの手のひらが、優しくアンジェリークの髪に触れた。 「行ってらっしゃい。楽しんできてくださいね」 そして、シャルロッテはアンジェリークの部屋のドアを開けた。 「お待たせしました、ジュリアス様」 おずおずとジュリアスの前に立ったアンジェリークだったが、ジュリアスが絶句している姿に更に萎縮してしまいそうになる。 「あの・・・。どこか変ですか??」 「とんでもないことだ!」 我に返ったようにジュリアスが叫んで、ブンブンと首を振った。 「そのドレス、そなたにとても良く似合っている」 青い目が、優しい色を湛えて細くなった。 「それでは、出かけるぞ」 ごくごく自然な仕草で、ジュリアスの手が伸ばされて。 アンジェリークがためらいがちにその手に触れると、ぎゅ、と握り締められた。 「それでは、行ってくる」 「いってらっしゃいませvvv」 シャルロッテに見送られながら、アンジェリークはジュリアスの迎えの馬車に乗り込んだ。 今日は新年。飛空都市で開かれるニューイヤーパーティに、女王候補達も招待されたのだ。 ニューイヤーパーティの告知をした際、ジュリアスはゴホンと咳払いをしてからアンジェリークに言った。 「そなたは不慣れであろうから、全て私が世話をしよう」 「ありがとうございます!」 そんなこんなで、本日アンジェリークが身に纏っているドレスも、ジュリアスセレクトのものである。 ドレスとお揃いの色のリボンもジュリアスが届けてくれたので、「いつもより大人っぽい感じで仕上げましょうかv」と、キラキラと嬉しそうに目を輝かせながら、シャルロッテはアンジェリークの髪をアップにしてくれた。 アンジェリークは緊張した面持ちで、ジュリアスの隣に座っていた。 一応、ジュリアスからのお褒めの言葉はいただいたが、なんとなく落ち着かない。 もじもじとしているうちに、馬車はパーティ会場まで辿り着いた。 ジュリアスにエスコートされ、アンジェリークはパーティ会場に足を踏み入れて。 その華やかさに、卒倒しそうになった。 ・・・無理だわ!私には無理っ!! 「アンジェリーク?」 「はっ、はいっ!?」 「ぼんやりとしている場合ではないぞ。さあ」 ジュリアスに促され、パーティの主催であるディアに、挨拶に向かった。 「ようこそ、アンジェリーク。今日は楽しんでくださいね」 「はい、ディア様」 会場には、楽しげなダンスの曲が流れている。 「アンジェリーク、ダンスは?」 ジュリアスに尋ねられ、アンジェリークは口ごもった。 「私、ダンスはあまり・・・」 「そうか」 スーッと、流れるような足取りでアンジェリークを先導しながら。 どこに行くのだろうと思っていたら、バルコニーに連れて行かれて。 「苦手でも構わぬ。私と一緒に、一曲踊って欲しいのだが・・・?」 「でも・・・」 「そなたは、私に合わせて足を動かすだけで良い」 ジュリアスがアンジェリークの腕を取り、ゆったりとした曲調に合わせて動き始めた。 慌てて、アンジェリークもジュリアスの動きに合わせて足を動かした。 しかし・・・。 「きゃっ!?」 ジュリアスの足を踏んでしまい、アンジェリークはサーッと青褪めた。 どどどどど、どうしよう・・・!? ジュリアスの動きが止まって。 「アンジェリーク」 頭上から、静かな声が降ってきた。 きゃー!!怒られちゃう!? 「こちらを向きなさい」 言われて、恐る恐るジュリアスを見上げた。 すぐ間近に端正な顔があり、アンジェリークはどきりとした。 わ・・・。ジュリアス様、すごく睫毛が長くていらっしゃるのね・・・。 怒るでもなく、ジュリアスは黙ってアンジェリークを見下ろしていた。 長い睫毛がキラキラと光っていて、とってもキレイ・・・v ぼーっとしながら、ジュリアスを見つめていると。 アンジェリークの身体から離れたジュリアスの手が、優しく髪に触れてきた。 「??ジュリアス様・・・??」 きょとんとしながら名前を呼ぶと、長い指がアンジェリークの前髪をかき上げて。 ジュリアスの顔が、迫ってくる。 え?え?ええ?えええ〜??? パニック状態に陥っているアンジェリークの額に、チュ、と、柔らかく触れたのは・・・。 ジュリアス様がっ!ジュリアス様が・・・!!! 頭から蒸気が噴出しそうな気がした。 今の自分はさぞかし真っ赤になっているのだろうと思いながら、ジュリアスに視線を向けると。 同じように、顔が赤い。 やだ!ジュリアス様も同じゃない・・・! そう思って、アンジェリークはクスリと笑った。 「なっ、何がおかしいのだ!?」 「なんでもありません」 ジュリアスが、くるりとアンジェリークに背を向けた。 「何か、飲み物でも取ってきてやろう」 「・・・冷たいものが良いです」 「分かった」 スタスタと会場内に向かっていくその顔は・・・。 やっぱり、赤い顔のままなかしら。 思いながら、アンジェリークは空を見上げた。 いつの間にやら、すっかり夜の帳が下りている。 クスクスというアンジェリークの笑い声は、星空の中に吸い込まれていった。 〜 END 〜 |
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イラストを頂戴した時のメールに、
「ニューイヤーパーティの時に、新年のキスをリモちゃんのどこにしようかな〜
と考えているジュリ様とジュリアス様のまつげに見とれているリモちゃん」
という下りがございまして。
書きたいですっ!!
と申し上げたら、KITA様が快く了解してくださいました。
嬉しい・・・!!!
私の文章力では微妙な形になってしまいましたが、このSSを持ちまして、
KIATさまの素敵イラストに対する私の感想文とさせていただきますv
大好きなジュリリモが拝見できて、しかもSSまで書かせていただけて、
私はとても幸せ者ですvvv
KITAさま、本当にありがとうございました!!
このSSは、KITAさまに捧げさせていただきます!!
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