今すぐKiss Me
日の曜日の公園で、あの方の姿を見かけた。
「ランディ様!」
名前を呼んで駆け寄ると、ランディ様は私に視線を向け、爽やかに笑った。
「やあ、アンジェリーク!一人で散歩かい?」
その笑顔に、私はドキドキしてしまう。
私は知っている。
日の曜日になると、ランディ様がよく、この公園に現れること。
飛空都市に住んでいる子供たちと一緒に、遊んでいること。
そんな時のランディ様は、笑顔がとっても優しくて。
私は、その笑顔がとっても好きなの。
ランディ様の優しい笑顔に会いたくて、私は今日、公園を散歩した。
だから私は、ズバリと返事をする。
「今日公園に来たのは、ランディ様にお会いしたかったからです」
ランディ様は、赤くなって私を見つめた。
「アンジェリーク。俺のコト、からかってる?」
私、そんなに小悪魔に見えますか?
あ、でも、ちょっと子悪魔かも(笑)。
ランディ様を見ていると、あまりにも純情すぎて、ちょっとからかってみたくなったりするもの。
「ランディ様、私のこと、そんな風に思ってるんですか?」
ポロリと涙を零しそうな表情を作ると、ランディ様は慌てて私に謝罪した。
「ごめん、アンジェリーク!俺、そんなつもりじゃ・・・」
しおらしげな顔も、可愛くて大好きだけど。
やっぱり、そんな顔をしちゃダメ。ランディ様。
あなたのことが大好きだから。
いつも爽やかに笑っていて欲しいの。
私は、ニコリとランディ様に微笑みかけた。
「じゃあこれから、一緒にデートしてくださいます?そしたら、許してあげます」
二人で一緒に行く、森の湖。
この湖の別名を、ランディ様、知っているかしら?
別名、恋人たちの湖。
ランディ様と一緒に来ると、いつでもドキドキしてしまう。
私たち、恋人同士みたいに見えているのかしら?
「ここは、本当に景色のいい場所だよな。君と一緒に来れて、嬉しいよ」
本当にランディ様がそう思ってくれているのなら・・・私は、最高に嬉しいんだけど。
ご挨拶で言っているなら、許さないから。
私は、またまたズバリとランディ様に聞いてしまった。
「ランディ様、私のこと、好きですか?」
ランディ様はやっぱり、赤くなる。
この純情なところも大好きなんだけど、ちょっと苛めたくなってしまう。
「好きですか?」
更に問い詰めると。
「・・・好きだよ・・・」
小さい声で、ランディ様が答えた。
私は、もっと突っ込んで聞いてみる。
「それは、友達として?妹みたいに?それとも、恋愛対象として??」
「うーんと・・・」
「答えてくださいっ」
「・・・恋愛対象として・・・って言ったら・・・怒る?」
おずおずと発せられたランディ様の言葉に、私は思わず、満足げに頷いてしまった。
「怒りません。嬉しいです!」
顔が、ニコニコしてしまう。
胸が、ドキドキしてしまう。
ランディ様はやっぱり赤くなったまま、私に質問を返した。
「君は・・・?俺のこと、どう思ってるのかな〜、なんて」
「ナイショです♪」
意地悪して、そう返事をすると、ランディ様はちょっぴり情けない表情になった。
「アンジェリーク・・・!」
本当は、ランディ様が、大好き。
いつでも私だけを見つめて、いつでも私だけを好きでいて欲しい。
悪戯っぽく笑って、私はランディ様を見つめる。
そして、やっぱり意地悪に、こう言った。
「ランディ様。私が好きなら、今すぐキスしてください」
「ええ〜っ!?キッ、キスっ!?!?」
「そうです!」
ランディ様の驚愕顔を他所に、私は軽く瞳を閉じる。
躊躇いがちに、ランディ様の腕が私の肩を引き寄せて・・・。
ほんの一瞬、私の唇に、ランディ様の唇の感触が、重なった。
瞳を開くと、ランディ様の顔は可哀相なぐらいに赤くなっていた。
「ごめんっ!!」
何故か謝ってくるランディ様は、本当に可愛い。
「私から言ったんですから、謝らなくてもいいですよ、ランディ様?」
軽く答えて、私はランディ様にクルリと背中を向けた。
「それじゃ、今日はこれで!」
「アンジェリーク!」
背中をランディ様の声が追いかけてくるけれど。
私は振り向きもせず、スタスタと歩いた。
本当は、ランディ様のこと、大好きなんだけど。
本当の気持ちは、まだまだ教えてあげないの。
そして、日の曜日になると。
私はまた、ランディ様に会いに行く。
ランディ様は、やっぱり爽やかに笑いかけてくれて。
私のワガママに、優しく付き合ってくれる。
意地悪をしても、笑って許して。
それは、あなたが大好きだから。
優しいあなたを、つい、苛めたくなるの。
でも、いつか絶対に言うから。
あなたが大好きって、絶対に言うから。
その時は、優しく笑って、私にキスしてね。
すぐに、キスをしてね。
〜 END 〜
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