イチゴ




 今日は日の曜日。
「イチゴタルトを焼きますから、食べにきてくださいねvvv」
 そう誘われて、遠慮なく私邸にお邪魔した。
 君はキッチンで、作業をする。
 バターを溶かしたり、クッキーを叩いたり。
 イチゴを切ったり、裏ごししたり。
 砂糖を計ったり、生クリームを泡立てたり。
 俺はそんな君の様子を、ボーっとしながら眺めている。
 お菓子を作っている君は、とても幸せそうだ。
 とても穏やかな表情をしていて。
 うん。見ている俺も、幸せになれるよ。



 美味しそうな甘い香りが辺りを漂う。
 真っ赤なイチゴがたくさん乗った美味しそうなタルトが、目の前に姿を現した。
「はい、完成でーすv」
 イチゴって、果実の方が有名だけど。
 花もとっても可愛いんだよ。
 ・・・まるで、君みたいにね。
 一度、イチゴの花を見たことがあるんだ。
 確かマルセルの庭でだったと思うけど・・・。
 淡いピンクの丸い花びらを持つ、小さな小さな可愛らしい花だった。
 ふわりと吹いた風に、その花びらが優しく揺れた時。
 俺は花の姿に、君の笑顔を重ねたんだ。
 今、俺の前にある、可憐で優しい笑顔を。



「どうしました、ランディ様?ジロジロと人のことを見て??」
 イチゴの葉っぱのような深い緑色の瞳が、不審そうに俺を見つめる。
「えっ!?あっ、すっごく美味しそうなタルトだと思って・・・」
 しどろもどろに言い訳をすると、アンジェリークは得意げに微笑んだ。
「そうなんです!今日はクリームはカスタードクリームじゃなくて、イチゴのチーズクリームにしてみたんですよ〜」
「へえ。タルトって言うと、カスタードクリームの上に果物が乗ってる印象だけどな・・・」
「ふふふvいつもとちょっと違う味を楽しんでくださいね〜」
 アンジェリークはやっぱり優しく微笑みながら、タルトを切り分け始めた。
「後で、皆様にもお届けに行きましょうねv」
 言いながら君は、今度はお茶を淹れ始める。
 真っ白なティーカップに、コポコポと上品な色の紅茶が注がれた。
「はい、どうぞ召し上がれ」
 君が淹れてくれた紅茶、君の手作りのタルト。
 こうしているとまるで・・・。



 イチゴの花言葉。
 君に似てるって思ったら気になって、ルヴァ様の書斎で本を借りて調べてみた。
 知ってるかい、イチゴの花言葉。
『幸福な家庭』とか、『あなたは私を喜ばせる』とか、『無邪気』とか。
 イチゴは、そんな花言葉を持っているんだよ。
 少し大人びてきた部分もあるけれど、綺麗な無邪気さを失わない君。
 君の笑顔はいつだって、俺を幸せにしてくれる。
 俺の心を喜ばせてくれる。
「ランディ様、美味しいですか??」
 可愛らしい上目遣いで、君が問いかけてくる。
「ああ。とってもうまいよ!」
 答えると、君の笑顔が輝いた。
「よかった、そう言っていただけて!!」

 その君の笑顔が好きだから。
 俺も君のコト、いつでも喜ばせてあげたいと思う。
 誰よりも大切な、ただ一人の女性。
 いつでも、どんな時も、幸せであって欲しい人。



 いつか、君に言えるといいと思う。
 いや、絶対に、近いうちに言うよ。
 俺と一緒に、『幸福な家庭』を築こう。
 花言葉と一緒に、可憐なイチゴの花と真っ赤に熟したイチゴの実を君に差し出して。
 君のイチゴタルトなら、毎日でも食べたい。
 だから、俺は言うよ。
 
「君を、愛してる。だから、ずっと一緒にいよう」

 俺は、言うよ。



 君と一緒なら、絶対に築くことができる。
 『幸せな家庭』
 庭にはイチゴの苗を植えよう。
 花が咲いて実がなったら。
 君はやっぱり優しく微笑みながらイチゴタルトをウキウキと作ってくれるだろう。
 俺と、俺達の子供のために。
 なんて、まだちょっと気が早いけど。



 絶対に言うから。
 もう少し心の準備ができてから。
 だから、待っててくれよな。
 俺の・・・俺の大切な、アンジェリーク。
〜 END 〜



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花シリーズの第ニ作目はランリモです。
予告どおり、お題は「イチゴ」でございます。
スズランとかでも可愛かったかも知れませんが・・・。
ラブラブエンディング後の、補佐官リモちゃんとランディ様、
というイメージでお願いします(ペコリ)。
リモちゃんと結婚まで考えちゃってるランちゃん(笑)。
ウチのランディ様にしてはちょっと積極的!?
まだ、肝心な事を言えてないですけど(爆)。
次のアンジェ花言葉シリーズは、ルヴァリモでジャスミンとか、
ジュリリモでカラーとかやってみたいですね〜。



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