終わらない High Noon




「あなたさえ良かったら。一緒に、海を見に行きませんか?」
 エメラルドの瞳をまん丸にして、あなたは私を見つめた。
「海?急に、どうしたんですか??」
「あなたと一緒に、何処かに出掛けたくなりましてね。陛下の許可はいただいてあります。一緒に、出掛けませんか?」
 急に、海が見たくなって。
 それはこのところ急にまぶしくなってきた、太陽の日差しの所為かも知れなかったけれど。
 アンジェリーク。
 他の誰とでもなく、あなたと、行きたい。
 アンジェリークは、私に向かってニコリと笑いかけると。
 朗らかに返事をしてくれた。
「とっても楽しそうですね。ルヴァ様さえよろしければ、是非、ご一緒させてください」



 そこは、女王陛下のプライベートビーチ。
 他に誰もいない、二人だけの空間。
 世界中が眠っていて、私たち二人だけが目覚めているような。
 そんな、不思議な感覚。
 波のように、私の心に安らぎが打ち寄せてきて。
 なんだか、ホッとしてしまう。
「私は子供の頃、海に憧れていましてね。自分が、砂漠の惑星に住んでいたからでしょうけど、海ってどんなものなんだろう、と、ずっと思っていたんですよ。本で得た知識で、ある程度の想像はしていたんですけどね。実際に見たときは、驚きました。こんなに雄大なものだとは思っていなかったので、ね。海を見ていると、自分がちっぽけに感じて。小さなことでクヨクヨするのが馬鹿らしいような気分になりませんか?」
 海辺に座って、二人で潮騒を聞きながら。
 あなたが側にいてくれる事が嬉しくて、私は訳の分からないことばかりを、話す。
 頬に穏やかな笑みを浮かべ、アナタは黙って私の話を聞いてくれる。
 澄み切ったエメラルドの瞳が、太陽の日差しを映して。
 その眩しい輝きは、夏の色。
 ふと。
 あなたは立ち上がり、波打ち際に歩を進め。
 何かを探し始めた。
 白い手が砂浜に伸びて。
 あなたは何か、を砂の中から拾い上げる。
 無心に、幾つも。
「ルヴァ様!」
 その手の平に乗っているのは、桜の花びらのような・・・貝殻だった。
 まるで、あなたのように、可憐でたおやかな色をした・・・。
「さくら貝ですよ!見つけちゃった♪とっても綺麗ですよね〜」
 あなたは大事そうに、その貝をハンカチで包み込む。
「ロザリアにも見せてあげなくちゃ」
 あなたのその微笑みは、私の宝物。
 じっと見つめると、あなたは恥ずかしそうに視線を伏せた。
「あんまりジロジロ見ないでください。何だか、恥ずかしいじゃないですか?」
 はにかむあなたを、とても可愛らしいと思う。
 幸せな、時間。



 そのまま二人で、じっと海を見ていた。
 お互いに、黙ったままで。
「ルヴァ様・・・ちょっと、眠たくなっちゃったの・・・」
 あなたの頬が、私の肩に触れる。
 柔らかい金の髪が風に流れて・・・私の頬を、優しくくすぐった。
 ドキドキする心を、あなたに気付かれないように、気付かれないように。
 私は静かに。けれども、大きく深呼吸した。
 あなたと『恋人』同士になってから、大分経つというのに。
 今でも、あなたの何気ない仕草一つで、初めて恋をした少年のような気持ちになる。
 ドキドキと胸が高鳴るこの感覚は、書物の山に囲まれて生活してきた私には、今まで無縁のもので。
 ぎこちなくあなたの肩を抱き寄せると。
 あなたは優しく笑って、そっと。
 瞳を閉じた。



 優しい風がそよぐ、二人だけの、静かな昼下がり。
 このままずっと、あなたとこうしていられたら・・・。
 あなたは私に、色々な想いを教えてくれる。
 優しさ、ときめき、そして・・・幸福。
 私の肩にもたれ、小さく寝息を立てているあなた。
 世界中で、一番愛しい人。
 この一瞬一瞬が、私にとっては永遠で。
 私は、そっと目を閉じる。
 あなたの気配を、すぐ側に感じながら。

 二人の『今』が、これからも永遠に続くように願いながら・・・。 




〜 END 〜




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少々短めのお話になりましたが、ルヴァ様お誕生日おめでとう創作です。
本当は、ゼー様バースデーとお揃いで、リモちゃんサイドの恋し始めのお話、
と考えていたのですが、「永遠のヴァカンス」を聞いて、
「絶対、この歌のイメージでやりたいっ!!!」と思い、急遽予定を変更しました。
皆様がお持ちの歌のイメージを崩さなければいいのですが・・・。
という訳で、ルヴァ様お誕生日おめでとうございます!
これからも、聖地一の良識あるお人として、ジュリ様クラ様、ゼー様等々を
優しく暖かくサポートしてあげてください(笑)。




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