Dance With Me




 日々必死になって大陸の育成に励んでいる女王候補を労うのだ、と、突然に光の守護聖が言い出して。
 飛空都市で、舞踏会が開かれる事になった。
 はーん、とか、ふ〜んとか、思いっきり他人事のように考えていたゼフェルであったが、
「僕、アンジェリークを誘っちゃおうvvv」
 などとマルセルがほざいているのを耳にして、思わず、飲んでいたミネラルウォーターを噴き出しそうになった。
「ああ!?んだとぉ!?」
「イイじゃない。僕がアンジェを誘ったって。きっと喜ぶと思うよ〜」
 いとも能天気に、マルセルは言ってのける。
 先を越されてはなるまいと、ゼフェルはその日の午後グッドタイミングで執務室に現れたアンジェリークに、一方的に宣言した。
「おい!今度の舞踏会、オレが誘いに行くからな!他のヤツに誘われるなよ!!分かったか!?」
 思いっきり高圧的な態度でそう言ったのに、アンジェリークはパッと表情を綻ばせて返事をした。
「はい!喜んで!!」

 それからすぐに、マルセルがアンジェリークに断られたとしょんぼりしている姿を発見し、心の中で『すまねえな・・・』などと謝ってみるゼフェルだった。



 そして、舞踏会の日がやって来た。
 女王候補寮の前で、ゼフェルはアンジェリークを待っている。
 なかなか出てこないアンジェリークに、ゼフェルは少しばかりイライラしていた。
「んっとによぉ。女ってぇのは、やたら出かける準備に時間がかかりやがる。待たされてる方の身にもなってみろってぇの!!」
 ブツブツとゼフェルが愚痴っていると。
「お待たせしました、ゼフェル様!!」
 いつもはパタパタの足音をカツカツさせて。
 アンジェリークがバタンと寮の扉を開けた。
「遅いっての!」
 些か険を含んだ眼差しでアンジェリークを振り向いて。
 ゼフェルはそんな自分を殴りつけたくなった。
 愛らしいピンクのドレスに身を包んだアンジェリークは愛らしいの一言だったが。
 ゼフェルの目の前で、アンジェリークはひどく、不安そうな表情をしていた。
「んだよ、その顔は・・・!」
 アンジェリークが、ビクッと肩を震わせた。
 怖がらせてしまったと思い、ゼフェルは出来うる限り口調を柔らかくした。
「ああ〜、何て言ったらイイんだ?おめーは、笑ってる方がイイだろが。別に、怒ってるワケじゃねえ。怒鳴ったオレが悪かった。機嫌直せ。な?」
 けれども、アンジェリークは尚も、不安そうな顔をしている。
 よくよく観察してみると、カタカタと小さく、震えていた。
「おめー、震えてんのか?」
 尋ねてから、ゼフェルはハタと思い至った。
 アンジェリークは、ごくごく普通の家庭で育っているのだ。
 舞踏会などに、物慣れてはいまい。
「おめー、舞踏会は初めてか?」
 コクコクと、アンジェリークが頷いた。
「そっか・・・」
 ゼフェルは、ニッと笑った。
「大丈夫だ。オレが付いてっから。しっかりエスコートしてやるって」
 フイ、とそっぽを向きながら、アンジェリークに向かって手を差し伸べた。
「ほら、オレの手ぇ取れ。しっかし、エスコートすんのも久しぶりだな」
 しっとりとした指先が、ゼフェルの手の平に触れて。
 キュッと、手を握り締められた。
 その手を引いて、ゼフェルは舞踏会の会場へと向かった。



 アンジェリークの手を引いて、ゼフェルが会場入りすると。
 思いっきり冷たいマルセルの眼差しが突き刺さってきたが、ゼフェルは気にしないようにした。
 男も女もダンスを楽しんでおり、色取り取りのドレスが揺れている。
 アンジェリークはゼフェルの目を握ったまま、物珍しそうに辺りを見回していて、その様子が実に可愛らしいので、ゼフェルは思わずニヤニヤと笑ってしまった。
「何が可笑しいんですか、ゼフェル様?」
 プウと頬を膨らませながら、アンジェリークが問う。
「や、別におかしくなんてねえぜ。それより、オレ達も踊るか?」
 恥ずかしそうに、アンジェリークが頬を赤らめた。
「踊り方が、分かりません」
「そんなん、オレも分かんねえから安心しろ。曲に合わせて身体動かしてればイイだろ」
「ゼフェル様って・・・」
 くすっと、アンジェリークが小さく笑いを零した。
「ああ?」
「何でもありません。さ、踊りましょ」
 軽快なダンスの曲に合わせて、二人で踊る。
 アンジェリークはすぐに慣れて、周りの女性陣の見よう見まねで、ゼフェルの腕の中でクルクルと軽いステップを踏んだ。
「上手いじゃねえか」
「ゼフェル様の教え方がお上手だから、ですね」
 何にも教えてねえのになぁ、と、ゼフェルは思ったが。
 すっかり緊張も解けて、楽しそうに踊っているアンジェリークを見るのは嬉しい。
「楽しいか?」
「はいv」
「後で、おめーの好きな甘いモンも食おうな」
「はいっ!」
 ニコニコと嬉しそうに笑うアンジェリークの姿に。
 このままギュッと抱きしめて、ずっと踊っていないなどと思ってしまうゼフェルであった。



   〜 END 〜



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アンジェ舞踏会に行った記念に〜vvv
ゼフェル様の台詞が素敵だったので、それをゼフェリモ捏造です。
えへへ〜vvv
ジュリ様が台詞を言ってくださったら、きっとジュリリモモードになっていたに違いないよ(笑)。
声優さんの台詞の力って、偉大ですね〜。





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