『一つになる瞬間』





目の前に座っているもう一人の自分―――。

人工的に作られた己の分身と、こうして二人っきりでいると、まるで鏡を見ているかのような錯覚に陥る。

例えるなら、心の奥底に眠るもう一人の欲望に忠実な醜い自分……。

この薄暗い部屋に捕らえられ、誰にも見せる事のない欲望に溺れた自分をさんざん曝け出し、

当初、逃げ出そうとしていた事も忘れ、またもう一人の自分に酔わされる。






ギシ…、とベッドが軋み、同じ姿の男が重なり合っていた。

漆黒の肌の男が下になり、上から色の白い男が重なる………。

貪りあうようなキスを交わすと、下にいた男が笑いながら上に乗っかっている男に命じた。

「アルベルト……、何をすれば良いかわかってるだろう?」

色の白い“アルベルト”と呼ばれた男は、羞恥で顔を朱に染める。

だが、これから何をされるかをわかってる男は、羞恥に顔を染めながらも、ノロノロを男の足の間にもぐりこんだ。




自分とまったく同じに作られたアンドロイド―――。

そのアンドロイドのスラックスのジッパーを下げると、アルベルトは躊躇しつつも欲望を取り出し口に咥えた。

何度も何度も自分を辱め、陵辱したその欲望を己の口内で刺激していると思うと、

アルベルトは興奮し、下半身に血液が集中するのがわかる。

「フッ、だいぶ素直になったな…。そのまましゃぶって舌で転がすんだ。歯は立てるなよ…。」

満足そうにアンドロイドがアルベルトの頭を優しく撫でた。

「ハァ……、んっ…。」

口内に入れたアンドロイドの欲望をいったん離すと、アルベルトは丁寧に舐め回す。

何度も自分がされた事のある行為を思い出しながら、裏筋を舐めあげて先端の窪みに舌先を入れる。

右手で優しく欲望を持ち、左手で袋を揉みはじめると、アンドロイドの先端から涎が流れはじめた。

「いいぞ、アルベルト……。」

顔を高揚させ、欲望を咥え込むアルベルトの姿はもの凄く卑猥に見えた。

ハァハァと息も絶え絶えにしゃぶりながら、己が同じ事をされている錯覚に陥っている為、知らずに腰が揺れた。

「何だ?しゃぶっているだけでこんなにしているのか……。」

「アァ…、や、やめ……!」

アンドロイドは笑いながらアルベルトの股間に右足を押し付け、足の裏全体で何度が擦ると、

いきなり与えられた快感に、アルベルトは咥えていた欲望を離して喘いだ。

「ほら、休んでないで続けろ…。」

足の裏で己の欲望を刺激されながらも、アルベルトは丁寧にアンドロイドの欲望を愛撫した。

股間に与えられている僅かな刺激がもの足りなくて、

アンドロイドの足に知らず知らずにアルベルトは股間を擦り付けはじめた。



「ア…、ハァ……、はっ…。」

イヤラシイ水音と己の発する声が、さらにアルベルトを刺激する。

アンドロイドは、おもむろに咥えていたアルベルトの頭を押さえ、欲望から離した。

そのまま優しく顔に手を添えると、口元から流れる先走りを親指でなぞり行為を中断させる。

「イかせて欲しいか?」

真紅の瞳に見つめられ、己の心の内を悟られたような気がしたアルベルトは、朱に染めた顔でゆっくり頷いた。

アンドロイドはその姿に満足そうに微笑むと、ゆっくりと起き上がりアルベルトを押し倒した。

「私の可愛いアルベルト…。お前が望むようにしてやろう……。」

アルベルトが身に付けているシャツを捲り上げて胸の尖りを指先で転がしながら、首筋に口付けをした。





シャツ以外を総て脱がされたアルベルトは、与えられる快楽に素直に応えた。

アンドロイドの頭を抱えて、下半身を襲おう刺激に忠実に喘ぐ…。

「はっ……、あ…。」

先端を指の腹で扱かれると先走りが溢れ出し、アンドロイドの右手を汚した。

「―――ッ!!」

白濁の液を吐き出すと、満足そうにアンドロイドは笑った。

己が吐き出した液体を目の前で見せ付けるようにアンドロイドが嘗め回すと、恥かしくて思わず顔を背ける。

「どうした?自分が出したモノだろう?今更何を恥かしがる事がある…。」




「あ……、俺、は…。」





―――この男から逃げられないのはわかっている。

逃げられないながらも、欲望を吐き出し我に返ると、今の置かれている状況を冷静に判断する自分がいる。

自分を心配する大事な仲間も、居場所も、最愛の彼女の存在も忘れて快楽に溺れてしまう……。

この男に捕らえられてから、どのくらい経ったのか………。

仲間の元に帰らなければと思う自分と、このまま快楽に溺れ目の前のアンドロイドと一つになりたいと思う自分。



まるで合わせ鏡―――。

鏡の前で己の欲望をさらしながら、大事なモノは何だったのかと考える事も諦めて、

異常なまでに自分を欲しがるアンドロイドに、心も体も、総てを忘れて飲み込まれてしまうのだ―――。



〜END〜




No.002の高橋一成さまから頂戴しました。
これぞ黒44!!
という感じの、とても雰囲気のあるお話でございます〜vvv
鬼畜な黒様の責めに、色気たっぷりに悶えるハインさんがたまりません。
高橋さま、本当にありがとうございましたvvv
またどうぞよろしくお願いいたします〜!!!


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