チリンチリンと涼しげな音を立てながら、風鈴が揺れる・・・。



 淡いブルーのガラス仕様のそれは、ハインリヒが買ってきた物で。
 暑い夏を少しでも涼しく過ごす為に!!
 という理由を付けられて、窓の側にぶら下げられた。
 見た目は、確かに涼しい。
 透明感のある海を思わせる、色合い。
 けれども、実際にそれが活躍する機会は稀だった。

 サウナに入っているかのような、暑い日々が続く。
 窓を開けても、風など入ってくるわけもなく。
 クーラーに頼る日々である。

 しかし・・・。



「ここ数日、いい風が吹くようになったな・・・」
 そう洩らすと、ハインリヒが嬉しそうに笑った。
「そうだな・・・。もうすぐ、夏も終わりか?」
 暑さに弱いので、まだほんの微かにしか感じられないが、近づいてくる秋の気配が嬉しいらしい。
 クーラーを止めて、ハインリヒが窓を開いた。
 さーっと吹き込んでくる、涼しさを感じさせる風がカーテンをゆらゆらと揺らした。
 実に、気持ちがいい。
 サワサワと銀糸のような髪を揺らしながら、ハインリヒが満足そうに瞳を細めた。
「本当に、気持ちのいい風だな・・・」
 風に揺られて、風鈴も気持ちよさげに歌う。
 チリン、チリン。
「ああ・・・!」
「ん?何だ、シュヴァルツ」
「風鈴も、いい音だ」
 思ったこととは違うのだが、そう言うと。
「音が涼しげなのを気に入って、買ってきたんだ。あまり活躍させてやれなかったがな」
「そうか・・・」
 ツイ、と指を伸ばして、白い目元に触れる。
「今気付いたのだが、お前の瞳とその風鈴と。色合いが、似ているな・・・」
「・・・そうか?」
「そうだ」
 目元に触れていた指を動かし、頬のラインを辿る。
「美しいその瞳で私を見つめながら・・・風鈴のように、いい音を奏でてみるか?ん?」
 揶揄するようにして言うと、
「・・・知らん」
 俯きながら、ボソリと答えた。
「それは、私の望むように、という意味にとっても構わないのか?」
「・・・知らん・・・」
 了承の意だと勝手に判断し、笑いながら口唇を重ねた。

 チリンチリン。
 二人の様子に素知らぬ風を装って。
 涼しげに、風鈴がその身を揺らして音を立てた。

  〜 END 〜






夏の44、でございます〜vvv
夏ネタを書きそびれた、わーん!と泣いていたところ、
風鈴で44、という素敵なご意見を頂戴いたしましてv
それで、こんな話が出来上がりました。
風鈴、あんまり意味ないじゃん・・・と、
自分でツッコんでおきますので、その点はお許し下さい。




ブラウザを閉じてお戻り下さい