真夜中。
 監獄のような部屋を抜け出して。
 青白い月に向かって、そっと手を伸ばす。
 指の隙間から零れる月の光。
 その先に、確かに見える・・・希望の光が。




「チッ!!次から次へと出てきやがる・・・!」
 フワリと、宙に浮かぶ。
「004!」
 白銀の髪のその人を見下ろし、ナンバーを呼ぶと。
「・・・任せろ・・・!」
 青い空に弧を描きながら、小型ミサイルが無人戦闘機を狙う。
 爆音と共に巻き起こる硝煙。
 灰色の煙の向こうから、レイガンで次々に戦闘機を撃ち落した。
「負けてたまるかってんだ・・・!」
 キュッと口唇を噛み締め、自分に言い聞かせるように。

 空を飛べる能力。
 それは、望みもしないのに与えられた力。
 考える。思う。
 この力は、自分に与えられた翼なのだと。
 いつかこの翼を広げて、飛んでいくのだ。
 暗く閉ざされた世界から、光の溢れる世界へ。
 だから、止まれない。死ねない。
 まるで挑むような表情で。
 空を、見上げる。
 戦闘機が一機もいなくなった空は、抜けるように青い。
 その中で、輝く太陽。
 光の向こう側に・・・見える。自由が。
 いつか飛んでいく、自由な世界が。
 確かに。

「その時は、絶対にキミを連れて行くからな!」
 眼下の004に向かってそう叫ぶと、氷色の瞳が、心持ち丸くなり。
 その口元に、微かに笑みが浮かんだ。

 連れて行きたいから。
 だから、何処まででも進んで行こうと思う。
 自分のために。キミのために。
 走り続けようと。

 モルモットのように扱われても。
 殴られても、蹴られても。
 ・・・傷つかない・・・。
 心は、傷つけられない。

「飛んでみせる・・・必ずだ・・・!」

 眩しい太陽に、誓う。
 心の中に、いつでも大切に仕舞っている。
 滅多に見られない、その笑顔に誓う。

 いつか・・・この翼で、大空に羽ばたく。




「002・・・」
 静かな声で、呼ばれた。
 振り向き、その人に笑みを見せる。
 まるで月明かりを溶かし込んだかのような白銀の髪が、柔らかな光を放つ様に。
 思わず瞳を細めながら。
「やあ、004」
「・・・眠れないのか?明日の訓練に響くぞ。少しは身体を休めておけ」
「キミだって・・・眠れないから、ココにいるんじゃないのか?」
 問いを問いで返すと、不機嫌そうに眉を顰めた。
「オレのことはどうでもいいだろう?」
「どうでも良くない」
 笑みを絶やさぬまま、その手を取り。
 突然に。けれどもそっと、口付けを落とした。
 乱暴に、手が引っ込められる。
「何しやがる!変態か、お前は・・・!?」
「だってさ。他に・・・どう表現したらいい?キミを、好きだって」
 キレイな瞳が、今にも零れ落ちそう。
 柔らかな髪にサラリと指を絡めながら。
「この空の向こうに、キミを連れて行くよ。必ず」
 ・・・誓う・・・。
 月に、星に・・・キミに。

 翼を広げて・・・飛んで、飛んで・・・。

「キミを、連れて行くから・・・」

 引き締まった口元が、微かに緩んで。
 目の前のその人が・・・笑った。

 キレイな、キレイな笑顔。
 また一つ、心に仕舞い込んで。

 自分はまだまだ進んで行けると。
 そう、強く思った。



〜 END 〜



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2005年最初の24デーにフリーSSとしてアップしたものです。

何か捻ろうと思ったら、こんな話しに〜(涙)。
今書きたい話が、これだったので・・・!
一応BG時代。申し訳程度に24風味。
24というより、ジェットという感じですね。
(どーゆー感じだ!?)

大変遅くなりましたが、お年賀代わりの気持ちです。




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