ティータイムを一緒に
(44)
**甘44注意!**




「アルベルト」
 自分の名を呼ぶ穏やかな声に、ハインリヒはピクリと身体を動かした。
「・・・ん・・・」
 くしゃりと頭を撫でられ、笑いを含んだ声が降ってくる。
「まだ、おねむの時間か・・・?」
 その声に引き寄せられるようにして、薄く目を開く。
 紅い瞳が、自分を見下ろしていた。
 ・・・まるで、吸い込まれそうに優しく。
「アルベルト」
 頭を撫でていた手が、頬に下りてきた。
 ひんやりと冷たいその手が気持ち良くて、思わず、頬を摺り寄せた。
「寝ぼけているのか?困った姫君だ・・・」
 困ったと言いながら、声音は嬉しそうで。
 その声を聞きながら、
「んんん〜」
 ハインリヒは、ベッドの上でゴロゴロと寝返りを打った。
 ポンポンとハインリヒの頭を軽く叩いた後、ベッド脇から人の気配が遠ざかる。
「シュヴァルツ・・・」
 名前を呼ぶと、立ち止まる気配がした。
「そろそろ起きろ」
 まだ寝ていたいとも思ったが、ハインリヒはようやく、ベッドの上で身を起こした。
「おはよう。私の可愛いアルベルト」
 真顔でそう告げる男が身に纏った白いローブ。
 そこから覗く精悍な鎖骨のラインが視界に飛び込んできて、ハインリヒは、パチリと目が覚めたような気がした。
「ようやくお目覚めか・・・?」
 笑いながら、男がハインリヒを見つめた。
 男の側にあるサイドテーブルには、ガラスのハンディクーラー。
 淡い琥珀色の液体が、微かに揺れている。
 ひくり、と、ハインリヒは鼻をうごかした。
 本当に微かにだが、パッションフルーツ系の香りが漂ってくる。
 褐色の指がハンディクーラーの取っ手を持ち、氷の入ったグラスに中の液体を注いだ。
 グラスの中の氷が、カラカラと涼しげな音を立てる。
「部屋の中にいても、大分暑いな。お前も喉が渇いたろう?」
 側にあったローブをとりあえず羽織り、ハインリヒは男に近付いた。
 差し出されたグラスを手に取ると、南国の香りがした。
「可愛いお前が暑さにバテてしまわぬよう、マテ茶を準備してやったぞ」
「マテ茶?」
「飲むサラダと言われている茶だ。水分補給と共に、ビタミン・ミネラルをたっぷり補給しろ」
 グラスに口を付けると。
 ほろ苦さと共に、甘酸っぱさが口の中いっぱいに広がった。
 喉を、爽やかに冷たい液体が通っていく。
「どうだ、味は?」
「・・・爽やかな味がする。美味い」
 答えると、男は満足そうに笑った。
「そうか・・・。お前のために選んだのだからな。お前の気に入って良かった」
 男は椅子を指差し、ハインリヒに腰掛けるように示した。
 そして男も腰を掛け、テーブルの上のグラスを手に取る。
「香りがいいな・・・」
 男の手の中にある、グラスの氷がぶつかり合い、やはり涼しげに音を立てた。
 紅い瞳を細めて男がグラスに口を付ける様を。
 ハインリヒもまた、瞳を細めながら見つめた。

 窓の外に目をやると、大分高く太陽が昇っている。
 少し暑くて、少し遅い朝。

「アルベルト。お前のために茶の準備をした私に、何か報酬はないのか?」
 ハインリヒはゆっくりと微笑み。
「ダンケシェーン」
 褐色の頬に、チュ、と口唇を押し当てた。



  〜 END 〜




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お茶を飲んでラブラブな44でございました。
二人はどこにいるんだ〜!?
というのは、管理人が一番そう思っています。
ドイツのハインさんの部屋だと思います、多分。
黒様の城なら、もっと薔薇薔薇してますから。
「『ティータイムを一緒に』を44で」とリクを下さったのは、T橋様でした。
お気に召していただけましたでしょうか?
ありがとうございました。




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