青い空白い雲
(クラリモ)
「クラヴィス様〜」
呑気な声でクラヴィスの名を呼びながら、少女はノンビリと執務室に足を踏み入れた。
「・・・用は手短にな」
冷たくそう言ってやると、
「育成をお願いします」
間を置かずに、返事が戻ってきた。
飛空都市に来たばかりの頃は、こんな応対をすれば泣き出しそうな顔になっていたというのに。
いささか面白くない気分で、クラヴィスは金の髪の女王候補に視線を当てた。
「で・・・?」
「はい??」
「お前の用事は、既に終わったと思うのだが・・・?」
育成を頼み終えたというのに。
少女はニコニコと笑いながら、じーーーーっとクラヴィスを見つめている。
「終わってませんよ〜」
やっぱりノンビリと、少女が答えた。
最近、少女はルヴァの執務室によく出入りしているようだ。
(ルヴァののんびりが移りでもしたか・・・?)
半ば呆れたように、クラヴィスは思う。
少女は、にーっこりと極上の笑顔を浮かべて。
「今日はですね、クラヴィス様をお外に誘いに来たんですよv」
などと、クラヴィスを仰天させるような言葉を吐いた。
「・・・・何だと・・・?」
「クラヴィス様!毎日こんなに暗いところにいたら、病気になりますっ!!さあ!!!」
ツカツカと少女はクラヴィスに歩み寄り、腕を取った。
思わず立ち上がってしまうと、少女はグイグイとその腕を引っ張った。
「カーテンに囲まれた執務室でお気づきでないかも知れませんけど、今日はいい天気ですよv」
なるほど、外は好天だった。
少女は嬉々として、クラヴィスを眩しい太陽光線の下に引きずり出した。
「ん〜。とっても気持ちのいい日ですね」
少女の言うとおりだった。
初夏を思わせる風が、そよそよと木々の枝葉を揺らしている。
太陽の光は明るく、少女の髪に溶け込み。
その輝きを際立たせた。
「どこに行きましょうか?公園?森の湖??」
質問を投げかけてくる少女の姿に心が和み、クラヴィスはふと、頬を緩めた。
瞬間、少女は何とも嬉しそうな顔をした。
「・・・何だ?」
「クラヴィス様、今、笑いましたよね!!」
「・・・・・・」
思わず無言になるクラヴィスに、少女はニコニコと笑いかけた。
「笑った方がいいですよ、クラヴィス様。笑顔は人を元気にしてくれるんですから」
瞳を細めてそう言いながら、少女は空を見上げた。
「今日は、本当にイイ天気・・・」
「・・・そうだな。良い天気だ・・・」
頭上に広がる真っ青な空に。
吸い込まれていきそうな気持ちになる。
空をゆるりと流れていく雲を眺めながら、少女が楽しげに呟いた。
「綿菓子みたいに美味しそうな雲ですね〜vvv」
「・・・そうだな・・・」
少女の物言いを面白いと思い、クラヴィスはクスリと笑った。
心の中に、スーッと、キレイな風が流れ込んでくるような。
どこか、清々しい気分で。
「たまには・・・。こうして外出するのも悪くないかも知れんな・・・アンジェリーク?」
そう言うと、少女は一瞬、キョトンとしたような顔でクラヴィスを見つめ。
「はいっ!!」
光が弾けるようにして、笑った。
「公園は騒々しくてたまらん。湖に行くぞ」
「はいv」
広がる、青い空。
流れる白い雲の輝きを美しいと思えるのは、少女が側にいるからだろうか?
そう思い、隣をちょこちょこと歩く姿に視線を当てると。
若草色の瞳と思いっきり視線が合い、少女は無邪気な表情で笑った。
柔らかな表情で微笑を返し。
クラヴィスは少女の手を引いて、歩き出した。
〜 END 〜
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
明るい感じの話しになるように書いたつもりです。
リモちゃんと一緒なら、どこまでも続く空の下、
どこまでも歩いていけると思うのです。
クラリモはやっぱり、愛が先行して、思い通りに書けませんね〜。
自分が書きたい理想のクラリモに到達できる日は遠そうです。
ブラウザを閉じてお戻りください。