難しい顔をして、グンマとシンタローはコンピュータ画面と睨み合っていた。
新生ガンマ団の新しいプロジェクト。
それに関するコンピュータシステムを、グンマとシンタローは全面的に任されていた
新しいシステムを組むのは、大変な仕事だ。
部下達に指示を出しながら、ここ数日というもの、二人は一日のほとんどを研究室にこもりっきりで過ごしていた。
何気なく壁にかけてあるガンマ団カレンダーに視線を走らせたグンマの瞳が、大きく見開かれた。
(うそっ!?)
いささか動揺しつつ、けれどもそれを表情には出さずに、グンマはポンポンと隣の従兄弟の肩を叩いた。
「僕、思うんだけどね。このまま考え込んでても、効率が上がらないんじゃない?気分転換に、お茶でも飲もう!キンちゃんのために、僕が美味しく淹れてあげるから」
難しい顔をしたまま、シンタローは頷いた。
研究室を出て、グンマはホッと息を吐く。
仕事自体は嫌いではなかったが、連日それに追われていると、精神的に厳しいものがある。
しかも!
危うく大切な日(?)を忘れてしまうところだった。
グンマはパタパタと廊下を駆け、自室へと向かった。
取り急ぎ部屋に戻り、グンマはグルッと室内を見回した。
「えーっと・・・。どこに置いてたっけ・・・??」
しばしの間考え込み、グンマはポンと手を叩いた。
「分かった!あそこ!!」
ベッドに付属の引き出しを開け、中からピンク色の包みを取り出した。
「えへへ〜vvv」
満面の笑みを浮かべ、グンマはその包みを持ったまま、部屋から出た。
「キンちゃんが待ってるかな・・・。早くお茶を淹れないとね」
グンマは、ポソリとそう呟いた。
給湯室に入り、紅茶の缶を開ける。
ティーポットを温め、茶葉を入れてコポコポとお湯を注ぐと。
ふわりと紅茶のいい香りが漂って、少しリラックスできた。
真っ白なティーカップに、紅茶を注ぎ入れる。
「うう〜ん。キレイな琥珀色vvv」
香りが良くて、ほんわりと湯気の立つ美味しそうな紅茶を淹れることが出来て、グンマは満足した。
グンマはトレイに二人分のお茶を乗せ、パタパタと研究室へと歩いていく。
「キンちゃん、お茶が入ったよ〜vvv」
コンピュータの前で腕組みしている従兄弟に声をかけると、藍の瞳がグンマを振り返った。
「ああ・・・。もう少し戻りが遅かったら、探しに行こうと思っていたところだ」
「ゴメンね。ちょっと用事があって・・・」
グンマはシンタローに向かい、ペロリと舌を出して見せた。
そしてテーブルの上の書類を大雑把に片付け、シンタローを手招きする。
「キンちゃん、こっちこっち!」
大きく伸びをしながら、シンタローがコンピュータの前から立ち上がった。
「機械と睨み合ってばかりだと、流石に疲れるな・・・」
「ホントに。システム開発は嫌いじゃないけど、神経を使うからね。詰め込みすぎるとダメだよね」
二人は向かい合って、紅茶のカップに口を付けた。
「はあ〜。ホッとする〜vvv」
「・・・そうだな・・・」
シンタローが微かに微笑み、グンマはそんなシンタローを見て、ニコニコと笑った。
ニコニコ、ニコニコ。
「グンマ・・・」
「ん?なあに??」
「さっきからひどく嬉しそうだが、何か良い事でもあったのか?」
満面の笑みを絶やさぬまま、グンマは部屋から持ち出したピンク色の包みをシンタローに差し出した。
「はい、キンちゃん。僕からプレゼントvvv」
「??」
「大好きだよ」
てへっとグンマは笑う。
「今日はバレンタインデーです!危うく忘れるところだったけど。だから、キンちゃんに愛情込めてチョコレートvvv」
シンタローの藍い瞳が、スッと細くなった。
「そうか・・・。もう、そんな時期か」
呟きとともに長い指を伸ばし、シンタローはグンマからの包みを手に取った。
「ありがとう、グンマ」
シンタローの手がリボンを解き包みを開ける様を、グンマはやはりニコニコと笑いながら見守った。
「食べてね、キンちゃんv甘いものは、脳内の活性化に一役買ってくれるんだから」
「そうだな」
シンタローは素直に、チョコレートを口に運んだ。
そんな些細な事が、グンマにはとても嬉しかった。
「ね、美味しい??キンちゃんの口に合うかな??」
「そんなに心配なら、お前も食べてみたらどうだ?」
「じゃあ、食べさせてv」
シンタローに向かって、グンマは大きく口を開いた。
「あーんvvv」
苦笑しながらも、シンタローの指がチョコレートを一粒、摘んだ。
パクリ。
その指からチョコレートを口の中に入れてもらい、グンマはモゴモゴと口を動かす。
「美味し〜い!流石は僕!!ナイスセレクトだと思わない??」
「・・・そうだな」
グンマが自画自賛すると、シンタローはニコリと微笑みながらグンマに答えを返した。
お互いに笑いながら、視線と視線がぶつかる。
なんだか幸せな気分で。
グンマは紅茶のカップを口に運んだ。
「お前のチョコと紅茶で、少し元気が出たぞ。引き続き、頑張るか」
「うんっ!このプロジェクト、二人でぜーったいに成功させようね」
「もちろんだ。お前と俺とでシステムを組んでいるんだぞ?失敗するはずがない」
「・・・うん・・・」
シンタローの大きな手の平が、励ますようにグンマの背中を撫でた。
「頑張ろうね・・・」
唇から漏れた言葉は、シンタローに向けたものなのか、それとも自分自身へなのか。
分からないまま、グンマは思った。
僕は・・・キンちゃんと一緒だから頑張れるんだよ?
紅茶のカップをソーサーに戻し、二人はコンピュータ画面の前に戻る。
ああでもない、こうでもないと議論を戦わせながら。
それでも二人の表情は、ひどく、穏やかだった。
〜 END 〜
キングンでバレンタインです。
あまり甘くなりませんでした〜!!!
しかも折角の季節ネタを、うまく使えませんでした・・・。
ロドマカで書いたほうが良かったのかしら、
と思いつつ、でもキングンでしょ!!
と自分に言い聞かせながら、管理人は去り行きます。
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