2 『おめでとう』と言う役
(オールキャラ+黒4)
*一応オールキャラですが、4→4、2→4色が強いかもです*




 本屋に行って来ると言い置いて、アルベルト・ハインリヒ(30)の姿がギルモア邸から消えると。
 わらわら、わらわらと、リビングに人々が集まってきた。
 一同をグルリと見回して、フランソワーズが厳かな表情で宣言した。
「じゃあこれから、『誰がハインリヒに一番最初におめでとうと言うか』について、話し合いましょう」
 ハインリヒの誕生日である9月19日は、間近に迫っていた。
 一年に一度しかないその日、誰がハインリヒに一番最初に『おめでとう』を言うかで、ここ数日のギルモア邸は争いが絶えなかった。
「ボクだよっ!ボクが一番、ハインリヒにおめでとうを言うのに相応しいんだ。なんてったって、リーダーだからねっ!」
 ズビシと手を上げながら、ジョーが主張する。
「ああ〜ん?都合のイイ時だけリーダー面してんじゃねえぞ?ハインリヒを一番好きなのは、オレだ!だからオレが言うんだ!!」
 ジェットが凄むが、ジョーはツンとそっぽを向いてそれを無視した。
「ここは、人生経験豊かな我輩が・・・」
「わてがおめでとう言った方が、ハインリヒ喜ぶよ」
 グレートと張々湖が口々に言い募る。
「いや、ここはハインリヒと一番気が合うボクが相応しいと思うんだけど・・・」
 少し控え目な口調で、でも言いたい事はしっかりと言っているピュンマ。
「オレが、言いたい」
 物静かなジェロニモでさえ、主張している。
「何言ッテルノ!ぼくダヨ!!ぼくニ決マッテルデショ!!はいんりひガ一番可愛ガッテルノハぼくダヨ!!」
「あらぁ、お言葉だけどイワン?ハインリヒはね、ワタシのコト、妹みたいに思ってるんですって。だから、ワタシが言ってあげるのが一番喜ぶのよ〜v」
「いやいや、ワシじゃ!ワシはハインリヒにとって父親のようなもんじゃ。ワシから言うのが良かろうて・・・」
 イワンにフランソワーズ、何故かギルモア博士まで参戦し、喧々囂々の状態だ。
 皆がギャーギャーと争っている最中。
「・・・私だ」
 低いが良く通る声が、一同の間を割って入った。
「???」
 皆が声の方向をサッと振り向くと。
「ご機嫌はいかがかな?」
 褐色の肌に紅の瞳。
 その違いを除けば、ハインリヒと瓜二つの顔を持つ男・・・。
「「「「「「シュヴァルツ〜!?」」」」」」
 口唇の端を曲げて笑う彼独特の表情を見せながら、シュヴァルツは優雅に一礼した。
「歓迎してもらい、光栄だ」
「って、誰が歓迎するかっての!!」
 我に返ったジェットがムキーと牙を剥くと、シュヴァルツはそれを鼻先でせせら笑った。
「よく吠えるな、リンク」
 グッと、ジェットが言葉に詰まる。
「話を聞いていたが、アルベルトに一番に『おめでとう』を言う役は、この私にこそ相応しかろう。アレは、私の半身。可愛い可愛い、私の分身なのだからな」
「ハインリヒは嫌がると思うけどな・・・」
 ボソリとピュンマが呟くと、紅い瞳が射るような光を持ってピュンマを見つめた。
「この上もなく、喜ぶと思うが・・・?」
「喜ぶわけないじゃないか。バカじゃない?」
 ジョーがフンと鼻を鳴らした。
 イワンもそれに賛同する。
「きみ、はいんりひニメチャクチャ嫌ワレテルッテ、マダ分カラナイカナ?」
「・・・島村、ウィスキー。貴様等は命が惜しくないようだな?」
「ベー、だ」
 不毛ないがみ合いの中、フランソワーズがピクリと耳を立てた。
「しっ、静かに・・・!ハインリヒの足音が聞こえるわ。あと1キロってところかしら」
「ど、どうするんじゃ?まだお祝いを言う役が決まっておらんぞ・・・」
 焦るギルモア博士。
「だから我輩が・・・!」
 どさくさに紛れてそんな事を言うグレート。
「・・・・・・決められないのなら、みんなで、言えばいい」
 ジェロニモの声に、
「え?」
 思わずフランソワーズが問い返すと。
「抜け駆けはしない。朝みんなで揃って、おめでとうを言う。ハインリヒもきっと喜ぶ」
 顔を見合わせる一同。
 ものすごく不本意な妥協案だ。妥協案ではあるが・・・。
 『抜け駆けはナシ』というのが良いではないか・・・!
「そうね。ワタシは賛成」
「悪い案じゃないね」
「そうじゃのう・・・」
 互いに探り合うようにして、顔を見合わせた。
「ソレジャア?」
「ハインリヒのお誕生日は、皆で揃ってお祝いを言うコトに決定よ!」
 フランソワーズの鶴の一声。
「私も同席させてもらって構わないか?」
 ごくごく真面目な顔で、シュヴァルツが問うと、
「ざっけんな!お前はお呼びじゃないんだよ」
 またもやジェットがムキーとヒスを起こしかけた。
「まあまあ、ジェット。せっかくの誕生日なんだしイイじゃない」
「リーダーの許しが出たぞ、リンク?」
 フフンと鼻先でシュヴァルツが笑う。
 そして、フランソワーズを振り返った。
「話し合いが収束したところで、フロイライン・アルヌール?手土産を持ってきていたのだが、渡しそびれていたので・・・今、お渡ししても構わないだろうか?」
「まあぁぁぁ〜v喜んでvvvいつもありがとうございます〜vハインリヒも喜ぶわ。すぐに、お茶の準備を・・・」
「私も手伝おう」
 フランソワーズとシュヴァルツが連れ立って、お茶を淹れ始めた。
 本屋から帰ってきたハインリヒは、シュヴァルツを見て顔を顰めて。
 それから芳しい紅茶の香りに、頬を緩めるだろう。
「あーあ」
 ため息をついて、軽くした打ちするジェットの耳に。
「ジェット!お茶を運ぶのを手伝って頂戴!!」
 どこかウキウキとしたフランソワーズの声が届いた。



 そして、9月19日・・・。
 まだ目覚め半ば。
 コーヒーでも飲もうとリビングのドアを開けたハインリヒは、思わず目を点にした。
 リビングに集結した10の顔が、一斉に自分を向いたからだ。
 何だ、何だと軽くパニックに陥っているハインリヒに、一同はそれぞれの表情で笑いかけ、口を開いた。
「誕生日おめでとう!!」
 その一言に。
 パッと、ハインリヒの表情が和らぐ。
「・・・ありがとう」
 年に一度やってくる、特別な一日の始まりだった。


  〜 END 〜




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わけのわからない話でスミマセン。
皆でハインさんに「おめでとうを言う権利」を奪い合って欲しい、
という欲望を形にしてみました。
黒4を出したのは私の趣味です(笑)vvv







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