5 年の数だけ蝋燭を
(オールキャラ+黒4)
「『おめでとう』と言う役」の続きっぽいです。




 何気なく、朝のリビングに足を踏み入れたら。
 思いもかけないおめでとうの嵐に、今日が自分の誕生日だったという事を思い出した。
 ぼんやりとしているうちに、毎年毎年、その日がやってくる。
 今年の誕生日の晩も・・・ギルモア邸にて、盛大な(?)ハインリヒの生誕祭が催されていた。


 張大人が腕によりをかけた料理に舌鼓を打った後、真打ちのケーキが登場。
 ふわふわの生クリームがたっぷりとかかり、真っ赤なイチゴが乗っている、正統派のショートケーキだ。
 細いロウソクが何本も立ててある。
 1、2、3・・・。
 ハインリヒが数を数えると。
 ご丁寧に、キチンと30本、立っていた。
「フラン・・・」
「なあに、ハインリヒ?ロウソクは年の数だけ立てるものよ〜vvvうふv」
 ちょっと太目のロウソク3本で十分なのだが・・・。
 そう言いたいところを、先回りされてしまった。
「さあ、ロウソクに火を・・・」
 スイと褐色の手が伸びてきて、マッチを刷る。
 火薬が燃えるような独特な匂いが、ハインリヒの鼻先まで漂ってきた。
「ボクも手伝うよv」
 嬉々としながら、ジョーもマッチに火をつけて。
 ロウソク一本一本に、手際よく火が灯される。
 ちろちろと燃える赤い炎を、ハインリヒはじーっと見つめた。
 30本ものロウソクの火がケーキの上で揺れている様は壮観だが、あまり長時間揺れているままだと、熱で生クリームが溶けてしまう・・・!!
 目下のところのハインリヒの心配事項はそこだった。
「はーい!それじゃあみんなで、歌いますvハピバースデーvvv」
 フランソワーズが音頭を取り、万国共通の誕生日の歌が歌われた。
 ああ!生クリームが・・・!!
 ハラハラとしている間に、歌が終わる。
「じゃあ、ロウソクの火を吹き消してね!」
「願い事を忘れてはいかんぞ」
 ジョーとギルモアに促され、ハインリはホッとしながらロウソクの火を吹き消した。
「ハインリヒ、おめでとうv」
 パタパタとフランソワーズが寄って来て。
 頬に、優しいキスが落とされた。
「大好きよ、ハインリヒ。今年もアナタをお祝いできて嬉しいわ」
「抜け駆けはナシだぞ、フラン!」
 フランソワーズの後ろで、ジェットがギャーギャーと騒いでいる。
 振り返りながら、フランソワーズが笑った。
「あらぁ、抜け駆けなんかじゃないわ〜vこれからみんなで、ハインリヒにお祝いのキスよ。順番だから、並んで、並んで〜!」
 ハインリヒの意思は、どうやら関係ないらしい・・・。
 わらわらと、皆がハインリヒの前に並んだ。
「誕生日おめでとう、ハインリヒ」
「ハッピーバースデイv」
「おめでとう!」
「ハインリヒが生まれ出でたその日に、心からの喜びを」
「・・・おめでとう」
「オメデトウ!大好キダヨvvv」
「めでたいよ、ハインリヒ!」
「ハインリヒや、おめでとう」
「私からも、心からのおめでとうを」
 頬に、額に、手の甲に。
 様々な場所にキスをされて、迷惑なのか有り難いのか良く分からなくなってくる。
 口唇にキスをしようとする不届き者数名には、容赦なく右拳をお見舞いしてやった。
 それでも。

 自分が生まれた日を喜び、祝ってくれる人がいる・・・。
 それは、とても嬉しいことなのだと。
 そう思うことが出来ることをも、嬉しいと思う。

「じゃあ、ケーキを切り分けましょうvvv」
 真っ白な生クリームのケーキに、30個分の小さな穴。
 それに視線を当てて。
 ハインリヒは、白い頬に穏やかな笑みを浮かべた。



  〜 END 〜




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ケーキに30本のローソクは、壮観に違いないですねvvv
みんなから、歌とキスでおめでとうを。







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