6 必死に選んだプレゼント
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*黒4がおバカでおまけにベタ甘なので、苦手な方はご注意*
眉間に思いっきり皺を寄せながら。 シュヴァルツは考えていた。 もうすぐ、可愛いアルベルト・ハインリヒの誕生日である。 誕生日のプレゼントを何にするべきか。 数日前からかなり真剣に考えているのだが、イマイチ良いアイディアが浮かばない。 難しい表情のまま、シュヴァルツは手に持っていたティーカップをソーサーの上に置いて。 おもむろに立ち上がると、中庭に出た。 見事に咲き誇る、深紅の薔薇の花達がシュヴァルツを迎えてくれる。 褐色の指を伸ばし、ツイ、と薔薇の花を撫でながら、 「アルベルトの誕生日にくれてやる品だが、なかなか良いモノが思いつかなくてな。何かアレが満足するようなモノがないものか・・・」 そう尋ねるようにして呟くと、ビロードのように柔らかな花びらが、シュヴァルツの頬を撫でた。 「お前達を花束に?何を馬鹿な。可愛いお前達に、鋏など入れられんぞ。ここで美しく花開き、私達の目を楽しませてくれる。それで、十分だ。手折るなど、考えた事もない」 シュヴァルツの言葉に、花達は嬉しそうに、けれどもどこか困惑しながらその身を揺らした。 「親身に考えてくれて、礼を言う」 薄い口唇が、深い紅の花びらに触れて。 褐色の指先が、愛しげに花たちを撫でた。 居間に戻りながら、シュヴァルツはなおも考える。 しかし、ここまで何も考え付かないとは。 ピアノは既に、最高級のものが置かれている。 アレは本が好きだし、ブックカバーなどどうか? とも思ったが、部屋の中で読むのに、必要性は薄いように思える。 居間に戻ると、ハインリヒがソファに腰掛けて本を読んでいた。 紅茶を淹れてやりながら、コレの好きな紅茶や甘いものを準備するのはどうだろうかと思ったが。 日常生活に根付きすぎていて、喜ぶだろうが、目新しさがない。 真剣にシュヴァルツが考えていると、物問いたげな視線が流れてきた。 その視線を無視して、シュヴァルツは自分の紅茶のカップを手に取った。 服、靴、鞄。 既に溢れんばかりに用意してあるそれに、今更新しいモノが一つや二つ加わったところで、何の感慨もあるまい。 カチャンと、陶器の割れるような音。 「シュヴァルツ・・・!」 名前を呼ばれ、 「何だ?」 返事をすると。 「お前、手元を見てみろよ・・・」 視線を落とせば、愛用のカップの取っ手だけが、シュヴァルツの指の中に残っている。 カップ本体は・・・淡い琥珀の液体を零しながら、ソーサーの上に転がっていた。 「何をやってるんだ、全く!茶が勿体無いだろうが・・・!」 呆れたような声で、ハインリヒがティッシュの箱と布巾を投げてくる。 お前の誕生日の贈り物に悩んでいるのだ、とは流石に言えず、無言で零れた茶の後始末をするシュヴァルツだった。 それ以降も、色々と考えながら行動をするため、気に入りのティーポットを破壊するわ、自分の足に蹴躓いて転びそうになるわ、砂糖と塩を間違えてみるわ、失策の連続である。 ハインリヒは、呆れを通り越して、怯えたような目でシュヴァルツを見ている。 「おい、シュヴァルツ。お前、本当に最近変だぞ・・・?熱でもあるんじゃないか?」 白い手の平が、シュヴァルツの額に触れて。 その指を目にした時、考えるのに疲れ切った頭に、稲妻のようにナイスなアイディアが閃いた。 「決まりだ・・・!」 「は?」 「今は言えんが、すぐに分かる」 ハインリヒの手の平を自身の額からそっとどかして。 トレードマーク(?)の黒マントをバッサー!と翻しながら、シュヴァルツは意気揚々と自身の居城から飛び出して行った。 後に残されたハインリヒの目を点にしたまま・・・。 そして、可愛い可愛いハインリの誕生日当日がやってきた。 「アルベルト、誕生日おめでとう」 寝ぼけ眼で登場したハインリに、満面の爽やかな笑顔で祝いの言葉を述べる。 「ん〜??」 「今日はお前の誕生日だぞ、アルベルト。めでたい事だ」 「誕生日?・・・ああ、そうだったかもな・・・」 なんともまあ、気の抜けるような返事である。 しかし、シュヴァルツはめげなかった。 「アルベルト、こちらへ」 ヒラリと手招きすると、どこかボンヤリとした顔で、ハインリヒがこちらに近づいてくる。 手が届く距離まで近づいたタイミングで、左の腕を取った。 「私からのプレゼントだ」 恭しく手の甲にキスを落として。 心臓に最も近いといわれる指・・・左の薬指に、プラチナの指輪を滑らせた。 「シュヴァルツ!」 眠気も吹き飛んだようなハインリヒの声に。 クククと喉を鳴らして笑いながら、シュヴァルツはハインリヒの手を離し、優雅に一礼した。 「私からお前へのプレゼントは・・・永遠の愛だ。指輪は誓いの証といったところか。この私が永遠に愛してやるというのだから、ありがたく受け取るがいい」 「・・・オレが喜ぶとでも?」 その問いに。 「当然」 胸を張ってシュヴァルツが答えると。 ハインリヒがクスクスと楽しそうに笑った。 「仕方ないから、受け取ってやるよ。責任取って、最期まで愛せよ?」 「心配は要らんぞ。しっかりと愛してやるのだからな」 ハインリヒがそっと左手を持ち上げ、銀色に光る指輪に口付けた。 「感謝の気持ちは指輪ではなく、私に示したらどうだ?」 些か不満の色を込めてそう言うと。 「プレゼントありがとう、シュヴァルツ。嬉しいぞ」 チュ、と優しく、シュヴァルツの口唇にキスが降りてきて。 必死になりすぎた感もあったが、真剣にプレゼントを考えて良かった・・・。 と、シュヴァルツはそんな事を考えながら、両手を広げてハインリヒを抱きしめた。 〜 END 〜 |
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黒様、一生懸命考えてみましたが、思いついたものはベタでした(笑)。
一応、ハインさんが喜んでいる(?)のでコレでよし!!
というコトで、一つ。
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