illumination
バタンと大きな音を立てながら、ジェットはハインリヒの部屋のドアを開けた。
「ハインリヒ!これから一緒に出掛けよう」
読んでいた本から顔を上げ、ハインリヒは眉をひそめながらジェットを一瞥した。
「ジェット。人の部屋に入る時はノックをしろと、お前は何度教えれば覚えるんだ?ん??」
「ゴメン、ゴメン」
言いながらツカツカとハインリヒに歩み寄り、ジェットはその腕を掴んだ。
「さ、コートを着て準備して。今から出掛けるから」
「って、人の話を聞け!」
「え?聞いてるよ。聞いた上で、一緒に出掛けようって言ってるんだ」
ハインリヒが小さく息を吐く音が聞こえた。
どうやら観念したようだ。
「分かった、分かった。同行すればいいんだろう?今日は一体、何処に連れて行かれるんだ?」
ジェットはニッと笑った。
フランソワーズに話を聞いてから、ずっと行きたいと思っていたのだ。
ハインリヒと一緒に。
「今日からライトアップのイルミネーション。一緒に見に行こう」
目的の場所に着いたジェットは、愕然とした。
人、人、人。
黒山の人だかりである。
「ゲッ!?何だよ、この人の多さは・・・!!」
自分もその人だかりの一員である、ということも忘れ、ジェットはボヤいた。
イルミネーションの下をハインリヒと一緒に歩いて。
光のシャワーの中で、白銀の髪や白い頬がどれだけ美しい色に染まるだろうかと、楽しみにしていたのだが。
入場制限のようなものも出ているようで、イルミネーションに辿り着くまでに軽く1時間以上かかりそうな雰囲気で。
視線の先で、それは美しく光り輝いているというのに、ひどく遠くにあるように思えた。
「・・・ジェット・・・」
ハインリヒがちょんちょんと、ジェットの腕を引いた。
「無理だ。諦めよう」
「だって・・・!コレが目的で・・・」
反論すると、ハインリヒは困ったような顔をした。
「ここから見たって、充分綺麗だろう?」
「それはそうだけど・・・」
なおも未練たらしくそう言うと。
「オレは腹が減ったぞ」
軽い上目遣いで、ハインリヒが見上げてきた。
「飯に連れて行ってくれるんだろう、ジェット?」
「もちろん、そのつもりだけど・・・」
「じゃあ、行こう。なあ?」
ハインリヒの手が、スルリとジェットの腕に絡まった。
ドキリとしてハインリヒに視線を走らせると、その頬に極上の笑みを浮かべて。
「連れてきてくれて、ありがとう。お前のその気持ちだけで嬉しいよ」
なんて可愛らしい事を言ってくれるから。
思わず、ジェットの頬も緩んでしまった。
そして。
イルミネーションを諦め、二人で食事を摂ることにする。
フランソワーズから貰った地図と睨み合いながら進んでいくと、イ 丁度ルミネーションとイルミネーションの間の道を通ることが出来た。
明るく、そして仄かに青い光のシャワーを浴びて。
ジェットの想像通りに、キラキラと美しく輝いた。
柔らかな白銀の髪も。
淡いブルーの瞳も。
(キレイだな・・・)
肩を引き寄せて、素早くキスをした。
「・・・!ジェット・・・!!」
「気にしない、気にしない」
笑いながら。
真っ赤になったハインリヒを引きずるようにして、歩いた。
「そういえばさ。少し早いけど、メリークリスマスを言わせてよ」
「・・・好きにしろ」
並んで歩きながら、白い息と共に言葉を吐き出した。
「メリークリスマス、ハインリヒ」
「・・・メリークリスマス・・・」
ポカポカと心の中が気持ちよくて、ジェットは笑った。
「何をニヤニヤしてるんだ、お前は・・・?」
「え?だって、こんなに幸せなんだから、笑って当然だろ?」
「言ってろ、馬鹿」
徐々にイルミネーションから遠ざかり、辺りがほの暗くなってくる。
軽く背後を振り返り、ジェットは空いている方の手をイルミネーションに向けてヒラリと振った。
「また、来年来るからな〜」
その言葉を聞いていたハインリヒが。
ジェットの隣で、クスリと笑った。
「そうだな、また来年・・・」
ハインリヒがそう言ってくれたことが嬉しくて。
「絶対だからな?」
念を押すと、ハインリヒはやっぱり笑いながら答えた。
「ああ、約束だ」
その穏やかな笑顔は、イルミネーションの光よりもキレイで。
そして、眩しく感じられた。
〜 END 〜
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2題目は、24です。
甘さ押さえ気味でしょうか・・・。
想像力が貧困なので、実話を元に書きました(笑)。
東○駅のミ○ナリオを二人で見に行くイメージです。
最初は銀○のイルミネーションを見に行く話でしたが、
上手く纏まらなかったので、そちらはボツにしました。
とりあえず、お題クリア・・・??
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