Very Merry Christmas




 部屋においてあるカレンダーを見て、アンジェリークは愕然とした。
「もうすぐ、クリスマスだわ・・・」
 女王試験のために作られたこの地・・・飛空都市は、常春の世界。
 季節感が全くないため、とてもとてもクリスマスなどというムードではない。
 主星ではこの季節はクリスマスツリーが道の至る場所で明るく輝いている。
 その賑やかな雰囲気がアンジェリークは大好きで。
 友達同士でプレゼントの交換をしたり。
 両親の優しい笑顔に包まれて。
 母親の焼いた美味しいケーキと、心のこもったご馳走を思い出す。
「パパやママ、どうしてるのかな・・・」
 そう思うと急に淋しい気持ちになり、シュンと心がしぼんだような気がした。
「ダメダメ、元気を出すのよ、私!!笑顔が一番!!」
 自分にそう言い聞かせ、鏡の前でニッコリと微笑んでみるが。
 その笑顔にいつもの元気がないように思えて、アンジェリークはガックリと項垂れた。



 どこか浮かない気分のまま、聖殿の廊下を歩く。
(今日はゼフェル様に育成のお願いをして・・・)
 などと思いながらボーっと歩いていると。
「アンジェリーク!!おい、アンジェリーク!」
 背後から名前を呼ばれて振り返ると、育成を頼みに行こうと思っていた鋼の守護聖その人の、ご機嫌な表情が目に入った。
「ゼフェル様。何かご用ですか??」
 尋ねると、どこか得意げな様子で、ゼフェルは答えた。
「おう。ご用が大アリだぜ!おめーさぁ、明日、オレの私邸に遊びに来い。絶対だからな」
「え?だって、明日は・・・」
「イイから来い!!」
 畳み掛けるように言われ、
「はっ、はいっ!!」
 思わず、返事をしてしまうと。
 ゼフェルはその頬に、ニッと笑いを浮かべた。
「そんじゃ、待ってるからな」
「はい・・・」
 そのままスタスタと去っていこうとするゼフェル。
 何かを忘れているような気がして、アンジェリークは考えた。
「あ〜!ゼフェル様、育成!!育成のお願いをさせてください〜!!」
 いつもの調子が少し戻ってきたなと思い、アンジェリークはゼフェルの後姿を追いかけながらクスリと笑った。



 翌日。
 取り急ぎ必要な事は終わらせてから、アンジェリークはゼフェルの私邸に足を運んだ。
「あんじぇりーくハン!オ待チシテマシタ〜!!」
 アンジェリークよりも背が低いロボットが迎えてくれた。
「ゴ主人ガ、遅イトぶつくさ言ウテハリマスワ〜。ささ、ドウゾドウゾ」
 案内された部屋の前で、アンジェリークはドキドキした。
(遅いって言ってらっしゃるっていうコトは、怒ってらっしゃるのかしら〜??)
「どあハあんじぇりーくハンガ開ケテオクレヤス」
 ドアノブを手に取り、そっと。
 扉を開けると。

「メリークリスマス!!」
 パーン!!
 何かが弾けるような、大きな音。
 フワリと宙を飛ぶ、紙吹雪。
「キャッ!?」
 驚いてアンジェリークが小さく悲鳴をあげると、ゼフェルが楽しそうに笑う声が耳に届いた。
「ワハハハハ!驚いたか!?」
「ゼ、ゼフェル様〜!?」
 驚きも醒めないまま、アンジェリークは部屋の中を見回した。
 大きなツリー。
 真っ白なケーキ。
 こんがりと焼けたチキン。
 ゼフェルが得意げな笑顔を見せる。
「主星はクリスマスっていう時期なんだってな。おめーさ、こーゆーイベント好きだろ?」
 アンジェリークはコクコクと力強く頷いた。
「はい!大好きですっ!!」
「だと思ってよぉ、準備してやったんだよ。どうだ、気に入ったか?」
 紅い瞳が、優しくアンジェリークを見つめた。
「ありがとうございます、ゼフェル様・・・!!」
「つーワケで、今日は盛り上がるぜ〜!!」
「はーい!!」
 心の底から笑いながら。
 アンジェリークが答えると、ゼフェルも嬉しそうに笑った。
 そしてアンジェリークは手近にあったクラッカーを手に取り、ゼフェルに向かって大きな音で鳴らした。
「メリークリスマス、ゼフェル様!!」
 嬉しさが、心から溢れ出してきて・・・。
 アンジェリークはゼフェルを見つめながら、クスクスと笑った。



 〜 END 〜




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ゼフェリモは、元気が良くて可愛らしい話を目指して・・・!!
今までで一番クリスマスっぽい話になりました(??)。
しかし、ゼフェリモ書いてると自分も元気が出るような気がしますvvv




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