・・・解れよ、ばか
(「お題2:素直になれずに後悔するのはいつものこと」の続きになります)




 お互いに黙り込んだまま、二人は歩く。
 やがてギルモア邸に辿り着き。
 ジェットはドアの取っ手に手をかけながら、ようやくハインリヒを振り返ったジェットの眉が、顰められた。
「ハインリヒ・・・。何て顔してるんだ、キミは・・・」
「・・・お前・・・」
『お前だって、目も当てられない表情をしている』
 と言いたかったが。
 ジェットの長い指がツイとハインリヒに伸び、そっと口唇に触れた。
「まだ、怒ってる・・・?」

 怒ってなんかない。
 けれども。

 一体、どう返事をしろというのだ?
 謝罪の言葉なんて、なかなか口に出せない。
 代わりにギュッと抱きしめでもしてやれば、それが意思表示になると思うのに。
 両手には、本の重み。

 どうすればいい?

 ハインリヒは大きく一歩、前に踏み出て。
 二人の間の距離を縮めた。
 そのままポスンと、ジェットの肩口に顔を埋めて。
 低く、呟いた。
「・・・解れよ、ばか」
 ポンポンと、ジェットの手がハインリヒの頭を撫でた。
 そして、少しだけ高い位置から聞こえる声。
「ゴメンな。せっかくのデートだったのに、嫌な思いをさせて・・・」
 顔を上げると、ジェットの優しい琥珀色の瞳と視線がぶつかった。
「ハインリヒ・・・」
 名前を呼ばれ、ジェットの顔が近付いてきて。
 キュッと目を閉じると、口唇に柔らかな感触。
 次の瞬間、右手が軽くなった。
 本が入った袋が一つ、ジェットの手の中に移る。
「寒いだろ?中、入ろう」
 空いた右手を握りしめられ。
 ハインリヒを引っ張るようにして、ジェットは玄関のドアを開けた。

「ただいま〜!!」
 リビングから、フランソワーズの声が聞こえてきた。
「あら、お帰りなさい。疲れたでしょう?お茶でも飲む??」
「サンキューな。でも、飲んできたから気にしなくてイイ」
 フランソワーズに言葉を投げ返し、ジェットはハインリヒの手を引いたまま、2階に上がった。
「おい、ジェット・・・?」
 勢い良くハインリヒの部屋のドアを開け、ジェットは慌しく手に持っていた荷物をサイドテーブルの上に置いた。
 そして、ハインリヒの手の中の荷物も奪うようにして、同じようにテーブルに置いた。
「ジェット・・・??」
 再度、名前を呼ぶと。
 強く腕を引かれ、ハインリヒは柔らかな布団の中に沈められた。
「・・・おい・・・」
 瞳を細めて、ジェットが笑う。
「キミがあんまり可愛い態度を取るからさ。・・・イイだろ・・・?」
 返事の代わりに。
 腕を伸ばし、ジェットの頬にそっと触れてから。
 両腕をギュッと、その首に絡ませた。
「ハインリヒ?」
 問いかけるような声に。
「・・・解れよ、ばか」
 本日二度目の馬鹿呼ばわりをすると。
 クスリ。
 耳元で、ジェットが小さく笑った。
「ホントにイイの?」
「・・・解れよ・・ばか・・・」
 言いながら。
 ジェットに絡ませた腕の力を少しだけ強くしてやると。
 とてもとても嬉しそうに、ジェットが笑った。



 〜 完 〜




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ハインサイド、無事に完結。
ダラダラと続けてしまい、スミマセンでした(汗)。
最後はラブラブで終わったので(進歩の無い管理人の芸風ですので・・)、
ラブラブ24スキーの皆様にもご満足いただければ嬉しいです。





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