小さな意思表示
まだまだ寒い日が続く中で。
柔らかな陽射しが降り注ぐ、いつもより暖かな日。
「すっげー気持ちイイ天気!な、ハインリヒ。散歩行こう、散歩!!」
食後の珈琲を飲むハインリヒにそう声を掛けると、窓の外の景色に目を移し。
「そうだな・・・。今日は、いい天気だ」
口元に微かな笑みを浮かべ、ハインリヒの視線がジェットに向いた。
二人で並んで歩く。
風がなく陽射しが暖かなので、さほど寒さは感じられない。
「天気がイイとさ、なんだか心もウキウキするよな〜」
思わず声を弾ませるジェットに、
「そうだな・・・」
言葉少なに、答えが戻ってきた。
眩しそうに瞳を細めながら、ハインリヒが空を見上げた。
日の光を受けて、その瞳が明るく輝く。
白銀の髪も、艶やかに・・・。
キレイだな・・・。
思いながら、ハインリヒに手を差し出し、ニッと笑った。
「手を、繋ごう。大丈夫、誰もいないし」
フイとハインリヒがジェットから視線を逸らした。
返事がないのは、了承の証。
勝手に解釈して、その手を取った。
キュ・・・。
小さく、握り返されて。
ジェットの頬に、穏やかな笑みが浮かぶ。
そして、思う。
オレ、ハインリヒのコト、本当に好きだよな・・・。
今更ながらにそう思った後、ハインリヒにも聞きたくなる。
「ハインリヒ。オレのコト・・・好き?」
返事は戻ってこなかったけれど。
繋いでいる手に、キュッと力が込められて。
白い頬が、仄かに薄紅色に染まる。
それだけで充分だとジェットは思った。
「イイんだよ、キミはそれで・・・」
ほんの少しの仕草でも、表情でも。
自分が全部分かって、全部愛したいと思うから。
「でも・・・分かってあげられない時があったら・・・。その時は、ゴメンな?」
ハインリヒが顔を上げ、クリスタルの瞳が問いかけるようにジェットを見つめた。
「・・・一体、何が言いたいんだ、お前は・・・?」
「要約すると、キミが好きで好きでたまらないってコトだけど?」
「・・・訳が分からん」
「だから、キミはそれでイイんだって・・・!」
隣にいてくれて、笑ってくれて。
時折、抱きしめたくなるくらいに可愛い愛情表現を見せてくれる。
それが、ほんの些細な仕草でも・・・。
「オレにとっては、最高に嬉しいんだから」
「だからお前は、一体何を・・・!!」
「好きだよ?」
笑顔と共にそう告げれば。
その頬をカーッと赤くして。
「好きだよ・・・」
繋いでいた手を放されて。
両の腕が、ギュッとジェットの背中に回された。
可愛い人。愛しい人。
「・・・好きだよ・・・」
囁きかけながら、華奢な身体を抱き締め返した。
心が満たされて。幸せで。
クスクスと、笑いが込み上げる。
「オレ、幸せだよ・・・」
笑いを含んだ声でそう言うと、腕の中のハインリヒが顔を上げた。
美しい瞳を彩る、長い睫毛が揺れて。
「・・・本当に、そう思ってるのか?」
少し、不満げな声。
ああ、きっと。ふざけて言ってるんだと思われてるんだ。
でも、嬉しくて幸せすぎて、笑いが止まらない。
「ホントに幸せ。ありがとな」
白い頬に軽くキスを落として。
ハインリヒを抱き締めたまま、ジェットはクスクスと笑い続けた。
〜 END 〜
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散歩をする24、手を繋ぐ24、「オレのコト好き?」と聞くジェット。等々。
管理人が好きなシチュが(ワンパターンとも言う)が詰まっております(笑)。
お題のラストなので、自分らしい話を書こうと開き直って書いた結果です。
これにて、ジェッ誕企画のお題はコンプリート。
お付き合いいただき、ありがとうございましたvvv
そして、ジェットに改めて、『おめでとう』を申し上げたいと思いますv
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